種無しぶどう

   

   五十五分の授業を終え 


   私は顔を取り戻す

 

   十分間の業間だけが

  

   私が私で居る時間


  

   五十五分の授業の間


   私たちの名前は


   記号 あるいは 信号になる


    

   五十五分の授業の間


   私たちには 全員に等しく


   水と肥料を与えられ


   同じ品質ののっぺらぼうになる



   誘導された方向へ


   根と茎を伸ばし


   それすら自覚しないままの私たちは


   まるで種のないぶどう






   

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日日是詩日 羽谷海 @harashin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ