第26話聖剣・魔法

「ほう、あの年齢で聖剣魔法を使えるか。有望だな。そして盾が顕現するとは…さらに有望じゃないか、タラントは」


タラントが顕現させた白き盾は、男の赤い剣を防ぎ続ける

アエリアが有望と、称したその理由はその盾の顕現だ

本来の聖剣魔法と呼ばれるそれはその名の通り剣を表す

アリエッタの時代では盾持ちがいるのといないのとでその、生存率が大幅に変わっていた

ただの盾ではないからだ


敵の魔法すら切り裂くのが剣ならば、盾はその魔法を防ぎ、味方を守る





「ああ、マジ硬ぇ」


そう言いながら剣撃を続けるが、タラントの盾がすべてを防ぎきる



「アエリア様、聖剣魔法とは何ですか!?あれは一体?先ほど赤い剣になったとたんに、あの男も速度が上がったように思えます」


マリアは分からない

だからこんな状態なのにアエリアに問いかける


「見えたか、ちゃんと強化出来ているようでなによりだ。こいつらの使っている魔法はその強化ができるようになったら教えようと思っていた。というか、タラントが使えるのは想定外だったがな」


そうアエリアは笑うが、マリアにはその意味がなんとなく分かった

タラントの方が、マリアよりも強いという事だ


騎士団でも師範の位にあるマリアだが、タラントの名前は聞いたことがなかった

それほどの力の持ち主ならば聞こえがいいはずなのに、耳にはいらないという事があるのだろうかとも思う


それはタラントが何のために剣を修行しているか、その理由に他ならない


マチルダを護る為だ


その思いがあったからこそ、タラントの想いは聖剣は盾として表れている

だが男の剣は赤い、そうまるで血の様に


その赤は他人を傷つけるためにあるような気がした





だが、実の所アエリアがマリアに教えようとしていた聖剣魔法と、彼らのものは大きく違う

そもそもタラントにしても、謎の男にしてもなのだが魔力による身体強化はで出来ないのだ


ではなぜ、強化されているのか?


それは聖剣魔法により顕現した剣ないし盾の効果によるものだ

だからもし、マリアが魔力による身体強化を覚え、その上で聖剣魔法を使えばその上昇効果は計り知れない


そのことに当のアエリアはまったく気づいていなかったりはするのだが




「聖剣とはその想いが武器として具現化する。その強さは鍛えられた武器を遥かにしのぐ。しかし扱うには当然ある程度の技量が必要でな…」


「それは、視ればなんとなくわかる気がします」


目の前の攻防がそれを物語っている


あれほど大きな盾を、まるで羽毛の様に振り回して男の剣を防いでいる

男も流石でタラントの隙を縫うように打ち出している


「二人とも決め手が無い様だな。さて、ここで状況が変わるようなことが在るとすれば」


「え?」


それは第三者の介入だろう

マチルダは倒れたトーマスを介抱している

アエリアとマリアは傍観者だ。姿は見えないが周りを取り囲まれているので、逃げるわけにもいかない


そのうえでタラントと男は未だ決め手はない


となれば、敵の打つ手は簡単だ

この男が現状三人足止めしている状態

こちらは無手で、剣はないときた



少しづつ、全員を取り囲む圧が強まる


(なるほど、慎重だな。こちらがまだ奥の手を持っていると思っているのか、簡単に近寄ってこない)


それは正解でもある、と同時に不正解でもある


「いや、他に狙いがある?足止め……時間稼ぎ?しかし急いでいるのは嘘ではない」



さすがにおかしい。少しばかり嫌な予感がするとアエリアは考える


聖獣を呼び出して戦えば、ここからは簡単に脱出できるだろうが……



男は、だるそうに剣を持ち直す



「あー、てめぇ、名前はなんて言う」


そうタラントに言った


「ふん、タラント・ディルウッドだ」


それを聞くとニヤリと笑い


「俺あー、ハイル・イグニス……ここまで硬ぇとは思わなかったぜ」



それを、言ってから赤い剣に魔力をさらに込めはじめる


「聖剣第二解放…行くぜ。止めれるもんなら止めてみろ」


それを聞いてタラントはまずいと言う顔をする



男の剣から赤い炎のがぶわりと燃え上がりその刀身全てが溶けて消える


炎の剣となる


「アエリア様、第二開放って…」


「悪い、知らんな…そう言えば先程は第一解放と言っていたか」



アエリアがマリアに教えようとしていたのは単純に聖剣解放だ


今彼らの行使しているのは魔法の聖剣を小刻みに解放しているのではないかとアエリアは推察した


そしてそれは当たっている


だから、アエリアはその術式を読みとった


試してみるか


そう言って、落ちていた木の棒をひろう



「聖剣第一解放」



アエリアのその右手に、剣が生まれた



木の棒を依代としたその剣は透明で、薄らと輝きを纏っている


「なるほど、こうなるか」



そして空いた左手を見てもう一本、木の枝をひらう



「聖剣第一解放」



さらに唱えると



アエリアの左手にさらに剣が生まれた



それを見ていたタラントは驚きで声を失い

ハイルはだるそうだった顔を引き攣らせる


「はああ?聖剣魔法の二刀だぁ?なんだそりゃあ」



燃え盛る自らの剣に力が入る



「で、第二解放だったか?」



そして、アエリアの背中に、白い翼が生まれた



「っ!?第二解放までするかよ!!こりゃあ旗色わりぃなぁ!アニキにゃ悪いが撤退させてもらう方が良さそうだな」



ハイルは盾と剣の聖剣持ちが敵となると、自らの不利に嫌そうな顔をする



そしてアエリアが構えようとした時



「すまない、遅くなった―」



そう言ってランスロットが駆けてきた

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