第39話お披露目

そこは草原、小さな岩がところどころにある、だだっ広い場所である


ノーチェスとウエスコーの境にあるそこでは、お互いの国軍が睨み合っていた



ノーチェス軍およそ1100名に対して、ウエスコー軍5万人


結果の見えてる戦争に思える


だがしかし、真紅の鎧を纏うノーチェス国王アエリアが率いるその軍団からは笑みすら見えていた


流石にこれはと思ったのであろうウエスコー軍の長である、現国王は第三王子であったラールと言う偉丈夫だ。


宣戦布告をして来たノーチェスに対して、戦場での和平会談を持ちかけた


それはそうだろう、余りに大きな戦力の差

これでは蹂躙にすらならないと、思って居たのだが


「おう、お前が今の国王か?噂ではラライラと言う小娘だったはずだが」


今ラールの目の前に居るのはアエリアである

小娘と言うには、そうなのだが迫力があり過ぎるのだ


その横には大きな狼を携えているのも、また迫力を増している


「私の名はアエリアだ。先に伝わっていると思っていたが?」


「聞いてるよ、ノーチェスを乗っ取った女狐ってぇ話もな」


「そういう君は、ウェスコーをたなぼたで手に入れたのだろう?」


「てめぇ、どこで聞いた」


国王、というにはあまりにも口の悪い二人である


「こちらはギィル、という男が国王だったと思ったんだがね?ああ、そうか彼は死んでしまったな」


周囲に居るものがぞくりとするほどの殺気がラールから放たれる

ウェスコー軍の中にはそれで膝をつく者もいるほどだった


なるほど、この男もそれなりにやるのだなとアエリアは思う


「それこそ、その名をどこで聞いた、だな…その名は兄が好んで使っていた偽名だが、表にゃでてねぇはずだ」


「なぁに。直々に名乗られたからな…」


それだけを言う


「おまえ、本当に何者だ?なぜノーチェスの王になっている…」


「私の名はアエリア・ル・シャル。サウセスの公爵令嬢、というわけだよ。今日は来ていないが、ランスロットは私の婚約者という事に今はまだなっているだろう。それではわかるか?」


ラールの顔が、怒りにゆがむ


「そうか、ランスロット…な…我が兄の仇と言いたいところだが、兄が負けるということはかなりの強者だろう。で、その婚約者がお前か…フハハハハハ!そんな女がおめおめと俺の目の前にいるだと?これはどういうことだ?我が王族を舐めているのか?」


「ふん、それはこちらのセリフだ。わが友ラライラの国の首都を飛ばしたのはお前の国だ。秘密裏に隠していたようだったが、此方には分かっている」


「そうだ、その通りだ。我が国は兄の手によって大陸を統一する目的で軍事行動を起こすつもりだった、それがどうした?」


「ふん、もはや隠す気もなしか。そしてラール、君は私をかどわかすか殺す気だな?」


にやりとラールは嗤う


「ああ、かたき討ちはできそうにねぇからな、せめてこれくらいはやり返させていただこうと思っている。お前を殺し、その首をランスロットに送り届けてやろう」


「そうか、では和平交渉は不成立だな。では戦争を始めさせていただこう」


そう言ってアエリアは席を立つと


「おいおい、どこに行く?素直に帰すわけがないだろう。お前はここで死ぬのだ」


そう言って、側近が差し出した剣を受け取るラール


「ふん、こうも予想通りだとなにも面白くないな」


そう言うアエリアに


「まぁ、本当に戦争なんてしてしまったらウェスコーの兵の皆様が可哀そうですし、国力も低下してしまいますからね。なるべく無傷で兵ごと取り込みたいとこの会談に臨みましたが…」


それにはラールのこめかみがぴくりと動く


「どういう意味だ?」


「それはな、ここは私の田舎で暴れ、ランスロットを傷つけたあのギィルとかいう傑物の弟だと聞いてたのでな。出来る男か見定めてやろうと思っていたのだ。素直に降伏するならよし、しないのであれば私が潰してやろうとな」


「アエリア様…この男程度であれば、私とラライラでもやれますけど?」


「ふざけるな女狐どもめ!我を舐めた事ぉ!死んで償え!」


ラールが剣を抜き放ち鞘を投げ捨てる瞬間に




「聖剣開放」




一瞬で顕現が行われそのまま解放される聖剣ー


アエリアの周りに剣が、杖が、斧が数々の武器が生まれる


そのうちの斧を取ったアエリアの背に赤い翼がぶわりと生まれる

ナターシャの時の様に炎ではない、ただ赤いだけだ


「お前ごときこれで十分だよ」


そしてアエリアはそのままラールを両断する


一瞬で言葉さえ話せなくなった男の体は二つに割れた



そしてそれを見ていた側近が逃げ出そうとしているところで


「出ろ、我が兵士達よ」


アエリアの指輪が輝いた


どこからともなく、アエリアを中心にして会談が行われていたテントを英霊が取り囲む

その彼ら、彼女らの手にはドワーフが鍛えたと思わしき黒く輝く武器が握られていた


取り囲まれた結果、逃げることが出来なくなった者たちの中に一人だけまだ若い青年が一人いた


その彼の前に、マトラが行くと


「アエリア様、いましたよ。第二王子のヒートです」


その青年は怯えながら震えている


「居たか、では和平会談を始めようか、ウェスコーの国王、ヒートよ」







その日の和平会談で、ウェスコーは完全降伏をする


ありえない程の戦力差でウェスコー降伏などするわけがない、誰もがそう思っていた


降伏するのはノーチェスだろうと、誰もが信じて疑わなかった


疑っていなかったのは、ウェスコーの兵だけだったが


だが、実際はウェスコーが負けたのである



その会談の後にヒートとともに並んだアエリアはすべての兵士を集めて言った



世界は改革と平和を望んでいると


かの、消えた国ノーチェスはこの大陸の南方に位置する、新大陸にある。そことの通信手段は時間がかかるが我らにある。それでだ、私はその新大陸に行きたいと願ってやまない…ゆえに、この大陸を統一し、そしてそこに至るための技術を開発することにした!そのため私はノーチェスの王となり、今ウェスコーの王位を頂いた。この二つの国は今平和の名のもとに一つとなった


そんな演説だったという



中には目をキラキラさせながらアエリアの話を聞く者もいた。


だが、ラールがそこに居ないことで察した者たちは地下に潜る



これはしばらくして地下でアエリアの命を狙う組織となるのだが、知らぬ間に滅ぼされていたらしい


それを指揮、実行していたのはマトラと言う魔法使いと、マリアと名乗る女性剣士だったと言われた

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