第32話
「千鶴子、本当なの?アンジェリンは電話をしようとしたの?だけどあなたが止めたの?」 エレンが優しく聞いた。 千鶴子が分からない風に頭をかしげた。 エレンが又優しく、もっとゆっくりと聞いた。 アンジェリンはハラハラしながら千鶴子を 見た。ちゃんとに言うよね?!大丈夫だよね?! エレンが又聞いた。すると千鶴子は返事を した。 「No!」 アンジェリンは驚いて叫んだ。 「千鶴子?!」 エレンはほら見ろ、と言う顔をした。 「アンジェリン、千鶴子はそう言ってるわよ?」 「一寸、千鶴子?!何言ってるの?!」 アンジェリンが怒鳴った。 千鶴子はケロリとしている。エレンが一応は確認の為に、もう一度聞いた。だが千鶴子は同じに答えた。 アンジェリンは裏切られたと言う気持で ショックだったし、エレン達に誤解されたら困る。これは濡れ衣なのだから!! アンジェリンが説明しようとしてもエレンは一切受け付けなかった。アンジェリンは悔しいし悲しいしで、涙が出て来た。そして泣きながら言った。 それは違う、嘘だと。千鶴子が、自分を悪くならない様に嘘をついていると。 だがエレンは一切受け付けなかった。 夫のピーターはアンジェリンの様子を観察 しながら、目を真っ赤にしながら必死に、 エレンに話を聞く様にと声を荒らげているのを不審に思った。アンジェリンの方が本当の事を話している様だと。 「なぁ、ハニー。もっとアンジェリンの話を聞いてみないか?」 「何言ってるのよ?!」 エレンが怒鳴り付けた。 結果、アンジェリンは翌日オレンジへ帰る 様にと言われて、話は終わった。 部屋に戻ってからアンジェリンが千鶴子を 責めると、千鶴子はこう言った。 「だってー、あの場合はああして言うしかなかったんだもの!」 「何で?!自分が絶対に電話をかけさせなかったんでしょう?!」 「そんな事、してないよー。」 「したじゃん?!絶対に電話をかけさせないで!かけようとすると、どんどん先に歩いて行っちゃって!だから、あんな広い所ではぐれたら大変だから、見つからないから、私も仕方ないならその度に止めたんじゃん。何を嘘ついてるの?!」 「アンジェリン、もう終わった事なんだから。いつまでもクヨクヨ気にしないで? ねっ?明日、ちゃんとに送って行くから!」 翌日、千鶴子がバス乗り場まで送ってた。 そして、本当ならもっと何日間かいた筈だったが、アンジェリンは戻った。とても不快な気持になりながら。 では何故千鶴子がそんな事をしたのか?又、前にサンディエゴの映画館でした事も何故か? 勿論、千鶴子には悪霊が憑依しているからだろう。死んだ狐の霊だ。だからそうした悪さをする。そして面白がる。 彼女にそれが着いていると信じた人間はアンジェリンだけではない。ドリー、ダン、恵梨香もそうだ。 だがもしかしたら、元もそうした意地の 悪い、人が困るのが好きな、そうした悪戯 好きな人間だったのではないだろうか?だからそうした物が着きやすい質だったのかもしれない? 後にアンジェリンは知央里の彼氏、秋川から千鶴子の事でこう説明を受けた。そして忠告もされた。 彼は頭は良かったが、知能指数がかなり高いと言ってよく自慢していた。200点近いだ とかを言っていた。悪い奴ではなく、良い 奴ではあったが、そうして自慢する所もあった。 この秋川と話すチャンスがあった時だ。アンジェリンはサンタモニカまで千鶴子に会いに行った事を話した。そしてとんだ事になり、直ぐに戻って来たと。 その時、彼はこう言った。 「アンジェリン、お前、千鶴子なんかと付き合うのはよせよ。」 「エッ?」 「お前、知らないんだろうなぁ。めちゃ くちゃ人が良いから。」 「何が?」 「あいつさ、付き合う価値なんてないぞ? あいつは、お前がいない所じゃあお前の事をボロクソに言ってるぞ。」 「エッ、嘘?!」 「何が嘘なんだよ?!だからお人好しだって言うんだよ!あいつはお前の事なんて好きでもなんでもないよ。お前なんて馬鹿だし、 一緒にいても何にも面白くないっていつも 言ってるんだからな!」 「じゃあ何でサンタモニカまで来いって言ったの?サンディエゴの時だって、知央里達が嫌がるのに仲間に入れて一緒にいたり。」 「そんなの、一寸考えりゃあ分かるだろ? お前がいれば、サンディエゴに行って歩いていても恐くないだろ?何しろあいつらは英語なんて殆どできないんだから!サンタモニカだってそうだよ。あいつには遊ぶ友達がいなかったんだよ。だからつまらないから、人の良いお前を呼びつけたんだよ!だから、 スーパーやモールでそんな事をしたんだろう?」 アンジェリンは秋川に、スーパーでの事が 発端で、モールで遅くなったのもあり、 エレンに自分は酷く嫌われてしまったと話した。 「いいか?それ、全部わざとだよ。恐らくあいつは分かったんだよ。エレンがお前と 会った時にお前を気に入ったのが。それで あいつは腹が立ったんだよ。英語が自分よりも話せて、見た目もあいつらと同じだし、 可愛いから、何も違和感が無い。自分なんかよりも、お前がいる間中はお前がよくされる。食事の時やなんかに、お前中心の会話になる。それが我慢できなかったんだよ!! だから、まずはスーパーでわざとお前に金を出させた。そうすりゃ当然エレンは面白くないし、変に思うよ。まさか千鶴子がしつこくしてそんな事をやらせるだなんて、誰だってそんな事を普通考えないからな。そうだろう?」 「…うん。」 「だから一番最初に、そうやってエレンに お前を嫌がる気持を植え付けたんだ。そしてモールで映画を見るから遅くなるのも、そんなの、電話の一本位簡単にかけられるだろうう?!なのに何でそこまでして嫌がったんだよ?そうやってかけなきゃ、必ず後から責められる。その時に責められるのはお前だよ、あいつじゃない。あいつは英語ができないからって言い張ればいい訳だし、なんて言っても自分達の知り合いの子供だろ?なら、例え少し位おかしいと思っても、あいつを悪者にするなら、お前をするよ。お前なんてそいつらからしたら、何にも関係無いんだから!只、千鶴子に呼んでほしいって頼まれたから、だから来らせただけの人間なんだから。なっ、そうだろう?」 アンジェリンは驚いて黙っていた。 「いいか?あいつは凄くわがままで、他人の事なんて何も気にしない奴だよ。自分さえ 良けりゃあ良いんだ。そして凄くヤキモチ焼きだしな。他人の良い事なんて絶対に許さない!そんなのは簡単にぶっ潰す奴なんだよ。サンディエゴの映画館の話も、知央里から 聞いたけど、何でそんな事をしたか分かるか?」 「分からないよ、そんなの。」 「あいつはうっかりして手を大きく広げたから、それでその券が拾った物だってバレたから、謝ったんだよな?だけどそれはわざとなんだよ!!モールの時と同じで。あいつは 映画なんて最初から見たくなかったんだよ。その時は、みんなで喋っていたかったんだ。だけど他の奴等が映画が見たいって言うから、そこで一人で反対してもどうしようも ないからな。だから、そうやってわざと見られない状態にしたんだ。」 アンジェリンは目を見張った。 「だから本当ならその場でつまみ出されて たんだよ。そうしたら又どっかに入って、 飲んだり食ったりできたしな。だけどお前と修子が逃げて、中で映画を見ていたからそこで待つしかなくなったんだ。」 「嘘みたい…。」 「何が嘘みたいなんだよ?!サンタモニカ まで行ってやったのにそんな事をされて、 それで追い返されて!!お前がそんな風だからあいつはそうやって利用するんだよ。 お前、あいつに馬鹿にされてんだぞ?もっとしっかりしろよ〜。」 「…うん。」 「あいつのあだ名、知ってるか?!誰かが あいつをスッポンみたいだって言ってよ。 スッポンは一度噛んだら離さないからって。あいつも、相手が何か言う事を聞くまでは しつこくして止めないから、スッポンみたいだって言って。だから、あいつはスッポンの千鶴子って、みんな男からは言われてんだぞ?」 「スッポンの千鶴子?」 「そうだよ。だから知央里達もサンディエゴから戻って来た位からは、段々と千鶴子を おかしく思ってきてさ。だからもう千鶴子とは余り一緒にいなかったんだ!アイツ等だって馬鹿じゃないからな。お前は日本人とは 殆ど付き合いがないし、クラスが一番上だから下のクラスの奴等とも丸で関係がないし。だからそうした事を何も知らないんだろうけどさ。だから、最初はともかく、あいつは段々と周りから嫌がられてきてたんだ。お前が英語ができて、ハーフで外人の顔だから敬遠されてるのとは、又違う理由でだよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます