【Roster No.9@ウランバナ島南東部】

「姉御!」

「どうした」

「車が走ってます!」

「別に珍しくもな……いや、いいなあ」


 いいなあ、あれ。

 あたいも車に乗っちゃるか。


「いきますか姉御」


 かつてはハマでぶいぶい言わせたもんよ。

 血が騒ぐってやつさ。

 モノホンのドラテクを見せたる。


「あんたたちも乗るかい? 乗るよな?」


 おあつらえ向きにピックアップトラックが停まっていた。


「押忍! 地獄の果てまでついていくッス!」

「姉御と一緒なら!」


 よしきた。

 ピックアップトラックの運転席にあたいが乗り込んで、あたいの隣に一番弟子のザクロが座る。

 あとの二人は座る席がないからってんで、荷台に乗り込んだ。


 わりぃな二人乗りで。


「振り落とされんなよー!」


 あたいが呼びかけると「大丈夫ッス!」「移動式砲台ぐらいに思ってください!」と心強い返事がかえってきた。

 ザクロもシートベルトを締めて「バッチグー」とウインクしてくる。


「いくぜーい!」


 エンジンをふかして、アクセル全開、草原を動物みたいに駆けずり回っている自動車に突っ込んでいく。

 振り落とされんなって言ったし、しっかり掴まっとけよ。


「あたいから逃げられると思うなよ!」


 こちらに気付いたらしいちっこい軽自動車の運転手が、慌てて距離を取ろうとする。

 あっちも4人乗ってるんだろうな?

 その4人を殺せば、あたいたちの勝利が近付くってもんよ。


「行け行けー!」


 助手席のザクロがあたいを鼓舞する。

 あっちもあっちで必死にアクセルを踏み込んでるんだろうけどよ。

 初心者マークつけといたほうがいいんじゃあないの?


 あたいを相手にカーチェイスで勝とうなんざ、百年早いよ。

 ぷっぷー、とクラクションを鳴らせばビビってハンドルを切ったらしく、街路樹に激突した。


「はっはっは!」

「ざまーねーなー!」


 バックミラーで様子を見れば、座席から車外に人が這い出ていく。


『姉御ぉ』

「あんたたち、やっちまえよ」

『押忍!』


 走っている車から敵を撃つのは難しいだろうから、あたいはピックアップトラックを停めてやる。

 これで狙いやすくなったよな。


 あたいも家の中で見つけたG36Cを構え、運転席の扉を開けて撃つ。


「うぉらっ!」

「ファイヤー!」


 助手席のザクロもM4カービンで支援する。

 トラックで追い回された挙句、銃弾を撃ち込まれて、ターゲットにしていた車が炎上した。


「はーっはっはっはっは!」

『はははははは!』

「ははは、はぁっ!?」

『ヒェッ!』


 敵は燃え上がる車を盾にして撃ち返してきやがる。

 ふざけてんなあおい。


 フロントガラスが被弾してクモの巣みてえになっちまった。

 もう一発喰らったら割れちまうよ。


「姉御」

「こうなりゃ、あれだな」

「ウィッス」

「あれするぞ! あれするから車に掴まれ!」

『ほいさっさ!』

『押忍!』


 やられたらやり返してやる。

 そりゃそうだ。

 こんだけ撃たれといて撃たれっぱなしは信条に反する。


 あたいはピックアップトラックを発進させ、敵との距離を詰めた。

 敵の4人組は近づいてくるピックアップトラックを見て何を思ったか、背中を向けて走って逃げ出そうとする。


「待てやゴルァ!」

「ストップ、ストーップ!」


 止まれと言われて止まるようなら初めっから逃げやしない。

 無駄に足掻いてみせても結局死ぬのが遅くなるだけだってのによ。


 一番とろいやつには体当たりをぶちかます。

 あっけなくぶっ飛ばされる敵。


『へいへい相手のピッチャー弱ってるぅ!』

『介錯しもす!』


 荷台から敵を撃ち殺していく可愛い弟子たち。

 まーあ、前が見づらくなっちまったからこのピックアップトラックは乗り捨てるよ。



【生存 70(+1)】【チーム 23】

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