第二章

第17話 プロローグ的なものが章始めにはあり、だいたい今までの話とは雰囲気がガラリと変わることってよくあるよね?

彼はそこまですごい人ではなかった。


学校に誰よりも早く来て勉強をしているけれど、テストの結果は平均点以下。彼はその結果を見て、まだまだだと独り言を呟いていた。私なら諦めるところでも彼は諦めたりしない。『なんで諦めないの?』そう彼に聞きたい気持ちもあったけれど、彼の邪魔にだけはなりたくなくて、結局、聞けなかった。


彼は運動面すべてがクラスでビリだった。


周りからはそのことでからかわれていた。彼は苦笑いを浮かべながらも、誰にも見られないところでその結果を変えようと頑張っているの知っている。


私は彼が頑張っている姿をこれまで見てたから。


中学生になって彼は学年トップになった。私は自分のことのように喜んだことを今でも覚えている。彼はその後、部活を始めていた。彼は陸上部に入った。

彼はどんどん陸上での成績を伸ばして、長距離走では学校内で負けなしなくらいに速くなっていた。


彼はすごい人ではなかった、そう誰もが思っていた。だけど、彼は努力し続けて頂きに至った。


私はそんな彼の後ろ姿しか見れなかった。

私はそんなに努力をしていないし、まして彼の幼馴染みだと知られて周りからの彼の評価を下げたくなかったから。

彼はそんなことを気にしたりしないなんてことは知っているけれど、私には行動を起こせなかった。


高校生になった今でもそれは変わらない。私は雪女ゆきおんななんてあだ名をつけられてしまうような人間で、彼は周りから頼りにされる人物。私と彼との間には大きな差がある。埋まることのない差だ。

彼に追いつきたいと願っても努力し始めるのが遅かった。後ろ姿を見るのではなく、隣を歩ける人間になろうとすればよかった。


なにもかもが遅い。


でも。


でも、私は彼のを知っている。親から虐待を受けていたことを知っている。あのときは、私のお父さんの務める会社の社長が彼の父であったため、何もできなかったけど、今は違う。


もう決して、逃げたりしない。


●第ニ章開幕!

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