第31話New continent

ノーチェス首都が消えてから約60日が経過した…


大陸中で様々な噂話が広まるには十分な時間だったと言える


新聞記者も揃ってその調査と結果を競うように記事に書き記してゆくが、その真相は未だ明らかにされてない無い


僅かながらだが小競り合いをしていた小国なども停戦をし、一斉にノーチェス消失の謎を探し始めた


僅かながらの魔力痕跡からでも、何があったかを調べれる優秀な魔法研究家達が国を超えてかの地に集結しているとも聞いた


アエリアの側でも、調査の方は、一向に進んでいない。アエリアの契約霊長ユーリを大陸の隅々まで飛ばして調べたのだが、どこにもノーチェス転移の痕跡は無かった


もはや残るは海中だとか、地中だとか調査は不可能な場所ばかりだと諦め始めていた頃のでき事だった




中庭にてマトラと新聞などを漁るように見ていたラライラの前に青い一羽の鳥が舞い降りる


羽や体毛がボロボロの体で降り立つ


その体毛は青く輝くような羽に、白いクチバシが


それなりに大きな体をしたその鳥はー


「ああー!ハヤくんだぁ!」


ラライラが、嬉しそうに笑い、駆け寄る


それをアエリアが不思議に思い、マトラに聞いた


「ハヤくん?あの霊鳥の名前か?」


「あー、はい。ホントの名前はイルヴァシュティン……ノーチェス国王の契約霊鳥です。でもラライラはその名前が覚えられなくて、飛ぶのがとても速いからハヤくんと呼んでます」


身内が申し訳ないという表情でマトラは言った

そして国王の霊鳥がここにいるということはつまり、国王が生存しているという証でもあった


ボロボロの体ではあるが、その魔力の性質をアエリアは見抜く


「それにしてもなかなかの霊鳥だな。飛ぶ速度だけならば私のユーリよりも速いかもしれないな」


それをマトラは説明する


「まあ、国王が代々で継承している霊鳥ですからね。それは回避特化で速度重視の霊鳥です。確か高速飛行中は姿の隠蔽までしていた筈です」


「ほう、それはかなり有能だ。さすがは代々国王と契約している霊鳥と言ったところか」



ラライラはハヤくんの足に括り付けられて運ばれてきた手紙を読んでいる


それにはノーチェスの概ねの近況が書いてあった


そこに書いてある日付から、およそ40日前に出された手紙だと把握する


内容から分かった事は大陸外のどうやら別の大陸に転移したと言う事のようで、流石にそれは見つからない訳だと納得する


「それにしても40日とはな…私のユーリがこの大陸の横断に掛かる時間はおおよそ半日もかからん。それよりも速いと言うハヤくんが40日かかっていると言う事はだ」


「とんでもないほど…海の向こう、ですね…これは……」


しかしそれは、見方を変えれば海の向こうに別の大陸があるという事であって


アエリアは嬉しそうに笑って言った


「しかしながら、これはなんとまあ、楽しそうな話ではないか。人が争ってきたこの大陸、それ以外があると言う…場合によっては各国が争って探し始めるかも知れないな」



「そうですね…基本的に大陸での過去の戦いの理由、食料であったり、鉱山であったりとか…資源を求めての戦いが殆どでしたから」


豊かな領地を求めて戦う、それが争いの根源とも言える歴史だ


このことは、いずれ他の霊鳥が手紙を運んでくるだろう。やり取りが出来ないわけではない、この話は世界中に拡散していくのは間違いないとアエリアは考える




ラライラは嬉し泣きながら読み終わった手紙を抱きしめている


「ハヤくん、私手紙を書くから、持って帰って貰っても良いかなぁ」



「キュイ」


ハヤくんが分かったとでも言うように鳴いた

もとよりこの霊鳥はそのつもりだったのだろう



「ありがとう!急いで書くね!」


それを聞いてラライラは手紙を書くため急いで部屋に駆け込んだ


アエリアはハヤくんに近づくと、優しく頭を撫でる


「ご苦労だったな。ずいぶんと無理をしたようだ…40日も飛び続けるとは…」


アエリアはゆっくりと、ハヤくんに魔力を注ぎ込む。その存在が消えてしまわない様に魔力を補充しているのだ


さすがに距離が離れすぎてて魔力供給が追い付かなくなっていたようである


ハヤくんの毛並みが段々と綺麗になっていった


「それにしても、別の大陸か…ワクワクするではないか。人間がいるのか?恐ろしい動物は?そもそも暮らしていくに、そこは堪えれるのか?未知だ、そこには未知がある!」


ニヤニヤと何かを考えながらアエリアは段々と興奮しているようだ


「もうおおよそ令嬢の言葉ではないですね、それ」


はっと冷静に戻るアエリア

こほんと咳き込んでから、言った


「マリア、一度こう、君の思う令嬢のイメージを教えてくれないか?」



「そうですね。婚期を気にしてお茶会開きまくって同じ立場の令嬢を集めていたり」


「ほう」


「派閥を作るのも大好きですよね、夫の太鼓持ちみたいなものですけど。他にも花嫁修業したりとか今流行の服がどうとか香水がどうとか食べ物やがどうとか恋バナがどうとかぁああああ!」


「何か恋バナに恨みでもあるのか・・・マリア」


「いいえ、特には。失礼、取り乱しました。まぁそう言ったものと無縁のアエリア様ですものね。本当に令嬢と言うよりも帝王とかそういうのが似合ってますよね」


キラリと笑顔を向けるマリアだったが


「私としては、そこまで女を捨てているつもりはないのだけれどね?よし、修行を再開しようか?とりあえず食事抜きでぶっつづけで」


「アエリア様、お綺麗ですよね。どこの化粧品を使ってるんですか?」


「うん、そんなものは持ってないね。さあ行こうか」



ズルズルと引きずられて行くマリアを見てマトラはくすくすと笑うのだった






お父様、ご無事で何よりでございます


ラライラは大変心配しておりました


こちらに手紙が着くまで、40日は経過している様です。これでおおよその距離が分かりますか?


ハヤくんに方向も教えて貰いました…


この距離の先に、お父様、城の皆様、住民の方々は居られるのですね…


いつか、再び逢える日を楽しみにしております







「なんだ、これだけで良いのか?」


「はい、また次の手紙が来たらお返事書きますので!」


「ここしばらく落ち込んでいたがようやく笑えるようになったな」


「あはは…でも、会えないのは寂しいですね」


「なぁに、頑張ってハヤくんと同じ速度、同じ距離が飛べるようになれば行けるだろう?」


「あ、そうか」


「転移魔法を復活させるという手もあるぞ?今は限られた魔道具しかないが、それも増産できればいいわけだし、な」


アエリアから色々と思いついた手段を聞かされて希望を手にする


ただそのどれもが、努力を必要とするものばかり


「頑張らないと」


「そのいきだ」


そして、今まで大した修行をしてこなかったラライラは今日から頑張ることになるのである



「アエリア様、ありがとうございます」


「マトラ、礼を言うのは私のほうもだよ」


「え?」


「今まで広い世界だと思っていたこの大陸…それが急に狭く思えてきた。それは外に別の大陸があると識れたからだ」


「ええ、そうですね…まさかほかに大陸があるなど…過去には外海を調べたことがありましたが、大陸があったという記述はありません。小さな島が数個見つかっている程度です」


「ああ、楽しいなぁ。速い船を、作らないといけないな…計算してみたよ。今の船の速度で片道4年かかる。その方角に大陸がある。だがその途中にはなにもない。4年もの月日を船の上で過ごせるわけもない。途中で補給ができるとも限らん。であればその距離を縮めるのは速度だ。速い、船。そして乗る食料と乗組員の確保、育成…何年かかるかわからんなぁこれは」


「っ!とてつもない話です…と言いますか、単独であればもっと簡単に行けそうですが、まさかアエリア様…」


「こんな面白そうな事、一人でやってどうする?楽しみは皆で分かち合う方が比べ物にならんほど楽しいのだぞ?」



出来上がるころには死んでいるかもしれないな


しかし私はそれを知ってしまったが故に我慢ができそうにない。そう、これは大陸は一つになって突き進まなければいけない話だろう?



そうアエリアは締めくくった。そしてそれはアエリアの進む道が決まった瞬間でもあった



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