第4話 ギャップ萌えは世界を救う

「つれないなぁ」


言葉ではそう言いつつも、表情は笑顔を崩さず余裕の表情だ。


「良太くんは僕のお友達になってくれるよね」


そう言いながら背中から抱き着かれ、中性的できれいな顔が横に並んだ。

肌がしろく、筋肉質ではない事が触れた感覚で伝わって来てくる。

これが経験の差なのだろうか、俺が同じ事をしたのなら絶対に嫌われる自信がある。まじで警察が呼ばれる5秒前だ。


「もちろんだよ」


妙にドキッとして思わず目をそらしながら答えた。

男相手に何をしているのだろうか、禁断の扉を開けるつもりも無いので、開きそうなのを心の中で閉じて鍵を掛けておく。


「ありがとう良太くん嬉しいよ、連絡先交換しようか」


「あ、うん」


手慣れた操作でアプリの連絡追加画面を写し出すが、僕はとゆうと、そんなの使うのが久しぶりだったので少し戸惑いながら登録画面を出した。

軽い通知音が鳴り、無事に交換できた事が分かる。


「これで完了だね」


悟史くんのアイコンには大人数でどこかに出かけた写真が使われていた。

やはり彼も妹と同じで、連れしょん文化圏の人間のようだ。


「私も良太くんと交換したいけど、やり方分からなくから教えて頂戴」


「いいよ」


そう言うとスマートフォンを手渡された。

最初はただアプリの操作法が分からないだけかと思ったがそうではない、

彼女のスマートフォンには何一つアプリが入っていなかったのでいれる所から

始めなくてはいけない。


「えっと高神さん、時間かかりそうだから今度でいいかな?」


スマートフォンを返す。


「私の事嫌いなの?」


あからさまに表情が暗くなっていき何だか心が痛む。


「違うよ、アプリが入ってないから今追加しようとすると授業が始まるんだ」


「そうなの、じゃあまた昼休みにお願いするね」


「分かった」


「ちなみに僕も一緒に食べていいかな?」


「あなたはダメ」


きっぱりと少しの迷いもなく言い切った。


「良太くん、僕は琴音さんに嫌われてるみたいだ」


やれやれといった表情を浮かべている。


「私を下の名前で呼んでいいのは良太くんだけだから、二度と下の名前で呼ばないでくれるかしら」


「怖い怖い、邪魔者は帰るよ」


笑いながら背を向け立ち去っていった。


「そろそろチャイムなるから私も戻わね、また昼休み」


バイバイと手を振りながら高神さんも席へと足を向ける。


少しの場の沈黙の後、クラスの大半が今度は流れてきた。

よくテレビで芸能人がインタビューを受ける感じになり、それが昼休みまでずっと続くことととなった。



「はい、これで終わりだよ」


いつものベンチに座りケータイを返す。


「ありがとう、良太くん沢山メールしていいかな?」


「いつでいいよ」


「なら僕も沢山メール送るね」


「あなたは送らないで、後あなたを昼食に誘った気がしないんだけど」


「周りにこんなに人がいるんだし今更僕くらい変わらないよ」


周りを見渡すとまじまじと覗いてくる人達は流石に少ないが、

チラチラと沢山の視線を感じる。

俺の左側には高神さん、右側には悟史君と正に両手に花なのだが、

そのまさかの真ん中に俺なのである。

何かの拍子にオセロみたいに僕も裏返って華のある人間になったりしないだろうか。



「そうゆう事ではないわ、このベンチからいなくなって欲しいのだけど」


「いやだよ、こんなに面白そうな状況なのに」


そしてさっきからこの調子である。

高神さんの強い拒絶を悟史君は笑いながら余裕で受け流すサイクルなのである。

俺もこれくらい出来たら彼女が居たのだろうか。


「良太くんは私と二人がいいよね」


「うーん、お弁当はみんなで食べたほうが美味しいんじゃないか?」


「その通り、みんなで食べた方が美味しいよ」


「あなたの意見は却下しますが、良太君がそう言うのであれば」


仕方なくといった感じでご飯を食べ続ける。


「良太くん、僕のお弁当のハンバーグ食べてみないかい?」


「いいの?」


「もちろん、僕のお家のハンバーグとてもおいしいんだ、はい」


そのまま箸を俺の口の前まで持ってくる。


「いやいやいや恥ずかしすぎるわ!いくら男同士と言えどこんなに人目のある所でとか無理無理!」


周りの腐っている層からはキャーと声援が飛んでくるが、それに答えられる男ではないのだ。経験値が違うともはや男まで無意識に攻略出来てしまう物なのだろうか。

いや、最早俺は男の娘ではないかと錯覚し始めた。


「そっか、残念だよ」


そう言ってお弁当の中にさっきのハンバーグを入れてくれた。


「ありがとう、流石に俺にはまだレベル高過ぎる」


「じゃあ私のエビフライも美味しいからあげるね」


高崎さんの豪華なお弁当箱からも料理が飛んで来た。

確か家に料理専門の人がいて、その人に作って貰ってるとか前に言ってたので結構

このエビフライは値段が張るのだろう。

申し訳なくて返そうかとも思ったが、彼女から貰った料理だけを返すのもおかしい。


「ありがとう、エビフライも大好きだ」


「そうなら良かったわ、これから毎日持ってくるね」


「それは流石に大丈夫だよ」


「食べたかったら遠慮しないで言ってね、食べたい物とかあったらそれでもいいからね」


「もしかして良太くんと琴音さんって付き合ってる?」


「っう、付き合ってないよ!?」


思わず弁当を吹き出しそうになる。


「でもなんか凄く琴音さんからのアプローチがすごいからもしかしてと思ってさ」


「何言ってるのよね、友達ならこんなの当たり前でしょ?」


「うーん、当たり前かなぁ」


比較的距離感の近い悟史ですら首を捻っている。


「当たり前よ、だからあなた何かには絶対こんな事しないわ」


「それは残念だ、じゃあ早く友達にならないとね」


「お断りよ」


やはりと言った感じで躊躇なく言い切る。


「でももう少し友達がいても楽しいんじゃない?」


このまま友達が俺だけとゆうのも良くない気がする。


「良太くんがそう言うんだったら・・・増やせるよう頑張ってみる」


「相変わらず僕の時との対応の差がひどいね」


ひどい扱いを受けたはずの悟史君は何故か楽しそうに笑っている。


校舎の時計が目に入り時間を確認するとそろそろよい時間のようだ。


「俺はそろそろ教室に戻るけど二人はどうする?」


「僕はもう少し残るよ、琴音さんも一緒に残らない?」


「お断りよ」


席を立とうとした琴音さんと僕の動作がその言葉にピクリと止まった。


「昨日みた番組の超能力特集の話をしたいだけだよ」


「あなた、知ってるの?」


「知ってる、でも安心してよ」

「これを使って何か脅そうって訳じゃない、少し提案をしたいだけだ」


少し考えると再びベンチに深く腰掛けた。


「いいわよ、ただし昼休みが終わるまでね」


「十分だよ」


この話の流れでは俺がいないほうが話やすそうだ。


「じゃあ先に行って待ってるよ」


後ろ髪を引かれる思いで歩き出した。


教室に入ると俺の机の上には仏壇や遺言書、そして遺産相続などのパンフレットと

机の周りにはにこやかな顔おした男連中が待ってくれていた。






















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