第15話

「アンジェリン、私…。ごめんね?!」  千鶴子がいきなりしおらしく言った。   アンジェリンとドリーが驚いて見つめた。 「千鶴子、急にどうしたのよ?!」    ドリーが問い詰めた。         「私…、アンジェリンにヤキモチを焼いて いたの!だってアンジェリンは可愛いし、 英語だって凄くできて、クラスでも1番なんでしょう?」              アンジェリンは驚いて千鶴子を見る。   「だからってあんな事をするの、おかしいんじゃないの?!」            ドリーが言った。            「だって、悔しかったんだもの。」     アンジェリンは何て言っていいのか分からなくて黙っていた。            「だから、ごめんね。ねー、アンジェリン?許してくれる?」            アンジェリンは黙っている。       「ねー、良いでしょう?許してくれるよね?」                 アンジェリンはその態度をわざとらしく感じた。ドリーもそう感じた様だ。      「…じゃあもうもう絶対にしないでよ、ああした事。」               「一寸、アンジェリン?!」       ドリーが叫んだ。            「うん、しない!!」          面倒臭いし、許すと言わなければその場は 終わらない。要はもうやらなければ良いだけだ。                  「ありがとう!!でもあの紙、アンジェリンには大切な物だったんでしょう?」    アンジェリンが黙っていると又聞いた。  「ねー、そうでしょう?」        「アハハハハハ!!」          ドリーが笑い出した。          「何なの、ドリー?!」         千鶴子がドリーを驚いて見る。      「千鶴子、大丈夫だよ。あれは大した物じゃないから。」              「エッ?」               「だってああ言えば必ず千鶴子が何かすると思ったから。」              千鶴子が驚いてドリーを見てから、次にアンジェリンを見た。            「嘘でしょう?!」           「あれは、うちのクラスで配られた英文法のプリント!千鶴子、ちゃんとにあれを見たの?」               「嘘?!アンジェリン!!本当なの?!」 千鶴子はそれが重要でないのが凄く面白くない様だった。              「うん、そうだよ。」          アンジェリンが注意をしながら答えた。  「千鶴子ならどうせ分からないと思ったから。千鶴子はBクラスだから。」      ドリーが言った。            千鶴子の顔が真っ赤になった。     「な、何〜?!」            「だってろくに見ないと思ったし、見ても 分からないと思ったから。」        千鶴子の顔が歪んだ。豹変した!!   「おい、この野郎?!」         声は男の様だった。           そう言いながらドリーに掴みかかろうとした。                  「キャァ!!」             ドリーが飛び跳ねた。彼女は小柄で細かったから見動きはすばしっこかった。     「こっの野郎!お前なんかのせいで!!」 ドリーが急いでドアに駆け寄ると勢いよく 開けた。                するとダンが目の前の通路を歩いて来たのが見えた。ダンとは、北海道出身の元ダンプの運転手で20代後半だった。背は低いがガタイが良く、太っていた。寮ではなくモーテルに住んでいたが、たまたま誰かの部屋に遊びに来たらしい。             そのダンにドリーが助けを求めて大声で呼び止めた。ダンが近付いて来ながらドリーの 様子に驚いている。           「ドリー、どうしたんだよ?」      アンジェリンは部屋の奥が自分の側だ。だから出ようとしても千鶴子が前にいた。   だが千鶴子は鬼の様な顔をしてアンジェリンを睨み付けると、ドアの方へ大股で歩いて 行った。                「た、大変なの?!千鶴子が〜!!」   ドリーが叫んだ。            「千鶴子がどうしたんだよ?」      「良いから中に、早く!!」       ダンは驚きながらも部屋に入り、千鶴子と アンジェリンを見た。          「千鶴子!アンジェリン!どうしたんだよ?」                 千鶴子は無言で、ダンの後ろに隠れている ドリー目がけて突進した。ダンが千鶴子を 押さえる。               「お前、何するんだよ?!」       ダンが大声を出して千鶴子を壁に押さえ付けたが、直ぐに顔が真っ赤になった。    身長が156センチ位の、ぽっちゃりだが太っていない千鶴子とダンは対等に押し合いをしている。信じられない光景だ。二人の力は五分五分だ?!              ドリーとアンジェリンはその様子をただ驚いて見ていた。              「千鶴子、止めろ!止めろってば!」   千鶴子は、アンジェリンが12歳の時に母親に無理矢理にせがんで一緒に見に行った悪魔映画の少女、リーガン程では無かったにしても、かなり殺気立って、恐ろしい顔をしていた。                  🦊‼                                                                                              

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