第30話閑話 ノーチェス

暗闇が暗闇が覆い、それは…すべての生物が停止したようだった


黒い何かが迫ってきていた


遠くから、どんどんと広がり覆う津波の様に


逃げようと思ったのに体はピクリとも動かない


重いのとは違う、まるでそこにべったりと硬く貼り付けられていたようだった



それに包まれた瞬間



世界が闇に沈んだ



息さえもままならない空間


晴天の星空は消え、月も消えて、灯りもすべてが消えた


視界の全てがまるで夜の闇に覆われたようだった


いくらの時間が流れたのかは分からないが…


だけれども気づいた時には再び明るさと、誰かしらが叫んだ悲鳴で世界が再び動き出した








その日、緊急事態が発生していた


重役達が集められたノーチェス首都での会議は紛糾する


誰しもがその事象を説明できないからだ。また、その理由すらも分からない


ただ、明らかになる被害が甚大なものと判明していく


多くの人が犠牲になっていた


最初の報告はこんなものだった


「ええっと、ここの場所はいまだ不明ですがどっか山脈のふもとで在ろうことは確実です。周囲を探索…いえ、首都の周囲を探索した結果、ここは山脈という事の様です」


だた、それは調査せずともわかる事で


王城の窓から見えるのは多くの山脈だったからだ

ただ、すべての山は木々でおおわれており、寒かったあの地と違い気温はやたら高い


暖かい地に慣れていない面々は体中から汗を吹き出すようにかいていた


「山脈……か。であればデアトロ山脈、ミルハン山脈、ルイルイル山脈のどれか、かもしれんな」


王ですら、いつもの豪華な上着を脱ぎ捨てて、薄着となっているにもかかわらず額からは汗が流れている



「そして。綺麗な円形状にくり抜くように転移されており、特に首都南西は大きく崩れており住民がかなり犠牲となっております」



会議室がざわりと動揺する

中には泣いている人間もいた。おそらくは崩れた所に親しい人間が居たのだろう



その数日の後、判明するのだが所在地として、そこはおそらくは誰も人の居ない土地であろうことも判明する


名もなき山脈という名を付けた、それこそサウセスよりもかなり南に下って、海さえ超えた土地ではないかとの答えが出たのはおおよそ3年もかかった


ただ、近隣諸国へ、ノーチェスの首都以外の街などとは召喚魔法の鳥類を使用した手紙のやり取りができたことにより、無事が知らされた


高速な鳥を召喚してさえ、一か月以上の日数が必要だったことからその場所は相当遠いことも判明した


そして不幸な事ばかりでもなかった


その周りの土地は非常に肥沃であり自然の植物も見たこともないものが多かったが、食べ物になるものも多かったし、動物についても豊富な数が確認された。

海も近く、そこでは多くの魚が取れることも判明


ノーチェスはそこで暮らしていくのに十分な恵みが得られることに安堵する



そこはノーチェスの国、として単独で納める領土とした




他の国々と国交が回復したのはそれからおおよそ60年後となった










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