第12話 変身! エナリアふたり、裸の付き合い!

「げひひひっ! くそっ! 離せ!」

「無理無理。やめとき。柔道の『抑え込み』はな、完全に極まったら『もう無理』やねん」

「ぎひっ! 何故だ! パワーで負ける筈がないぃ!」

「パワーとか関係ないねん。不思議やろ? 柔道部の顧問の先生センセにでも訊いてみ」


 バタバタともがく怪人だったが、やがて抵抗はしなくなった。諦めたのだ。どうやっても脱出できない。


「……三木様達に連絡しましたわ。咲枝さん」

「綾水。ナイスショットやったで」


 そこへジャージ姿の綾水がやってくる。顔はまだ赤い。


「ほんと、『全裸これ』さえ無ければと思いますわ」

「アタシもや。ウインディアのお偉いさんって絶対変態やんな」

「失礼ディ! この仕様は仕方の無いことなんディ!」

「……いやらしい」

「おいらをそんな目で見るなディ!?」


 やがて、三木達が現場へやってくる。咲枝は怪人がこれ以上暴れないようにエナジードレインを少しして放した。怪人は大人しく捕まり、警察署へと連行されていった。


「『エナジー武器』の銃が効かない怪人か。このレベルがそうそう出てこないことを祈るしかないな」

「アタシも戦い方考えんとなあ」


 咲枝も顎に手をやって考える。先ほど、あの怪人に言われたことを。


「(エナジーの使い方か。確かに知らん。誰にも教わってへんし、ここまで適当やったもんなあ)」











「ガガスがエナリアにやられたか」

「……はい。ザイシャス様」

「やはりエナジーの足りない雑魚は頭も愚かだな。いくらパワーで上回ろうと『数の優位』の前では無意味だというのに。戦争は子供の喧嘩の延長線上ではない」

「……もう随分兵隊も使ってしまいました。どうなさいますか」

「なに、ブレスレットさえ手に入れれば奴らの溜め込んでいた莫大なエナジーが手に入る。兵の補充などいくらでもできる」

「では次の作戦は」

「エナリア一点狙いだな。残りの兵も全て使ってしまおう。私も出る。準備を」

「はっ」











「結局、あのデブは幹部やないねんな」

「ああ。そう供述してるらしい。詳しい話は三木が尋問している」

「尋問か。怪人に法的な権利無いもんなあ」

「まあな。あまり大きな声で言うなよ」

「どんなことをしているのでしょう」

「アカンアカン。アタシらみたいな女は見たらアカン世界や」

「サキエは全然余裕で尋問しそうディ」

「照れるやんか」

「褒めてないディ」


 3人とポポディは本部(綾水の屋敷)に戻ってきた。特に綾水が、疲労している様子だったからだ。


凄くごっさ疲れたな。寝技は掛けてる方もしんどいわ」

「かっこよかったですわ。咲枝さん」

「綾水も凄かったやん。初戦の初武器で全弾命中は才能の塊やな」

「照れますわ。もっと練習をしないと。この敷地内にも、射撃場を作るよう、じぃに言っておきますわね」

「じぃとかるんや」


 綾水はピンクの装飾がされたエアガンを手に持って弄っている。


「君達はもう休め。俺も帰宅する。通常の怪人は隊員に任せれば良いんだ。幹部クラスが現れるまで、待機だな」

「ほいほーい。空石さんもお疲れさん」

「………………」

「?」


 屋敷まで一緒に来た空石は、ぴたりと止まって彼女らふたりをじっと見た。


「……どないしはったん?」

「…………あ。いや。なんでもない」

「なんや、アタシの裸でも思い出したんか?」

「そっ! そんな訳無いだろう! 帰るぞ! また連絡する!」


 にやついた咲枝の台詞で真っ赤になった空石は、すぐに踵を返して屋敷を去って行ってしまった。


「もう、殿方をからかってはいけませんわよ、咲枝さん」

「……うん。いや、まさかあの人、童貞ちゃうよな……」

「! ふっ! そんな言葉、不潔ですわっ」

「綾水も処女かいな。まあ変な男に引っ掛かってへんだけマシやな」

「ふっ! 不潔ですわっ」

「ポポは?」

「? おいら故郷に恋人は居るディ」

「生意気に」

「別に生意気でもなんでもないディ! おいら向こうではモテるんディよ? ハードボイルディなんディから!」

「そっか。良かったやん」

「信じてないディ!?」


 借りていたアパートが幹部によって燃やされたため、咲枝は今この屋敷に住んでいる。綾水の家ではなく、同じ敷地内の別の建物だ。咲枝と綾水、空石、それに100人の隊員は自由に出入りできるようになっている。


「風呂入ろかな」

「では、わたくしもご一緒しますわ」

「風呂デカイってえよなあ」

「じゃおいら先にエゴサして寝とくディ」

「クソリプ相手したらアカンでポポ」


 こちらも屋敷と言って差し支えない大きさだ。洋風の外観と内装をしている。さらに北城治家の元々の使用人達が管理してくれているのだ。風呂に入りたいと思えばいつでも沸いている。銭湯のように広い浴室が。


「はぁーっ。温泉ちゃうけど生き返るわぁ~」

「喜んでいただけているようで何よりですわ」


 身体を洗い終えて、湯船に浸かる。この時間はまだ隊員達も仕事中で、貸し切りである。手を組んだ両腕を挙げてリラックスする咲枝の隣に、綾水も入ってきた。


「アタシ、温泉巡り趣味やねん。地元が有馬の近くでなあ」

「まあ、では兵庫県のご出身ですわね。良いですわねえ」

「小学生の時から町の銭湯巡ってたからなあ。お陰で肌年齢だけは自信あるねん」

「中々渋い子供時代ですわね。確かに、とっても綺麗なお肌」

「いやいや、綾水かてそうやんか。もっちもちやんけ」

「きゃっ。くすぐったいですわ」

「おまけにそのチチ! 綺麗~にお椀型しよって。ちょっと揉ませえ」

「きゃははっ。やめっ。くすぐっ。あははっ」

「なんでこないスタイルえねん。なあ綾水ちゃんやぁ」

「あははっ。しっ。知りませんわよっ」

「身体中ぷにぷにで柔らこうて本当ほんま。いくら19や言うてもなあ」


 ばしゃばしゃと戯れ始めるふたり。


「さ、咲枝さんだってお胸は大きいじゃないですの。わたくしより」

「アタシはデカイだけやねん。いつ垂れ始めるかビクビクしとるわ。もう23やで」

「スポーツもなさっていて、健康的ではありませんの。運動神経は羨ましいですわよ」

「うーん……ちょっと不便やで巨乳は。アタシ柔道やっとった中学時代はめっちゃ貧乳やってん。周りより成長遅ぉて、背も低かってん」

「そうなんですの? 意外ですわね。咲枝さん、165くらいはありますわよね」

「今年の会社の身体測定やと163や。高校で伸びてん」

「高校でも何かスポーツを?」

「いや。部活はせんかった。ランニングとストレッチは中学からの習慣やから就職するまでやっとったけどな。大学やとサークルで野球やらサッカーやらやっとったわ」

「凄いですわ。アスリートさん。良い青春ですわね。……やはり、阪神タイガースファンなんですの?」

「アタシは別に。オトンはヤバいけどなあ。むしろ家でオトンがうるさすぎて阪神嫌いまであるわ」

「な、なるほど……」

「綾水かて、今学生やんか。なんかしてへんの? ていうかエナリアやっとって授業大丈夫なん?」

「夏休みのタイミングでエナリアのお話をお受けしたので、問題ありませんわ。三木様の勧めで、学長先生にも事情を話しています。本当なら辞めた方が良いのですけど、お父さまの手前、卒業だけはしておきたいのですわ」

「はぁ~。なんや立派やなあ。まあ最終学歴『総応女子大学ソウジョ』ってカッコエエもんなあ」

「世界を救った後、わたくし達はエナリアを辞めて無職になるのですから」

本当ほんまやん。アタシやばっ。会社辞めてもうたやん」

「……わたくしも、進路は決めておりませんわ」

「綾水は働かんでもえんちゃうの」

「そういう訳にもいきませんわよ。咲枝さんを見ていると、自立したいと考えるようになりましたわ」

「しんどいだけやで」

「でも格好良いですわ」

「もっと褒めて」

「ふふ。……もう上がりますわよ。お食事にしましょう」


 ざぱりと、綾水が立ち上がった。それを見て、咲枝は。


「えっ」


 ちょうど、目線が。


「……綾水、それ天然なん?」

「きゃっ。恥ずかしいですわ。……そ、そうですわ。悩んでいるんですのよ。…………は、生えて来ないの」


 綾水はバシャバシャと音を立てて湯船から出て、そそくさと恥ずかしそうに浴室から出ていった。


「……19でつるつるて。あの子天然記念物ちゃうか本当ほんま


 驚いた咲枝も遅れて、湯船から上がった。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

次回予告!


〈咲枝〉:良くよう考えたらこのコーナー、まともに次回予告してへんのちゃうか……?


〈綾水〉:まあ、そうですわね。適当に喋っているだけですわ。


〈咲枝〉:別にえか。そもそものノリが適当な作風やしな。


〈ふたり〉:次回!

『美少女エナジー戦士エナリア!』

第13話『変身! 幹部ザイシャスの卑劣な罠!』


〈咲枝〉:サブタイ言うだけでも充分やんな。あと幹部はシバく。


〈綾水〉:ネタバレは子供向け作品ではよくありますけれどねえ。

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