第33話

その後、アンジェリンの所には相変わらず 頻繁に千鶴子から手紙が来た。そしてそれは千鶴子が日本へ帰るまで、ずっと続いた。 余りに年中来たので、そして返事を要求し たので、アンジェリンもたまに手紙を出した。                  彼女は殆ど一人部屋状態だったから、夜に 寮の部屋に一人でいて、暇な時にはそうして返事を書いた。             秋川に聞いた事は本当だろう。だが自分は 別に元々面白い人間ではないし、別に賢くもない。だからそんな事も言われるのだろう…。そんな風に思った。        そしてもう千鶴子とも会う事もないのだから、せめて手紙位ならと言う気持があった。又返事を書かなければ、怒って何か変な事を 万が一されても困るという気持も多少あった。                 学校が違うし、住んでいる場所ももう違う。だが千鶴子にはとにかく悪霊が着いている。動物霊の狐の霊だ。だから変に怒りを買っても大変だ。                それからもう一つには、あのターザン映画を夜に見ながらピザとコーラを飲んで過ごした一週間程の出来事があってからは、何か余り千鶴子ヘ対しての怒りが静まってしまったのだ。                  サンタモニカでの出来事は確かに腹が立った。だがそれが過ぎてしばらくして、そうして又年中手紙が届くと、アンジェリンは割と許せてしまったのだ。          何故なら今のアンジェリンとは違う、当時は丸で別人の様な人の良さが彼女にはあったのだから仕方が無い…。          そうしてカリフォルニアヘ来てから一年が 経った。アンジェリンを含め、皆がKBSを卒業した。                アンジェリンはTOEFLで、幾つか別れてる レベルの一番上のランクに入る点数を取って、現地の短期大学(ジュニアカレッジ)に入学した。               千鶴子はサンタモニカの英語学校を出て日本ヘ戻ってからは、元の短大生に戻った。  不思議と、日本からもまだアンジェリンの 借りたアパートヘ手紙がたまに届いた。そして近況を知らせて来た。         そうして二人の文通は続いた。      又、アンジェリンが日本へ戻ってからも文通をした。それは何年も続いて、二人が20代の半ばまで続いたのだ!         特に、千鶴子が短大を卒業して就職をした ばかりの頃には、サンタモニカにいた頃の様に年中手紙が来た。何故なら、彼女は旅行社ヘ就職したのだが、そこでの仕事や職場が嫌でたまらなかったのだ。だから、その愚痴を書きまくってきた。           アンジェリンはKBSにいた他の人間誰一人とは付きあいが無かったから、千鶴子の愚痴に対して真面目に向かい合った。そしてアドバイスや自分の考えを書いて送った。    千鶴子が入った旅行社は、当時はどうという事は無かったが、今では誰でもが知っている大手だ。今では日本中に、どこにでもある!!                 そしてアンジェリンもアンジェリンの母親も、その後は海外へ行く時には必ず利用  してきた。何故なら、安く航空券が買えるからだ。                 そして千鶴子はそこで添乗員になって、国内を色々と巡る事になるのだ。       だからある時、横浜に来るから会いたいと 言ってきた。自由時間があるからと。   アンジェリンは横浜市の中心地の出身で、 観光地が周りにある所からそんなに遠くない場所に実家があったからだ。       どうしようか悩んだが、相変わらずしつこいし、千鶴子がどんな風だかも少し知りたい 気持もあった。             だからアンジェリンは会いに行った。そしてこの時に、千鶴子に会ったのが最後になるのだ…。                           

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