第15話 さすがにそれはマズいでしょ
「ちょっ。アンタ、さすがに
「問題ない」
根拠のない『大丈夫』ほどアヤしいものはないのよ!
今は、アタシの方が農場のこと知ってるんですからね!
ここにはあと少ししたら巡回の人が来るんだってば!
「すぐ終わらせるから」
「それなら最初からヤラなければいいでしょっ。ガマンしなさいよっ」
「我慢できない」
「はぁあ? アンタ夜から今朝までヤッてたし、昼前にもヤッたじゃないの!」
「可愛い聖女を見たら何度でもヤリたくなる」
「じゃあ見ないでよっ」
「無理だ」
「ムリじゃない!」
言い合いをしている間に大きな果樹の下に追いつめられて、そのまま唇を重ねられたわ。
「んっ。んんー、んんんー」
両手をつかまれて、アタシの両足の間に足を差し込まれると、体格差でどうしても逃げられないのよね。
ダメよ。このまま気持ちよくなる前にどうにかして逃げないと……って、胸先つままないでよ!
だんだん頭が、気持ちイイことしたいってことだけでいっぱいになってきちゃうじゃない!
ここは外よ! 人がいる果樹園よ! 正気に戻ってアタシ!
「ん、はぁっ。んぅっ」
あぁもう!
なにかで埋めて欲しくて仕方なくなってきたじゃないの!
すっかり
「ここはいつでも正直だ」
大丈夫そうだとわかると、アタシが果樹に背を預けるカタチでそのまま両膝を持ち上げられて、半分宙に浮いた状態になった。
「あぁっ。コレ、ヤダぁ」
「イヤというわりには気持ちよさそうだ」
最初はゆるゆる様子を見るように揺すっていたのが、だんだん大きく大胆に動かされるようになった。気持ちがイイけど、果樹まで揺れているわよ。
え、人の気配?
誰かが近づいてくる気配に一気に冷静になる。
そうよ。ここは巡回の人の通り道だったわ。
こんなとこ見せられないっ。
あわてて領主の息子とアタシの二人にめくらましの魔法をかける。
「ねっ。人がっ来るっからっ揺すらっないっでっ」
息子はすぐに動きを止めたわ。
「アタシたちは見えなくしたけど、果樹が揺れたらこっちに来ちゃうかもしれないから、静かにしていましょう」
しらばくアタシの言葉通りにじっとしていたんだけど、抱えているのに疲れたのか、アタシをくりんとまわして、繋がったまま、アタシの両足を地面におろしたの。
えぇ? いっそ抜いてくれていいのよ?
それからすぐに巡回の係の人がやってきたわ。
巡回は農作物が盗まれていないか、植物に病気が出てないか見てまわる人たちで、二人一組で行動しているのよ。
二人は談笑しながら歩いてきて、なんでかアタシたちの目の前で立ち話を始めたの。
「異常ないな」
「あぁ。ここらへんも安定しているな」
「今回の聖女はすごいんだな」
「あの奥様とも仲良くやれていることにまず尊敬する」
「俺は見たことないけど、可愛いんだって?」
「あぁ。俺も遠目で見たことしかないが、かわいらしい聖女だった」
「幼いのか?」
「聞いた年齢は若様と同じくらいだったが、もっと幼く見える」
「へぇ」
「若様はその聖女とすぐ結婚されると思っていたんだがなぁ」
「仲良くないのか?」
「いや。悪くはないと思うんだが、一向に結婚されるご様子がないんだよ」
「なんでだろうな? まだ遊び足りないとか?」
「まさか。お前じゃあるまいし」
「もっといい聖女を探しているのか?」
「うーん。これだけの聖女であれだけ可愛かったら十分だろうに」
二人はあーだこーだ話し続けているけれど、答えはそのどれでもないわ。
領主の息子が聖女と結婚しないのは、アタシが聖女だけどオトコだからよ。
結婚しないんじゃなくて、できないの。
もう、どうでもいいから早く通り過ぎてくれないかしら。
アタシは半分祈りながらじっとしていただけなのに、なんでか息子の息子の体積が増したのよ。
(どうしたの?)
小声で聞くと、
(あいつらには見えないんだな?)
(見えないようにはしたけど、匂いや気配が大きくなりすぎたらバレるわよ)
(ふぅん)
なんだか不穏な気配がした後、ゆっくりと息子が動き出したのよ。
(は? え、ちょっと! ナニ考えてるのよ?)
(静かに。バレたくないんだろ?)
あたりまえじゃないの!
いくらなんでもこんな状態、誰にも見られたくないわよ!
なのに、なんで動くのよ!
数メートル先に人がいるのよ?
(や、いやぁ)
(見られてるみたいで恥ずかしい?)
当たり前でしょ?
話し声が聞こえているだけじゃなくて、こっちからは巡回係二人の表情までハッキリ見えているのよ?
もう声も出せなくて、黙って頷くと、
(大丈夫。静かにしてたら見つからないんだろ?)
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