第29話

家に帰る前にはスーパーヘ寄った。何か食べたいものはないかとその奥さんのエレンが 聞いできた。彼女はサラダを作るからと言って色々な野菜をカートに入れながらそう聞いた。                  アンジェリンは特に無かったが、一緒にスーパーの中を廻りながら、スイスのだったと 思うが、板チョコを見つけてそれを手にした。                  「アッ、これ美味しいんだよね?」    そしてたまにはチョコが食べたいなぁと思ってそれを買う事にした。千鶴子も、それを 食べた事がないから食べたいと言って喜んだ。                  レジでエレンが野菜を買う時に、千鶴子が 何度もしつこく自分でチョコの代金をを払う様にと頼んだ。それは日本語だからエレンには分からなかった。           アンジェリンは断った。好きな物を買って くれると言ったのだからと自分もしつこく 言った。なのに、自分が払えばエレンが不快になるからと。             だが千鶴子はどうしてもお願いだからと、 エレンが日本語が分からないのを良い事に アンジェリンに無理矢理に自分で払う様にと頼みまくった。             余りのうるささに彼女は根負けして、財布を出して払ってしまった。馬鹿だった!!  エレンが嫌な顔をしたのをアンジェリンは 見た。千鶴子は満足そうだった。     そのまま家に帰り、アンジェリンはメイドのエスメラルダと、娘で小学校2年生のメリッサに紹介された。大型犬で雄のシェパードのルディもいた。エレンの夫のピーターはまだ帰宅していなかったので、後から紹介された。                  夕飯は一応楽しく会話をして終わったが、 エレンが内心ではもうアンジェリンに対して余り良い感情が無いのを彼女は感じた。  だがピーターもメリッサもアンジェリンを 気に入った。エスメラルダもだ。犬のルディもずっとアンジェリンの後を付いて回った。 千鶴子は言った。            「やっぱりね〜。そう思ってたんだぁ!必ずルディはアンジェリンを気に入るって。アンジェリンの事はこんなに気に入ってるのに、私には全然なつかないんだよ?私の側には 来ないんだから!!いつも避けられてるのに、アンジェリンには丸っきり違うんだもん!!」                その後、千鶴子はアンジェリンと二人きりでソファに座りながら話していると、いきなり真顔になってアンジェリンに腕を振り上げた。驚きながらもアンジェリンがその腕を 押さえた。               「何するの、千鶴子?!止めなよ?!」  ルディが吠え始めた。怒っている。    千鶴子は前に寮の部屋で何度も自分やドリー、恵梨香に睨み付けたのと同じ表情だった。                  そしてアンジェリンともみ合っていると、 ルディがもっと大きな声で吠える。千鶴子に怒っているのだ!!           そして千鶴子はそれが面白いのだ。彼女は 犬が大嫌いだと言って、馬鹿にしていたから。だからわざとやっていたのだ!!   するとエレンがその声に気付き、心配しなががら見に来てルディを叱り飛ばした。そして何が起きたのかと聞いた。        こうした時に千鶴子は英語が分からないと 言って絶対に返事をしないし、黙っている。例え多少分かっていても丸で返事ができないふりをする。              だからアンジェリンが問い詰められて、彼女は仕方無く、二人でふざけてもみ合って遊んでいたらルディが喧嘩をしているのかと思って怒りだしたと嘘をついた。本当は、自分に何かをしようとしたので心配して、千鶴子に怒って止めさせようとして吠えていたのだが。もし相手が自分の主人や家族なら、千鶴子に飛びかかっていたかもしれない。   エレンが呆れながら叫んだ。       「ふざけてもみ合って遊んでいた?!」  もう完全にアンジェリンが仕掛けたと思われていた。                エレンは嫌な顔をしながらいきなりルディの首輪を引っ張って、嫌がるルディを無理矢理に引きずって行った。          千鶴子はその様子を見ながら、エレンに分からない様にニャニャしながら見ていた。  アンジェリンは改めて又彼女の恐さを思い 出した。やはりまだそうだったんだ?!まだあれが着いている!!          千鶴子はルディが連れて行かれるとアンジェリンを見て又元の態度に戻った。もうそれはえらく違って、又子供らしい、何となく可愛い話し方だった。            そうすると不思議な事に、何故かさっきまでの事が嘘の様で、恐くなくなるのだ?!  これはやはり狐の化け物だから、そんな風に上手いのだろうか?           千鶴子とアンジェリンは同じ部屋に寝た。 部屋にはシングルベッドが2個あったからだ。千鶴子にはゲストルームがあてがわれていたのだ。               ベッドに入っても千鶴子はしつこく話しかけてきた。だがこの時は、何故か修学旅行の様な気分にアンジェリンは感じた。     翌日は二人で近くの大きなモールへと遊びに行く事になっていた…。

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