領地へ
ケンソーク領地の周りには色々なトラップがあるらしい。空にも、張り巡らされていて、なぜ双子がそのトラップだらけの領地から出てこれたか、ノウルにもわからないらしい。
そして、双子の名前は男の子のほうがホーノ、女の子のほうがフーノと言うらしい。ラグワが教えてくれた。
相変わらず、ノウルは眉をしかめて、ものすごく憂鬱そうな顔をしている。
最初の方は双子の質問攻めに答えていたけど、面倒くさくなってもう、ああ、しか言ってない。
ラグワとルフラは双子の声がずっと聞こえているから、ノウルから一定の距離を保っている。
ものすごく遠い。ノウルが豆粒くらいの大きさなんだけど・・・。
二人には双子の声がうるさすぎるらしい。
ノウルがいきなり一声鳴いた。
ーーギャオーンッ!!
どうしたんだろう。
『あの先にトラップがあったらしいよ。だから、ここからは状況を見るために同じ場所をぐるぐる回るかもしれないけど、許してね』
ルフラが優しく教えてくれる。
もう一回ノウルが鳴いた。
ーーギャウウゥ!!
『あ・・・俺らは待つみたい・・・』
ルフラが残念そうに頭を下げるから、ワシワシと強めに撫でてあげる。
ラグワは双子の声が騒がしいのか、すっごく嫌そうな顔を一瞬して、すぐにもとに戻ってからノウルの方に行った。
僕にもずっと、きゅーきゅーと双子が鳴いているのが聞こえる。これが言葉になるとどうなのだろう・・・なんだか、頭が痛くなってしまう気がする。
みんな、お疲れ様。
ラグワの憂鬱そうな背中を見送りながら僕とルフラはトラップに引っかからないように、トラップがある範囲から距離をとって座った。
ルフラは僕らが待つと知って落ち込んでいたけど、ラグワとノウルは何をするんだろう。すごく気になる。
「のうると、らぐわは、どんなことするの?」
『えっとねぇ。フーノとホーノが出てこれたトラップが少ない場所を探すんだよ。俺らは耳と鼻が利くからね。雰囲気が変わったらすぐに分かるようになってるんだ。でもね、俺は今回、ちづきを守るのが役目なの!頑張るからね。だからね、だから、いっぱい撫でて!』
「ぼくをまもってくれるの?ありがとう!いっぱいもふもふしてあげる!」
ルフラは僕を守ることが役目だと言ってくれた。すごく嬉しい。
確かに、狐に猫、狼の聴覚や嗅覚が発達しているのは普通。トラップだって人の手で埋めるから、きっと、ノウルたちにとってはわかりやすい。
でも、この世界のトラップってどういうっものなんだろう。空中にも仕掛けられているらしいから、人の手は必要なくて、魔法とかでなんとかなるのかな・・・?
僕にはまだこの世界は未知で、今動いても無駄なだけだとわかる。
モッフモフなルフラの毛に頭をうずめて考える。
「もしとらっぷが、はつどうしたら、どうするの?」
『そのときには、誰かが声を出してくれるから、俺らがちゃんとした連携してちづきのことを助けるよ』
ルフラが今までにないぐらいに真剣な声を出したから、僕も真剣になる。
「ちがうよ。ぼくはうごかないから、とらっぷには、かからないでしょう?」
『そうだけど、それがどうしたの?』
「のうると、らぐわ、れどらがとらっぷにかかったときは?ふーのと、ほーのも」
僕はそっちのほうが心配だった。みんながもし引っ掛かってしまっても、僕は助けられない。
『・・・そんな事考えなくていいんだよ。俺らは強いから。今日は安心していいよ』
「うん・・・」
なぜだか嫌な予感がする。ルフラの返答に曖昧な返事を返して、ルフラを撫でてあげる。
自分の気持ちを落ち着かせるために。
どうしようもなく不安で。不安で仕方がない。何かが起こりそうで。
僕はこの森の中にぽつんと立ってあるだろう、ケンソーク領地がある方向を見つめる。
お城みたいなのが立っているのか、建物の上の方はここからでも見える。領地って言われるだけある。遠目に見てもすごく大きい、近くに行ったらもっと大きいんだろうな・・・。
やっぱり子供の体は不便だ。寝たくもないのに、眠気が襲ってきて、意識が微睡む。
『ちづき?・・・安心して眠って。僕が守りきれなくても、みんなが守ってくれるから・・・』
最後に見たルフラの顔はすごく不安そうで、大丈夫だよ。と声をかけてあげたくなった。
ーーーーーー数時間後に僕の嫌な予感は当たった。ルフラもなにか感じていたのかもしれない。
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