指差し

ある日を境に俺の息子が能力に目覚めた。

その能力で俺の妻が亡くなった。

有り得ない話かもしれないが、俺の息子が妻を殺したのだ。

息子が持つ能力……それは、というもの。

その能力で何人もの人が相次いで亡くなった。

何度も言うが、その中に最愛の妻もいる。

俺は息子に"もうその能力は使うな"とあれだけ強く言ったのに、勢いは止まらなかった。

息子自身自覚しておらず、突如能力が発症したのだという。

ああ……神様……。

どうか息子の能力を消して下さい。

何度祈っても無意味だ。


妻を亡くして早一週間が経った。

息子は人を指差す行為をしなくなった。

これで被害者は出ないだろう。

そう、思っていたのも束の間。

「あ!」

突如、息子は家の鏡に指を差した。

明日、俺か息子自身が亡くなる。

俺は深く決意した。

とうとう俺は妻のいる世界に行けるのか……。

だが、俺と息子は亡くならなかった。

"指差し"の能力は消えたのか?


「ねえ、昨日お父さんの首を絞めようとした幽霊。僕の能力で成仏したのかな?」


首筋を触ると、確かに手の痕跡がついていた。

「もしかして助けてくれたのか?」

「うん!」

「ありがとな」

俺は思わず息子に抱き着く。

まさか息子の能力のおかげで助かるとは。

俺は安堵する。

息子が近くのテレビに指を差している事も露知らず俺はひたすら息子に抱き着く。


そして次の日、俺は亡くなった。


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