第41話 変身! 意外な助っ人!? 総力戦開始!

「……フフン。東京のクルムがやられたか」

「ヤツはクルムの中でも最強……」

「所詮はクルムの面汚……え?」


 北海道から。

 長野。

 兵庫。

 高知。

 鳥取。

 そして沖縄。


 6人のクルムが、同時に口を開く。


「……まあこの場合、『強さ弱さ』は余り関係ない。ザイシャスとグリフトを逃がす時間稼ぎさえできれば良かっただけさ」

「……その為に、『自分』ひとり見殺しかよ……」


 どこかのクルムの背後に。グリフトが居た。


「おかしくねえか? 俺が言うのもなんだが、俺達は所詮、使い捨ての駒だろ」

「フフン。違うさ。僕はナギ姫とは違う。……ふたりを救う為なら僕のひとりやふたり、支払おう」

「だから、なんでだよ。いや俺としちゃ嬉しいがよ。別にエナリアより強い訳じゃねえし、エナジー食うだけだろ」

「分かってないねえ。よく聞きなよ。ザイシャスも」

「?」


 6人のクルムは、全く同時に。同じ言葉を発する。モニターに映る全員が同期している。


「僕は人間でも怪人でも無い。『僕』という種族を、生物の本能に則って、僕から繁栄させたいのさ。土地は、人間から奪う。だけど僕ひとりじゃ、増えられないじゃないか。ナギ姫を見限って、僕に命を預けてくれた君達は、僕にとって『一番大事な人』って訳だ」

「!」

「!」


 目を輝かせて。クルム達がそう言った。


「…………まじかよ」


 グリフトは呆気に取られた。











「! 『エナジーレーダー』反応あり! 複数です! 司令!」


 壁の中央に巨大モニター。その周りにもいくつもモニターが掛けられた、大広間。

 隊員の女性が回る椅子を使って振り返った。


「誰が司令だ。……場所と数は?」


 部屋の中心に、三木が居た。


「全部で……6ヶ所です! 北から札幌、長野、神戸、高知、鳥取、沖縄! これは――」

「ああ」


 地球上に存在しない『エナジー』。それの反応を感知し、モニター上の地図に映し出す『レーダー』を、この短期間で完成させていた。ナギの協力があったからだ。


「――司令の予想通りですね」

「ああそうだ。ジャストぴったり。……『各員』配置に着いたか?」











「フフン。今までは、本国からのエナジー供給が無いと活動できなかった。だから東京から出られなかったけど。今は、エナジークリスタルのブレスレットが『ふたつ』ある。変身ヒロインの『お約束』を破るよ。……同時多発的に、怪人を出現させる!」


 6人のクルムが。

 ふたつのブレスレットを掲げた。


「さあ始めよう。この国を、乗っ取るぞ」

「待て」

「ん」


 長野県、某市にて。地面から湧き上がるように怪人達を出現させたクルムと、隣にグリフト。


 ふたりの前に、3人。現れた。


「は……? なんでここに……」


 クルムが、口をぽかんと開けた。


「……俺は正直、三木をまだまだ甘く見てたんだろうな。……ウチに必要不可欠の天才だ」

「そうですね。全てが終わった後、ウインディアに連れて帰りたいくらいです」

「よく分からないけど、敵の位置が分かるのは便利ね」


 空石。エナジー武器のアーチェリーを構えて。

 ララディ。エナジーアニマルの姿で浮いている。

 リッサ。エナジーブレードを持って。


「…………!! 下がってろクルム!」

「ちっ。……レーダーを作ったのか。この短期間に。いや……そもそも開発していたのか? ナギ姫の入れ知恵で完成させたか」


 グリフトが前へ出て。クルムの周囲を無数の怪人達が囲む。


「……妙な組み合わせだね。空石八朔と、リースス・レーニス。……『3人目』」


 背後から、クルムが空石達を睨んだ。


「うるさいわね。不本意だけど、『私が一番弱い』のよ。あと、ソライシにはララの護衛も任せてるわ」

「へぇ……? けど、空石八朔が意外と戦えた所で、戦力はもっと分散させた方が良かったんじゃないのかい? 今回の襲撃は6ヶ所同時だよ?」

「問題ない。他はここより安心だ」

「?」











 北海道、札幌市内にて。


「…………僕の予想通り。君は完全に、エナリアに付いたね。4人目って訳か」

「知らぬ。貴様との問答はもはや無用である。まやかしの怪物め」


 再び。クルムと相対するは、ナギ・テンペスター。


「民の避難は完了しているらしいぞ。シムラクルム」

「……良いよもう。君等を殺せば後はどうとでもなる」


 クルムも、ミラージュへと変身した。


「リベンジだ。この前の僕とは違うぞ」

「御託は良い」











 そして、神戸。


「いや、神戸ちゃうねん。すまんけど、ここ西宮や。三木さん。甲子園ある所や」


 ――否。西宮市内にて。


「…………今、連絡があった。どうやら同時多発怪人襲撃は読まれていたらしいな」


 ザイシャスが、怪人達を従えていた。


「……あんたか。ちょうどえ。アタシの家焼きよったんあんたやんな。それにアタシのブレスレットパクりおって。綾水もさろて…………『晴らす』で。今から。ようやく捕まえた訳や」


 ゆらり。

 咲枝が、ネックレスに触れた。


「……だが。これで守れるのは3ヶ所だろう? あと3ヶ所、どうするつもりだ?」

「…………アホ」











 高知県、市街地。


「所詮、エナリア陣営は人手不足さ。ここまではカバーできなかったろ。じゃあ始め――」

「なるほどぉ。北海道は三木さんの故郷で。長野は空石さん。神戸は……いやいや、西宮は春風さん。沖縄が捕まってる北城治さんの故郷。で、四国は……偶然? 私の主人の勤め先、だったんですねぇ」

「は?」


 そこには。

 クルムの目の前には。


 30代半ば程度の、女性が立っていた。


「うーん。20年振りかぁ……。うまくできるかな。ウインディア・レボリューション!」

「!」


 ウェーブロングの女性。気品の漂う彼女が取り出したのは、藍色のブレスレット。

 そのまま、光に包まれる。


「流麗なる汐風、エナジーマリン。です」


 そして。現在の彼女の体型に合わせた、衣裳に。変身していた。


「な…………!?」











「鳥取砂丘。ちょっと遅めの夏休み家族旅行だけど。タイミングばっちしだったねー。ケンタ、ちょい待ってな。母ちゃんが怪人、ボッコボコにしてくっから。――ウインディア・レボリューション」


 サングラスを掛けた、癖毛が特徴的な金髪の、女性が。黄色のブレスレットを。


「ふぅ。いやぁ、懐かしいね。えーと。揚々たる旋風、エナジーフラワー!」

「…………これは……っ」

「かあちゃんカッケ――!!」











 沖縄、那覇市。


「あっはっはー。イイねー沖縄。まだまだアツイじゃん。よーし。頼むよ、エナジー! ウインディア・レボリューション!」

「!」


 純白のブレスレットを持つ、ショートボブの女性が。元気よく飛んだ。


「こんなこと……!」

「あはは! まだまだイケるじゃんあたし! 遥かなる爆風! エナジースカイちゃんだよ!!」


 『3人』。3ヶ所で。『エナリアに変身した』。


「2代目エナリア、だと!?」


 クルムは驚愕し、叫んだ。











「……ふん。こちらも、あれから色々とパワーアップしている。それに俺にも、戦う理由ができた」

「……あぁ?」

「『俺の女』の為に。負ける訳にはいかない」


 ザイシャスは、理解したのだ。あのクルムの話で。

 これまでクルムが、彼らに対してアピールをしていたこと。『ロリコン』を勧めていたこと。

 その理由を。


「………………」


 だが。


「何を訳のわからんことをぶちぶちと。うっさいわ。はよ綾水の場所吐けやハゲ」

「なっ」

「アトモスフィア・レボリューション」


 ドカン。

 暴風が咲枝を包む。分厚い雲が、太陽を隠す。服が弾け飛ぶ咲枝を中心に渦を巻いて。近くに居た怪人は巻き込まれ、切り刻まれて絶命していく。

 渦の一部は形を成して。全裸になった咲枝の衣裳として装着される。


「……ぐっ! ストームフォーム……。出力上がってないか……!?」

「ぐっちゃぐちゃにしてタコ焼きの具にしたるわボケェ。ソースか醤油かマヨネーズか、好きなん選べェ」


 今日まで溜めた怒りが。

 正に『エナジー』となって。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

次回予告!


〈咲枝〉:取り敢えず、あれやな。初めまして。先輩方?


〈かける〉:はーい! 2代目エナリア、エナジースカイちゃんでーす!


〈りく〉:もうそろアラフォーだよあたしら。いつまでそんなノリなんだよかける。


〈かける〉:えー。心はいつまでも乙女だもん!


〈なみ〉:34にもなってそんなだから、彼氏もできないんですよかけるちゃん。


〈かける〉:ねっ、年齢は言わないで……!


〈りく〉:自覚あるんかーい。


〈みんな〉:次回!

『美少女エナジー戦士エナリア!』

第42話『変身! 激闘! 幹部ザイシャスとの決着!』


〈咲枝〉:……キャラ濃いわぁ。この人ら。アタシが会話に入られへんとは。


〈ポポディ〉:おいらサキエとアヤミで良かったディ。当時の使者は大変そうディね……。

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