トラップ   

ルフラ視点


すがるように俺のことを見ていたちづきは気を張りすぎて疲れたのか、寝てしまった。


やっぱり子供の寝顔は癒やされる。


いたずらでしっぽを使って、ちづきの頬を擽る。すると、くすぐったそうに身を捻って、俺の方にすり寄ってきた。


「んんぅ・・・ん・・・?んむっ」


それでも、しっぽでいたずらをしていると、ぱくっとちづきに尻尾の先を食われた。


そのままチュウチュウと吸ってくる。こういう行動を見ると、やっぱり子供なんだと思って頬が緩むのを止められない。


グルルル、クルルルとレドラが遠くで鳴く声が聞こえた。


どうしたんだろう。何かあったみたい。


シャ〜〜っ!!と、ラグワが威嚇している声も聞こえる。


二人とも真反対の位置にいる。あと、何かと戦っている・・・?


気配で感じる限り、レドラと同等か、それ以下のものみたい。だから、応戦する必要はなさそう。


ラグワは、少し押されてる?


『おい。双子はもう中に入った。帰るぞ』


『!?!?もうちょっと、優しく出てきて・・・』


いきなりノウルが現れてびっくりする。


『二人は?』


『聖竜が何故か怒っている。二体は夫婦らしい。今、二人に説得してもらっているが、どうしても怒りが収まらない。何をしたんだ、ケンソーク家』


ノウルは困惑した表情でケンソーク領地を見た。


聖竜はめったに出てこない。なのに、夫婦で現れるとは相当なことをしたんだろうな。


『このままだと戦いに、ちづきが巻き込まれてしまう。移動するぞ』


『わかった。』


そう言って、立ち上がろうとすると、


ーー『逃げなさいっ!!!!!!!』


女の人の甲高い、切羽詰まった声が聞こえた瞬間にトラップの範囲が広がった。鎖がうじゃうじゃと出てくる。


立ち上がって逃げようとするが、トラップのほうが早かった。このトラップの速さは誰かが操ってるんだろう。


足をトラバサミのようなものに挟まれて動けなくなったところに、鎖が体全体に絡まってくる。


ノウルも一緒の状況になっている。


『ちづき!!ちづきは!?』


苦痛に耐えながら周りを見回すと、鎖に足を掴まれ、宙に浮いていた。


『ちづき!』


ノウルが苦手な風邪魔法を使い、鎖を切った。鎖が切れてちづきの体が落ちていく。


ちづきが落ちていく場所には鋭いものが生えている。


ノウルが使える風邪魔法は鎌のように鋭いものを飛ばすことだけで、浮かせることはレドラしかできない。


それほど、自分が得意じゃない魔法を使うのは難しい。俺も風邪魔法は習ったことがない。むやみに発動しても、きっとノウルのような斬撃しか出てこない。


つまり、俺らには何もできない。ちづきが落下していくのを見まることしかできない。


もどかしくて、自分に絡まっている鎖に向かって爪で攻撃を仕掛ける。


すると、俺らに動くなとでも言うように、電気が流れてきた。


痛みで目の前がチカチカする。


気絶してしまう・・・最後にちづきが落ちていった場所を見ると、ちづきの体を尖ったものが貫いていた。


『ちづきっ!!ああ・・・!!』


ノウルが叫んだ。とても悲痛な声で。


そこで、痛みに耐えきれず俺の意識はなくなった。

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