第27話英雄は間に合うから英雄なのだ

タラントが盾を得たのは、それこそランスロットが居たからだ。


マチルダを護る


その強くなる為の仮想敵がランスロットだった


ランスロットを打倒す、それは無理だと心から思っていた、しかし最強の剣士と言われるその攻撃力からマチルダを護りたいと願う


であれば、勝たなくとも護り抜けばいいと思った


だから、タラントに盾が顕現した。そしてこれは、ランスロットには秘密だった


何故ならば聖剣魔法と言うものはある種秘技に近いものであったからだ


タラントの家系にひっそりと伝えられたこの魔法は門外不出だと思っていたのに、今回の敵はそれを使ってきた


それは完全な優位性を失ったことを意味している



さらに、第二解放


それは未だにタラントが成しえない力だったのに、敵が其れを用いて来る


理論上は例え第二解放で在ったとしても持つはずだと思っていたが不安な事には変わりない


(くそ、なんで秘伝の魔法が!しかもウチの門下生にすら教えない第二まで!だが俺の盾ならば防げるはずだ!父の第二解放でも突破には暫く時間が掛かかる代物だ)


タラントは不安になりながらも、後ろを護る為に力を籠める


一方で、ハイルの方も似たような事を考えて居た


(くっそだりぃ!ランスロットが聖剣魔法を使用する想定は在った!だが、雑魚みてぇな奴が使えるとは思わねぇじゃねぇか!しかもシールドタイプとかレア中のレアだろうが…第二解放でもあの盾抜ける自信はねぇぞ…めんどくせぇけど全力出してやる)



そう、思っていた二人だったが



アエリアの聖剣第一解放という言葉が耳に入ってしまう


そして見る


そのままアエリアはさらに剣を増やし、さらには第二解放で翼まで生やした



(こりゃぁ…合わねぇぞ…旗色が悪すぎる。後ろの戦力導入するしかねぇか…後はアニキが間に合ってくれりゃぁ戦力としては十分勝てる!)



ハイルが二人目の聖剣使いに覚悟を決める瞬間の事だった



ランスロットが現れる


「ッ!くそが、はぇぇじゃねぇか!まだ数分だぞぉ…もしかしてあいつ等ぁ…」


ハイルが嫌な顔をした


「あいつ等?ああ、足止めしに来た奴らか。足止めされたぞ?宴は中止になってしまったが」


「ふざけんなよ。一応精鋭のやつら10人は向かわせたんだぜぇ」


「それなりにやるやつらだったのは確かだが、それほどでもなかった」


事も無げに言うランスロットにハイルが噛みつく


「聖剣魔法使いが10人が大したことねぇってどんだけだよてめぇ…」


その言葉に驚いたのはタラントだ

ランストットは強いのは知っていた。それこどあり得ない程の強さだとも

だが、聖剣魔法使い10人の剣士を倒すだなどと出来るものなのかと驚く

自信ある盾でもさすがに10人は防ぎきれるものではないと思うからだ


「聖剣魔法使い?うん?使っていたか?そういえば…お前は使っている、のか?」


そのランスロットの言葉に一瞬訳が分からなくなる

ハイルは、仕方ねぇと胸から赤色の結晶を取り出す


奥の手の中の奥の手だコイツで時間を稼ぐ。化物ランスロットに、聖剣使い2人にどこまでやれるか分からないが、ここが正念場だと理解し覚悟した



「あー、アニキぃ。早く来てくれよぉ…聖剣第三解放…」


「なっ!第三!?」


タラントは信じられないと叫ぶ


それは聞いたこともない第三解放


「知らねぇのか、こいつが最終強化なんだぜ?もっとも…俺じゃぁ石の力無しじゃァ使えんけどな」


ふわふわとしていた赤い炎の剣が、青色に変わる。それと同時に、ハイルの左手に盾が生まれた


「ふぁぁ、いーい気分だ。漲ってくるぜ。さっさと終わらせてもらうぜ」



そう言うと、ハイルの足元がブレて姿がぬるりと動く

そのままタラントの盾を


音もなく、十字に切り裂いた


ドンッと盾から溢れた魔力が爆発を起こし、タラントは後ろに吹き飛ばされる


「がはあ!」


そしてそのまま追撃、はランスロットが距離を一瞬で詰めてさせない


ギィンと音を立ててハイルの剣を弾いた


「おいおい、アレに対応するのかよ…マジでアニキみてぇじゃねぇか」


ランスロットは何かをしている様ではない。純粋な技量のみで聖剣解放したハイルの剣を受け止めた

それは知る者からすれば異様な光景なのだが、ハイルには出来る人間に心当たりがあった

だからこそ、その脅威を身に染みて分かるのだ



「あー、アニキに人質なんているのかねぇって思ってたが、こりゃぁどうなるかわかんねぇ」


「人質、だと?」


「そこの妹、人質にゃあなるんだろ?なぁ!」


そう言ってハイルはマリアに向けて駆けだそうとするが、それはもうランスロットがさせない


「なんで回り込めるんだぁ!?」


しかし、ハイルはにやりと笑う


「まぁ、目的は達せられたから良いか」



そう言うや否や、ランスロットの左視界に剣が見えた

即座に反応し、そちらに剣を回して防御をする


「ぐっ!」


ガィン!


そのままランスロットは押し出され、黒い影と共に吹き飛ぶ


「アニキィ、待ってましたぜぇ」


大男が、そこに居た

ぼさぼさの長髪に、黒い鎧を着こんでいる。右手に黒い盾をもち、左手には黒い大剣


「なんだ?ハイル、テメェ人質はどぉした…ああん?第三解放までしてんのか?んで、今のは誰だ?」


ガシャンと音を立てて剣を担ぐ

その所作に無駄はなく、明らかな強者だとわかる


「今のがランスロットですよ…アニキ、知らなかったんですかい?」


「あの細ぇのがかぁ?まいったな、こりゃ警戒しすぎたか」


ガハハと笑う大男の右手が一瞬ブレる


ゴィン!


いつの間にか戻ってきたランスロットの剣を盾が受け止める

ランスロットが言った


「何者だ」


「おーおー。アレくらいじゃ沈まねぇってか?まぁいい、俺の名はギィル・ガランドルだ。おめぇさんを排除しにきた」


「ギィル?」


「知らないのは無理はねぇ、だがコレからこの名が世界に轟くぜぇ…二人目の大陸統一者としてな」


不敵に笑うギィル


「どのみち、イマんとこテメェさえいなくなりゃ障害は殆どねぇみてぇだからな。先に殺しちまうことにしたのさ」


「ならば直に来ればよかろう…人質など穢れた真似をする必要などない」


「俺の参謀がよぉ、完璧主義者、つうかよ、念にゃ念をいれる奴でなぁ…俺はお前ごときに負けねぇってのに」


「そうか、ならお前の計画はここで終わりだ。俺を倒せずにな」


するとギィルの奥に居たハイルが言った


「おっと、なんか忘れてねーか?さっき盾使いは倒したんだぜ?これからアニキにかかりっきりになるお前に奥の妹は守れるのかねぇ?」


ランスロットは一瞬焦る、が…見ればにこやかに笑うアエリアが視界に入る

その手には剣が握られているのも、なぜか背中に翼が生えているのにも気が付いた


「おいおい、私を無視するとはいい度胸だ。ハイル、お前に少しばかり指導をしてやろう」


そう言ってアエリアが前にでて、手に持つ聖剣と翼を霧散させる


「ああ?なんで解除した…」



そして、偶然にもランスロットとアエリアの声が重なった




『『聖剣顕現』』








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