小さな白髪の子
アーノルド視点
子供のお腹には剣の切っ先が見える。背中から、突き刺さっており、お腹から出ているようだ。周りは血だらけになっている。
子供は質素なシャツにズボン、そして白髪だ。この国ではとても珍しい。どこかの村から逃れてきたのだろうか?体を見る限り、4、5歳だ。髪が長く、ざんばらで性別がわからない。この年なら奴隷商の可能性もある。一回経歴を洗いざらい調べてみよう。
「う”うぅ・・・」
男の子が小さく呻いた。すると、猫又と白狐は心配するようなか細い鳴き声をずっと出している。とても申し訳ない気持ちになるからやめてほしい。実際、相当悪いことをしているんだが・・・。
エッカルトは顔面蒼白になっている。そりゃそうだろう。自分が仕掛けたトラップにまさか子供引っかかるなんて。
このトラップは神獣が手間取るほどに強い。子供なんて瞬殺だ。お腹に突き刺さっているだけで済んでいる方が奇跡なのだ。
「あなた!まだ息があるわ!はやく!」
俺が無駄な回想に入っているところをソンアリーに引き戻される。
この中で、回復魔法が使えるのは?
ヨリックとソユアだ。ソユアはまだ未熟で暴走してしまう時がある。だから、ヨリックがいいだろう。
そう思ってヨリックの名を呼ぼうとしたときに、クルルルと独特の鳴き声がした。カラスではない。自分たちの上に影が差す。
驚いて空を見上げると、鳳凰が居た。鳳凰は体を小さくさせながら、ソユアの方へ行く。
そして、ソユアの肩に乗った。大きさはソユアの顔ほどになっている。尾を入れるととても大きいが、可愛らしい。
「ど、どうしたの?鳳凰様は私なんかじゃないほうがいいでしょう?」
ソユアは戸惑っている。
鳳凰は安心させるかのように、ソユアに顔を擦り寄せた。
とても可愛らしい。
「ほら、鳳凰様があなたじゃないといけないって言ってるわ。早く行きなさい」
ソンアリーがソユアの背中を押す。こういうときは彼女の気の強さに助けられる。
俺も何回背中を押されたのだろうか・・・?数え切れないほどに勇気づけられている。
「し、失敗したらごめんなさい」
おずおずとソユアは子供に近づいていった。
鳳凰がクルルルと鳴くと、子供の体が浮き始めた。剣を伝う血が生々しくて気持ち悪い。思わず顔をしかめてしまう。
「何を怖がっているのですか。これから貴方はこれ以上の血が流れる現場を見るのです。こんなので怯えられては困ります」
「いや、血は慣れてるんだけど、子供っていうのが・・・」
「はあ・・・子供に化ける種族だって、魔法だってあるんです。疑うことを覚えないと生きていけないですよ?今日の聖竜様だって貴方が冒険者に過信しなければこんな事にならなかったはずです。」
呆れた顔でヨリックに告げられる。すごい心の痛みが・・・。
子供の体は地面につかないようにギリギリの場所で浮かされている。ボタボタと地面に血が落ちる音が森の中には無残にも響く。
ソユアが近づいても、猫又と白狐は怒らなかった。静かにドデンと居座っている。
「い、いきます。
緊張した様子でソユアは子供のお腹の近くに手を持っていって詠唱魔法を使った。
ソユアの手元が淡い緑色に光る。
お腹の傷は徐々に徐々に治っていく。
「うう・・・う”・・・!うあ”・・・」
やはり痛むのか、子供は脂汗をかいて呻いている。ぎゅっと眉をひそめて必死に息を吸っている。
「うう・・・ふう、はあ」
ソユアもこんなに一気に魔力を放出することをなかったせいか、疲労感が強いようだ。しかし、子供の体に空いた穴は半分もふさがっていない。
どうすればいいのかと考えあぐねていると、鳳凰の体がいきなり光り始めた。
「うわあ・・・!!」
ソユアがびっくりして鳳凰の方を見た。どうやら、魔力供給をしてくれているらしい。
「ソユア、お礼は後で集中しなさい」
「はい。お母様」
ソンアリーがちゃんとしたお母様をやっている。感動で泣きそうだ。
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