第12話

 フュの街は取りたてて特徴のある名産品はない。王都への中継地点のために作られた街だからだ。だからこそ、交通機関が充実していて何十もの線路が引かれている。


 線路を辿って地図と照らし合わせれば迷う怖れはないだろう。そんな街から路線が広がっていく建物が倒壊している。倒壊した付近には遺体が多く転がっていた。人間なのか魔物なのか判別するには衣類を着用しているかで判別しなければならない。多数と多数の争いのあとの悲惨を物語る真っ平らではない抉れた地面は埋めるのを待つ墓穴に見えた。


「魔物が、何故?」


 車から下りたアビルは沈痛な面持ちで周囲を見渡した。


「生き残りはいないか!」

「いた!」


 ボールのように跳ねて向かっていくアダチとアラキに遅れてアビルも向かっていく。俺はどうしよう?


 隣のホクトを見ると天井に備えつつけられていた一本の武器を手にとってこっちへ手渡した。


「ご主人様。これを持って行ってトウマの作ったナイフよ。掌サイズの武器が使いやすいのではないかしら?」

 いや、俺は闘いませんよ?

「お守みたいな物よ。手前は疲れたからここで眠っているわ。明日の昼までには戻ってきてくれると嬉しい。そのまま放置してくれても嬉しいけれど」


 ど変態はこっちの話は聞く様子はなく横になってしまった。少し逡巡してから鞄にナイフをしまうと三人の後を追った。一人の血まみれの兵士をアラキが解放しているようだ。横たわって呟いている彼を見ながら彼女は首を横に振った。アビルは苦虫を潰した顔をした。


「何か情報をくれ!」


 兵士はぱくぱくと口を開閉しながら反乱と声にして事切れてしまった。


「反乱?」


 どっち?


 考えている暇なんてない。


 一歩進んで固まっている三人を乱暴に突き飛ばした。


「お、お前!」


 軽く顔を覆うようにして鞄を盾にすると遺体となった兵士が弾け飛ぶ。


「「「!」」」


 肉片と共に人体に骨、歯、爪が人体に衝撃を与えた。トウマが作ってくれた衣類を身につけているとはいえ貫通はしなくとも痛みある。あるけれど、筋トレが役に立ってくれたのか重症にはならなかった。だから、痛みはやばい、超痛い。逃げとけば良かった。どっかの誰かの真似なんてしなきゃよかった。


「旅人さん!」

「ほう。気づける人間がいるとはな。旅の間に優秀な下僕を手に入れたようだな皇女様」


 数多くの時間が低下屍の破片の中、一人の完全な肉体を持った男が立ち上がった。彼はどうやら隠れていたようだ。恰幅のよい体に軍服を纏って長髪にオールバックのその男はニヤニヤ笑みを浮かべながらこっちを見据えた。


「ア、アナタは」

「どうも。覚えているかい? オレはガトウ。ちょっと反乱分子のオレたちに協力してもらないだろうか」

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