第3話 ブラコンと天才は紙一重

どうやら話を聞く限りこんな感だ。

犬が苦手なのだが、子犬が腹を空かせていてが可哀想だと思いつい餌をあげたが想像以上になつかれてしまってずっとついて来る。

怖いので走って逃げようとしたら、走って追いかけてきて悲鳴をあげた所で俺が気が付き逃げるように飛び込んで来た訳だ。

犬種は柴犬でまだ小さく今はベンチで座る俺の膝の上でスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。


「そんなに怖いの?」


琴音さんの方に目を向けると未だに同じベンチの端っこで悪魔でも見るように犬をビクビクしながら見ている。


「怖いに決まってるでしょ!こいつら何を考えてるか分からない人間達の所に躊躇なく近寄ってくるのよ!?」


「それは怖いのかな?」


「怖いに決まってるでしょ!」

「相手が何を考えてるのか分りもしないのに無防備だなんて、恐ろしいにも程があるわ」


理解できずに思わず苦笑いを浮かべる。


「琴音さんにも苦手な事があるなんて驚いたよ」


「そうよ、だから私はいつまで経っても追いつけないの」


あの時学校で見せたような悲しげな表情を覗かせうつむく。


「ならさ、そんな時は僕を頼ればいいよ」


「でもそれじゃあお兄ちゃんには追いつけない」


「追いつけ無くてもいいじゃん、なんなら俺と友達になればお兄ちゃん追い越せるよ」


「ほんと?」


「ホントだ、俺は生まれてから噓をついた事がないんだ」


「噓つき」


軽く噴き出して彼女は上を見つめ、夕日が彼女の目を光らせる。

しばらく何かを考え込むと腰を捻らせ僕を見て口を開くいた。


「私の友達になって下さい」


「喜んで」


その後は他愛のない会話が続いた、何が好きとかどんな事してみたいとか。

そんな会話の中突然と気になっていた単語が飛んできた。


「実はね私超能力が使えるの」


「凄いな、どんな事ができるの?」


少し拍子抜けした顔を浮かべる。


「驚いたり、噓だと思わないのね」


「俺は人を疑った事もないんだ」


「やっぱり噓つきね」

「使えそうな能力は物を動かしたり、今みたいに相手の言葉が本心を読んだりね」


「いいなぁ、俺も超能力者欲しいよ」


「あっても疲れるだけよ、それにあなたが望めばいくらでも私は力を使うわよ」


「気持ちは嬉しいけど、そこまでしてくれなくていいよ」


何だかセリフからヤンデレヒロイン臭が漂っている。

このまま行くと二人で暗黒面に落ちそうな雰囲気なので苦笑いしながら答える。


「でも友達なんでしょ?あなたが私を助けてくれるなら私もあなたを助けるわ」


自信に満ち溢れた不敵な笑みで言い放った。

やだ、琴音さんカッコイイ、抱いて!と言ってしまいそうである。


「頼りにしてるよ」


不意に子犬が顔を上げ何かピンと来たかのように勢いよくワンワンと声を上げながら走り始めたかと思うと20代位の爽やかな雰囲気をしたサラリーマンの男性に飛び掛かった。


「うわ、て、今までのどこにいたんだよ、心配したんだぞ!」


そのまま子犬を抱き上げると大事そうに子犬をわしゃわしゃと撫で始めた。


「ワンワン!」


「あの子にも安心できる場所があって良かったわ」


「そうだね」


二人でその幸せそうな光景を少し眺めた。



家に帰るともう時間は八時を回っていた。


「ただいまー」


玄関の戸を開け居間に向かう、扉を開けるとおかずに味噌汁ご飯が並んでいた


「遅い!いつまで私を待たせれば済むのよ!」


「ごめん、つい長引いてさ!それより今日の料理はお前が作ったのか!?」


「そうよ、感謝して食べなさい」


エッヘンと腕を組んで自信満々に答える。

どの料理もとても美味しそうだ。


「ブルーチェがこれに進化するなんて・・・」


「もともと料理は得意なのよ、さっさと食べるわよ」


「「いただきます」」


久しぶりに誰かと食卓を囲んだ。それも妹と。

互いに料理に箸を進めながら会話を交わす。


「あんたしっかり琴音に謝れたんでしょうね?」


「大丈夫だったよ」


「しかしこれで琴音と友達になるのは難しくなってきたわね」


少し険しい表情をする。


「あ~、それなら大丈夫だったよ」


「噓、あんたあいつと友達になれたの!?」


「まあな」


まるで宝くじが当たったかのような目で俺を見てくる。

俺がだれかと友達になる事がそんな天文学的な確率なのだろうか。


「どっか頭でも打った?」


「友達ができただけでそれはひどくないか?」


まあ実際、未だに嬉しさと高揚感に包まれていて実はあれは夢だったのではないかと今でも思う。何せあの琴音さんと友達になれたのだ。


彼女はスマートフォンを取り出し何かアプリを立ち上げる。

お兄ちゃんの頭の事が心配で6chかヤッホー知恵袋にでも相談してくれるのだろうか?兄としては妹に心配して貰える反面、信用のなさに少しガッカリする。


「おいおい、妹よ兄の事が信用ならないのか?」


「信用ならないからこれを開いたのよ」


スマホで何か確認し、少し驚くとそのまま画面を見せてきた。


「ちょうどいい機会ね、説明しておくわ」


画面には予知信頼度A-と書かれていた。


基本的に聞きたい事をスマホに入力し、それについての今までのデータから答えが返ってくるとゆう物で

明日の天気に今晩のご飯まで聞けばほとんど答えてくれるらしい。

しかしそれはあくまでも、前回はそうであっただけなので違うところも出てくる。

例えば今回俺が琴音さんと友達になった事だ。

そうなってくると前回のデータと違うところが出始め、その返答による正確さが変わってくるといった具合で大きい変化ほど未来予測の精度が変わるらしい。


「それでね最初はS+からS、Sーって少しずつ下がるんだけど今はAー、はっきり言って異常よ」


「俺は友達になってない過去から変化してるんだからこれでいいんだろ?」


「変化すること事態は予想道理よ、ただね歴史的な災害レベルでやっとランクが一つ下がるくらいなのよ」


「てことは俺に女の友達が出来る事は歴史的事件と同レベルって事?」


いつか歴史の教科書に 深見 良太 20XX年友達を作るとか載ってしまうのだろうか。

自分の子供達ががわいそうで仕方ない、まあ結婚した事実も無いので俺が末代の可能性は十分にあるのだが。


「元々因果が結びついてたのもあるけど、これは流石にこれは」


ついに堪え切れなくなり涙を出しながらゲラゲラと笑い転る。


「友達ができただけで歴史的事件とか」


「うるさいな!俺はお前みたいにころころと恋人を変えるようなビッチじゃなくて純情なんだよ!」


これだからいかにも青春しちゃってますアピールしてそうな人種が嫌いなのだ。


「誰がビッチですって!自分に今までのそんな彼女が出来なかったからってひがまないでくれる?」


「大切なのは数じゃなくて質なんだよ!てかお前あれだろ何かするたびに大人数で集まって写真ネットに上げるタイプの人間だろ」


「そうよ、人数多い方が楽しい記念になっていいじゃない?」


「誰もお前らなんかの写真なんか興味ないんだよ、いちいちネットに上げるな!」


ネットリテラシーが問われるこの時代に自分の個人情報を載せるのか全く持って理解に苦しむ。なんだろう、どうでもいいの上げるのやめてもらっていいですか?


「じゃあ見なきゃいいじゃない、それとも何?自分にはそんな行く相手いないから羨ましいだけでしょ、全くこれだから童貞は」


「ど、童貞ちゃうわ、ソースだせよ!」


「ソースならもうテーブルに乗っかってるでしょ」


散々言い争った後二人で冷め切った食事に手を出した。

今更ながら彼女の作った料理はどれもこれも美味しく、いつも以上に食べてしまったが今更褒めるのも癪なので言わなかった。


そして歴史的事件の真相が明らかになったのは学校に登校してからだ。

いつも通り、知り合いや友人と挨拶を交わしテストがだるいや、今日の授業がだるいなどと会話しながら教室の扉を開けてけた。

そのまま席に座り授業の準備を始めると視界の端から誰かが寄って来るのが見えた。


「おはよう、良太くん昨日はその楽しかったわ」


「あっ、おはよう高神さん昨日は僕も楽しかったよ」


思いがけないタイミングに言葉がつまる。

まさか皆から注目されるようなタイミングで話しかけられるなんて思ってもいなかった。


「もう、そんな他人行儀な呼び方はやめてよ、あなたは私の初めての・・・でしょ」


顔を赤らめまるでその単語は恥ずかしく言葉に出来ないと言った具合に、もじもじしている。


「おいおい、ヤバいぞ」  「え、あの高崎さんが・・・」

「アイツ、オレ、コロス」 「どんな関係なの?」  「なんで良太くんが」


クラスからは色々な視線が刺さる。

あと何気に殺害予告までされるのはやめて欲しい。


妹に至っては腕まで抓り初めて夢じゃないか確認しだしていた。


「そうだね、友達だね!」


ここまで来てしまっては少しでも今後の学校生活の為に無用な誤解は避けなければならない。


「今日のお昼もいつもの同じ場所で一緒に食べましょう?」


楽しそうに笑いながらそう言われてしまっては断れない。


「今日は何のお話をしましょうか」


「なんか雰囲気変わったね高崎さん」


会話する彼女からは普段の冷たい対応と表情は何処へやらで、ニコニコの笑顔と

手のしぐさまで可愛い女の子である。


「だって私の初めての友達ですもん」


「じゃあさ、僕も仲間に入れてくれないかな?」


声の主は狙いの悟史だった。チャンスと思い声を出そうとしたがそれより先に

答えられる。


「それはお断りよ」


そこにいたのは以前の雰囲気をまとった高崎さんだった。

前途多難だ。





















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