自分の姿

子供らしからぬ声が出たことは、許してほしい。でも本当にダメだよ。


酔いそうになったし、もちろん落ちたよ。擦り傷ばっかで痛いんだけど。


『す、すまない』


『本当にすみません』


『ご、ごめんね。今度から気をつける』


『これには、慣れるしか・・・』


結局みんなに乗せてもらうことになったけど、どれも心地良いものではなかった。


白狐さん、黒猫さん、狼さん、全員に落とされたし。


鳥さんの上も居心地がいいとは言えない。ずっと空気に圧迫され続けて、途中で気を失いそうになり、慌てておろしてもらった。


「もう、皆の上には乗らない」


『な!ダメだぞ!』


『そうです。我々から離れることは許されません』


『神様に殺される・・・』


『離れたら、離れた分だけひっつくぞ』


「え、それはうれしい」


率直な感想を言うと、皆、何故かひっついてきて、おしくらまんじゅう状態になった。


ギュウギュウで息ができない。


「ちょっと!いき!させて!」


 『あ、すまん』


『またやってしまいました』


『ごめんね』


『四匹一緒に行動する癖を直さなければ・・・』


最後の鳥さん、何気にいいやつだよね。


川を覗き込んで、自分の容姿を見る。


うわぁ。予感というものは当たるらしく、小さくなっていた。


四歳ぐらいか・・・?


覗き込んでいると、さすが幼児。頭が重すぎて、顔から突っ込んだ。


「ぶふぇっ!」


『『『『ちづき!?』』』』


誰かに、服をつかまれて、引き上げられる。


どうやら、僕はとんかち、じゃない、金槌らしい。どっちが正解だっけ?もうめんどくさい。どっちにしろ、水には沈んでいくじゃないか。


びしょ濡れになったけど、僕が、どんな感じの子なのかは分かった。


白髪なのは、一番ビックリした。多分だけど、三、四歳。目の色は黒。


白と黒が入っていて、いいじゃん僕。


ニヨニヨしてしまう顔を隠したくて、近くにあったもふもふするものに顔をうずめた。


ふっわふわ!ずっとうずめていたいぐらいに、ふわふわだった。高級絨毯もこれには敵わないんじゃないのか?


「ふわふわ!すごい!」


『おう、それは良かった』


白狐の毛みたいだ。


すげーな。この感覚は癖になってしまう。


『あの、私のことは構ってくれないのですか?』


黒猫さんがしっぽを器用に使って、僕の顔をこしょこしょしてくる。


くすぐったくて、笑い声が漏れてしまった。


「くふふ、くすぐったい、あはははっ」


『構ってくれませんか?』


もう一度同じ質問をしてきたから、白狐さんから離れて黒猫さんのところに行く。


黒猫さんのところに行くまでに一回ふらついてしまった。でも黒猫さんのしっぽが支えてくれた。しっぽが意外にも力強くて、少しビックリ。


頭が重くて仕方ない。これはフラフラしてしまう理由がわかる。


黒猫さんのそばに座る。すると、今さっきみたいにしっぽが絡んでくるから、僕もしっぽにじゃれる。


子猫になった気分だ。


この手の大きさだと、しっぽを撫でるのがギリギリ。だから、ずっとしっぽを撫でていると、他の場所からもう一本、しっぽみたいなのが出てきた。


そのしっぽみたいなのを手でたどって、どこから出ているのかを確認すると、黒猫さんのしっぽが2つあることに気づいた。


今更すぎるけど、黒猫さんって猫又だったんだ。


『しっぽじゃなく、頭のほうが好きです』


「わ、わ、押し付けないで」


ぐいっぐいっと、頭を押し付けられるけど、撫でれるのは頭じゃなく、額みたいな場所ぐらいだ。


仕方ないから、背伸びしてぎりぎり届く耳の当たりを撫でる。


ゴロゴロと心地いい音が聞こえてくる。


その音をずっと聞きながら、撫でていると、まぶたが重くなってきた。


「ん〜〜・・・」


『眠いですか?』


僕が眠いと分かって、黒猫さんはぎゅっと俺を抱きしめるような体勢になってくれた。


温もりが体全体を包んで、耐えきれなくなった僕は夢の世界へと入っていってた。

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