第9話 変身! 幹部との戦い!
「『エナリア』とは、『エナジーウォーリア』の略。ウインディアの伝説の戦士なんディ」
「それは何故、人間が着る形の戦闘服なんだ? 君達『エナジーアニマル』は戦わないのか」
幹部であろう怪人を逃がしてしまった。さらなる被害が予想されるが、現状では都内の警備を増やす以上の対策はできない。できるだけ早く、現場へ急行することしかできない。
「戦えないディ。おいら達『エナジーアニマル』は、怪人と接触すると身体のエナジーが上手く働かなくなって機能不全でやがて死ぬディ」
「
「……だから、情けない話だけど、人間に助けて貰うしかないんディ。ずっと昔から、そうしてきたんディ」
「……その歴代の『エナリア』達は、皆女性だったのか?」
だが。幹部が現れた日からぴたりと、怪人の出現報告は無くなった。警戒は続けなければならないが、今までほぼ毎日出現していたのが、今日でもう3日現れていない。
「そうディ。記録によると、10~15歳程度の女の子だそうディ」
「……最悪だな」
「へ? どういうことディ」
「…………まあ、『ニチアサ』を知っとるアタシからすればそれが普通て感じることもできるけどやな。常識的に考えるとおかしいよなあ。ウインディアは自国で抵抗できへんからって、他国の他種族の未成年女児に国防させてるってことやもんなあ。しかも給料も無いやろ? 歴代の親御さんは
「……その辺の、人間の難しい話は詳しくないディ。でも確かに、子供に戦わせるのは良くないとは思ってたディ。だから、サキエと出会って嬉しかったんディ」
以前三木が言ったように、もっとこの事態のキーワードについて知らなければならない。敵が攻めてこない間、こちらも備えをしなければならないのだ。
「そもそも歴代はなんで子供で、しかも女の子やったんや」
「『エナジー』に適合する可能性が高いのが、人間の幼体、さらに雌という事実しか分からないディ」
「……なんか『ご都合』な気するなあ。それ、アタシは歳食うごとにエナジー減って行くんか?」
「年齢と比例した衰退はあるけど、ある日突然適合しなくなるなんてことは無いディ。サキエは現役である限りは『エナリア』ディ」
「ふむ。ウインディアが人間を頼らなければならない事情は分かった。それに、怪人は地球を支配しようとしているんだ。我々人間にとっても無視できない。この責任をウインディアに押し付けるのは酷だろう」
「まあアタシは
ポポディの言葉は咲枝を通して空石に伝えられている。もう同時通訳も慣れたものだ。
因みに、彼らの暮らす日本では、成人年齢は20歳である。
「わたくしも勿論、戦わせていただきますわ」
「ご両親反対せんか?」
「…………それは……」
綾水は言葉を詰まらせた。これはアルバイトではない。危険な仕事――どころではない。『戦闘員』などという職業は日本に存在しない。
「今のところ、『エナジー適合者』はわたくしと咲枝さんだけなのですわよね」
「そうディ。ずっと動画で探しているけど、アヤミ以降反応は無いディ」
「……幹部は、相当お強いのですわよね」
「そうディ。直接戦ってはいないけど、この前のあの、消えるときの光を見たディ? サキエの変身時より強い光だったディ。それだけの『エナジー』を持ってるってことディ」
「アタシより強いんか?」
「間違いなく、今のままだとひとりでは勝てないディ」
「なら、わたくしがここで辞退すれば結局咲枝さんは負け、退いては世界が支配されてしまうということですわ」
「……可能性は高いディ。おいらは、サキエとアヤミで力を合わせるのが一番だと思ってるディ」
「それを、綾水の親御さんが許すかやな。黙っとくんはアカンやろ? 空石さん」
「勿論だ。もし大怪我をしたらどうするんだ。その可能性があると、事前に了承を得なければな。本当なら春風のご家族にもそうしたいが」
「アタシはもう自分で生きていける大人やからええねん。世界救った時に実家帰れば」
「…………情けない話ですが、わたくしの両親はわたくしを『箱入り娘』にしていますわ。きっと、許さないでしょう」
「まあ、沖縄から家族ごと引っ越すくらいやもんなあ」
「北城治さん、無理はしなくて良い。そもそも俺は春風が戦うことにも賛成してないからな。三木が、怪人の肉体にも効果的な武器を開発している途中だ」
「あ、そうなんや」
「…………」
非現実的な状況であるが。現実的に問題を処理していかなければならない。アニメのように、細かくややこしい部分を飛ばせる訳ではない。普通に考えて、未成年の女の子が命懸けの戦いをするなど、誰がどう見ても許せる訳は無い。なんらかの特殊な事情があるにせよ。咲枝はともかく、綾水は19歳なのだ。大学生で、学費も親が払っている。就労経験も無い。現代社会でひとりで生きていく能力が、彼女には無い。だから、こういった重要な決定には保護者の許可や同意が必要なのだ。なにせ世界の命運が懸かっている。『大人には秘密』では決して済ましていけない事態だ。
何度も言うが、作中ではまだ日本国の成人年齢は20歳のままである。
♡
「おい春風。お前独り暮らしだったよな」
「三木さん?」
そこへ、三木が部屋に入ってきた。少し慌てている様子だった。
「テレビ付けろ」
「?」
言われるまま、空石がリモコンを取った。
『本日未明、東京都○○区のアパートにて原因不明の出火があり、近隣住民が通報したことが分かりました』
それはニュースだった。ヘリコプターから撮影した市街地。中心に火災現場のアパート。
「……は? ちょお待てや」
「お前のアパートじゃないのか、あれ」
「はぁ!?」
見覚えのある道と建物。
咲枝の住むアパートから、煙が出ている光景だった。
『幸い、火はすぐに消し止められ、怪我人も居ない模様です』
「いや待てや! なんやのそれ!?」
咲枝はすぐさま、部屋を出ようとして。
「待て」
「!?」
空石がその腕を掴んだ。
「ちょ、離してえや空石さん! ウチが! アタシの家がっ!」
「待て。待ってくれ春風。よく見てくれ」
「!?」
言われて、テレビ画面を注視する。空石はいち早く気付いた。ポポディの、次に。
「……煙から、『エナジー』の光が見えるディ。きっと、あの幹部がやったんディ」
「はぁ!?」
「だから待て春風! 君が『狙われている』んだ! 住所を特定された! 君は今、ここを出るべきではない!」
「…………!!」
どん、と。正面から押し倒された気分になった。咲枝はぺたりと、入口前で座り込んでしまった。
「……『怪人は人間並の知能を持つ』。訂正が必要だ。『怪人は人間と同じ知能がある』。現代は情報に溢れている。一度見て、名前も知った人間を特定するのは簡単だ。君は特に、SNSで話題の人物なんだから」
「……家て。そんなん反則やんか……」
スマホや財布など貴重品は常に携帯している為、失った物は家具や家電を除けば服くらいではあるが。
「相手は腐っても、悪の『組織』だってことだな。空石。どうする? 今日はお前が春風をお持ち帰りするか?」
「馬鹿言え。しばらくはここに寝泊まりするしかないだろ」
「いいえ。ここが狙われるだけですわ」
「!」
項垂れた咲枝。慌てるポポディ。今後を話し合う空石と三木。
そこへ、綾水が割って入った。
「北城治さん?」
「咲枝さん。ポポさん。ひとまずはわたくしの屋敷に。必要なものは『色々』揃っていますわ」
「えっ」
「それに、警備は万全。情報も漏れません。……対策を練りましょう」
胸に手を当てて、決意の表情。今日の、咲枝の戦いを間近で見て。彼女の心に火が点いたのだ。
「…………許さん」
「咲枝さん?」
同時に。というより、当然に。咲枝は勢いよく立ち上がった。足を踏み締め、拳を握り。
「絶っっ対に許さんぞクソ怪人ハゲコラァぁぁあ!!」
声の限り叫んだ。
♡
日本の警察組織は、思っているより柔軟で融通が利く。空石がリーダーを務める『怪人対策本部』には、空石と咲枝の他に、街中を巡回し怪人発生を報せる私服警官が100人居る。その組織を丸ごと、『警察』から切り離すことになった。政府からの命令である。総理大臣直轄となり、よりスピーディに、あらゆる規則に囚われず問題を解決する為に。
「もう決めましたわ。お父さまが反対しようと、わたくしは咲枝さんと一緒に戦うと」
「綾水……」
「これから報告と、説得を。さらにお屋敷の一部を、仮の『対策本部』として使用する許可を得に。……空石さん、細かいご説明を頼みますわよ」
「……良いだろう。普通の警察業務に支障の出ない安全な基地は欲しい。北城治さんが戦わなくても、場所だけ借りられれば」
「わたくしも戦いますわよ!」
「
今から基地を建てている暇は無い。3人とポポディは、覆面パトカーに乗って綾水の屋敷へと向かった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回予告!
〈咲枝〉:
〈空石〉:落ち着け。まずは管理会社か、分かるなら家主に連絡だ。まあ、もう伝わってるとは思うがな。今回の場合は賃借人……春風に責任は無い。隣や上下の部屋の損害賠償は取り敢えずしなくて良い筈だ。
〈咲枝〉:そうなん?
〈空石〉:大体の場合、『当事者の責めに帰すことのできない事由によって契約の目的物が滅失した』場合は、賃貸借契約は終了すると思うが……。契約書も燃えてしまったんだな。まあ控えは仲介業者が保管しているだろうが。
〈咲枝〉:ああ……専門用語で
〈ふたり〉:次回!
『美少女エナジー戦士エナリア!』
第10話『変身! 対組織戦!』
〈咲枝〉:仲介して
〈空石〉:良いから出なさい。
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