第16話 もしかしてキケンな話?
はっと気がついたらアタシの部屋のベッドでびっくりよ。
アタシってば、どうやら意識を失ったみたいね。
起き上がろうとしても身体が動かないからエルフの回復術を使ったけど、それでも身体が重いってどうなの?
と、とりあえず見られなかったわよね?
さんざん焦らされたあげく途中から激しくなったからワケがわからなくなっちゃって、巡回の人たちがいたかどうかもアヤフヤなんだけど。
いくら領主の息子でも、さすがに他人の前であんなことしないわよね?
ちゃんと後始末してくれたのかしら?
聖女服はキレイになってるし、息子だって浄化魔法を使えるんだし、きっと大丈夫よね。
ベッドに横になったままそんなことを考えていたら、ノックがして背筋が伸びたわ。
アタシの部屋をノックするなんて一人しかいない。
「疲れているところ悪いけど、ちょっといいかな?」
うかがっているようで断れない空気を
あわててベッドの上で身体を起こしたわ。
「ちょうど今、目覚めたところよ」
「良かった。あ、そのままでいいから。疲れただろう? 爆発的な聖女の力を感じたからね。愚息が無理言ったんじゃないかい?」
「え、えぇ。ちょっとヤリすぎちゃったかしら」
言葉通り過ぎて、他にどうも言えないわよね。
いわゆるマジックミラー的プレイに興奮しすぎて気絶したとか言えないわよねぇ。
心の中で半眼になっていると、
「あの子の気持ちは前々から聞いていたんだけど、私の決心がつかなくてね」
「……」
「でも、聖女としての意気込みがあそこまであるのなら、私も心を決めなくてはと思って、話に来たんだ」
「…………」
領主の奥さんはなんだか真剣な顔でうんうん頷いているんだけど。
ちょっと待って。
これってどういう状況なのよ?
このタイミングだから、ついにアタシたちの関係がバレて、「汚らわしい! 出て行け!」って
領主の息子はすでに母親にアタシとのことをカミングアウトしてたってことなの?
息子の絶倫プレイに対応できるなら、愛人枠として認めるってこと?
ううーん?
勝手な推測はキンモツよ。ウカツなことを口にしちゃダメ。
アタシは領主の奥さんの話をさえぎらないように相づちを打つだけにしたの。
「私自身、旦那様から秘密を打ち明けられた時は本当に驚いたものだった」
ふんふん。
ということは、領主様も絶倫だったってことかしら?
奥さんて背は高いけど細いから体力的に大変だったんじゃない?
「安全のためにも、なにも話さないままにしようかと思っていたけれども、ここまで関わってしまったのなら、知っていた方がいい」
ふんん?
それって絶倫が過ぎて命に関わるってこと?
どんだけスゴい領主様だったのよ?
まぁ確かに聖女の力がなかったら、アタシもちょっともたないかもとは思うけど。
「だから今晩、就寝前に愚息と一緒に私の部屋まで来て欲しい」
「わかったわ」
わかってると思うけどアタシ全然わかってないからね?
全然わかってないけど、ここは『イエスしかない』ってことはわかったからお返事しただけなんだからね。
アタシの答えは正解だったみたいで、領主の奥さんは満足そうに頷くと、部屋から去って行った。
「あ~~。もーなんなのよ~。キンチョウしたわぁ」
とりあえず「出て行け!」じゃなくて良かったわよぅ。
緊張の糸が切れて、ベッドにばふっと上半身を横たえる。
よくわからないけど、奥さんの真面目な様子からして、エッチな話じゃなさそうよねぇ。
あ、もしかしてアレなんじゃない?
おばぁちゃんが話してくれなかった、知っちゃったらヤバいアレよ!
領主様が殺されちゃったり、おばぁちゃんに毒がもられちゃったり、息子が殺されかけたりな、物騒そうなアレ!
でも、肝心のアレがなんだかさっぱりわからなくってアレコレ想像してみたんだけど、魔法で回復したとはいえ寝不足が続いていたのと、
オネェだって異世界したい! 高山小石 @takayama_koishi
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