第18話 声かけた回数が友達よりも少ない件

高校生活が始まってから一月以上経ってもう6月。それまでに彼、良太と話した回数は片手で足りる程度。ほんとに私は何をしているのだろうか。友達より少なくないかしら?あれ?なんでだろ、涙が出てきた。


「おい!加藤さんが泣いてるぞ!誰だ泣かしたやつ!出てこいよ!俺がぶっ飛ばしてやる!」


私があんたをぶっ飛ばしてあげようかしら?

大げさにしないでほしいんだけど。私はあまり目立ちたくないし。ほんとに迷惑よ。


「はぁ」


朝からため息をついている。幸せがため息をつくと逃げるなんて言うけれど、私的にはその程度でなくなってしまうような幸せは幸せなんかじゃない。ただの紛い物だ。本当にほしいと願っても手に入らないものだってあるというのに。


私は恨めしそうに良太を見た。良太は筋肉くんとか言う人と眼鏡とか言う人としゃべっている。良太はこのクラス内でも結構、友達が多く、頼りになる人として存在している。それでも毎日、学校でつるんでいるのはこの二人だ。


「おっ、諏訪さん。おはよう」


「おはよう、大橋くん」


今、挨拶仕返したのが、ビッ······ではなく、諏訪明里とかいう女。でも、実際は多分、ビッ······おほん。


最近、何かと二人でいることが多いのよね。なんでもこの女が物語を書こうとしていて良太はそれの手伝いをしているらしいのだけれど、他の人に頼めないのかしら?良太が優しいことに甘えているのではないのかと私は睨んでいるのだけれど?


キーンコーンカーンコーン。


チャイムの音が鳴り、良太の周りにいた二人と女は席に戻っていく。良太はそれを見計らって私に声をかけてきた。


「加藤、大丈夫か?」


「え?」


「なんか、泣いたとか泣いてないとか騒がれていたから気になってさ········。幼なじみというのも何かの縁だし、なんか困ってることがあるなら相談乗るよ」


「そ、そう。············みられちゃったの······?ううっ、最悪」


「?どうかしたか?」


「なんでもないわ。それより早く前を向きなさい」


「お、おう」


やはり彼はすごい人だ。自分に対して冷たい、ひどい態度を取っているような人であってもちゃんとした対応や声掛けをすることができる。


それ以上に。


(良太に心配してもらえた·········♥)


そのことだけが私の脳内を埋め尽くしていた。

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