第2話 ここは教会みたい

「まぁまぁ、なんて可愛らしい赤ちゃんかしら!」


「こんなに上等なおくるみに包まれているなんて。貴族の落とし種かもしれないわね」


「しぃっ。めったなことをお言いじゃないよ。ここに預けられるってことは、そういうことなんだから。みんな同じ神様の子どもだよ」


 次にアタシの目が覚めた時は、小さな部屋でベビーベッドに寝かされていた。

 まだ授乳やおむつが必要なので、日に何度もお世話される。

 アタシはどうやらカワイイらしい。嬉しそうにお世話してもらえるなんて、ありがたいわ。早く自立するから待っててねぇ。


 お世話してくれる女性たちの服装がシスターっぽいから、ここは教会なのかしら。

 でも、ただの教会じゃなくて、保育園や学校的な役割も兼ねているみたいね。

 アタシと同じように教会で暮らしている幼い子の他に、昼間は子どもが増えるのよ。


 その子たちが歌うお祈りが聞こえてくると、一緒に歌いたくなってつい声を出しちゃうんだけど、やっぱりまだ言葉にならなくて残念だわ。


「見て! この子、もうお祈りの効果がでているわよ!」


「すごいわね! 男の子なのが惜しいわ」


 そうなのよ。

 アタシったら、はやりのTS転生じゃなかったのよねぇ。

 今回もバッチリ馴染みの物がついててションボリしちゃったわ。


「女の子なら聖女妃候補になれたでしょうにね」


「すでにこれだけ効果を出せているのだから、候補どころか聖女妃になれたんじゃない? 本当に女の子ならねぇ」


 この異世界、聖女までいるの?

 さすがに男だと聖女にはなれないわよねぇ。


 それにしても、ここにいるのは、なんで女性ばっかりなのかしら。

 修道院なの?

 でも、一時預かりや、アタシみたいに保護された子どもで男性はいるのよね。すぐにどこかに行っちゃうけど。


 不思議に思って聞き耳立ててたら、だんだんわかってきたわよ。

 どうやら教会は聖女育成施設みたい。


 『聖女』って言ってるけど、アタシの感覚だと、白魔法使いなのよね。

 癒やしや回復はもちろん、育成促進などの効果をつけられる便利な魔法使い。


 あと、よくわかんないんだけど、座敷童ざしきわらしみたいな効果もあるみたいね。

 存在するだけで場を浄化したり、育成を助けたり。周囲の幸運値が上がるのかしら。

 エルフの知識にはなかったから、人間の国独自のことなんでしょうね。


 聖女に必要なのはたった2つだけ。

 お祈りの知識(呪文とか祝詞のりとみたいなものよ)と純潔。


 どうしてだかアタシがお祈りしても効果が出たから、アタシも聖女教育を受けられることになったの。


 受けるからには聖女候補と同じ格好をしなさいだって。

 もちろん喜んで着たわよ。

 聖女候補の制服って可愛かったから、ずっと着たかったのよねぇ。


 憧れの制服を着て、みんなと歌う生活はとっても楽しい。

 もうお世話される側じゃなくて、お世話する側になったのよ。

 小さい子は見ているだけで笑顔になっちゃうわ。


 今日は、嵐で荒れた農場の復興に大人達がかかりきりになるから、農場の子ども達が教会に泊まりに来たの。

 大丈夫。お泊まりのお客様のお世話もちゃんとできるわ。

 お部屋の説明をして、必要な物を配って。

 小さい子が泣いていたらなぐさめて。


 農場の子どもだから男の子もいる。

 久しぶりに男の子を見たわね、と思っていたら、いきなり手を握られたのよ。


「好きだ!」


「えぇ?」

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