第28話

千鶴子はサンタモニカに移ってからは非常につまらない思いをしていた。学校が終われば直ぐに帰らなければならない。      そこの家のメイドが車で迎えに行く。だから誰とも親しく話したり、帰りにどこかへ寄ったりできない。             そうして学校内では友達が中々できない。 だからいつも一人だ。部屋を一室あてがわれたがそこにはクローゼットが付いていて、 後はベッドと机があるだけだと言ってきた。前の寮の部屋もそうだったが、大学だけあって、まだ活気があった。         その家の家族構成は弁護士をしている中年の夫婦と小学生の娘が一人、メキシカンの初老のメイド、それと大型犬が一匹だった。  千鶴子は頻繁に、アンジェリンにその退屈で嫌な生活に付いての悩みを書き綴った。  そしてもうすぐ夏休みになるのだから、遊びに来る様にとしつこく誘った。家の人達には何度もアンジェリンの話をしているから大丈夫だと言って。             彼女のつたない英語力も少しは上達していたので多少は伝わったみたいだった。    アンジェリンはずっと断っていたが、その しつこい手紙は本当に凄い数だった!!  そしてアンジェリンもサンタモニカには興味があったし行ってみたいとは思ったので、 彼女はついに承諾した。         だからアンジェリンは一人で交通機関を  使い、バスに乗り、サンタモニカまで行った。                   着くとそこには千鶴子が待っていて、嬉しそうに近寄って来た。           「アンジェリン!!」          何時間か一人で旅をして来たアンジェリンは彼女の顔を見てホッとした。       彼女はこの頃、もう千鶴子に対しての恐怖が無くなっていた。あのターザン映画を、ピザを食べながら何日間か一緒に見たのと、学校でのサンディエゴへの旅行で、もう信用度がかなりできてしまった。         あの映画館の出来事も、千鶴子はわざとではなくてうっかりしてしまったと何度も後から自分達に謝った。そして皆、最初は怒って いたが結局はほだされてしまい、彼女を許したのだ。                鶴子の横には中年の白人の女性が立っていてアンジェリンを気持ち良く迎えてくれた。 「アンジェリンね?逢えて良かったわぁー!」                 嬉しそうに言った。そして3人で車に乗った。 

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