第23話 鍬の出来栄え

慧仁親王 京都大原 1522年


 一通り田んぼの整地の工程を説明していると、


「殿下!猪を捕まえて来ました!」

「おお〜、お腹空いてたところだ。雅綱、降ろして、降ろして!」


 興味深く覗き込む。


「おお、美味そうだな、薪を持って来い!石を焼いて焼き肉だぜ。塩と味噌持って来い!まな板と包丁持って来い!」


 そのまま見てもエグいだけで、別に美味しそうな訳じゃない、ノリだノリ。


「直ぐに解体して来ます」


 血抜き等は終わってる様だ。解体してる横で、1人の女衆に声をかける。


「お願いなんだけど、柔らかい部分を貰って来て」


 貰って来た肉をミンチにして塩を振ってよく揉んで、それを塊にして貰った。だって、まだ歯は6本なんだもん。ハンバーグ風の方が食べやすいだろう。


「さあ、皆の者、焼くぞお!」

「お〜!」


 肉を焼く匂いに誘われたのか、村人がどんどん集まって来る。ん?


「作兵衛、あの子供達は?」

「京を焼け出されて、逃げついた者たちです」

「うぬ」


 雅綱に合図を送ると頷いて、


「お〜い、お前達もこっち来て食え!おとうやおかあが居るなら連れて来い!」


 俺の声じゃ届かないのだ。何かいっぱい集まって来た。握り飯を作って持ってくる者や、香の物を持って来る者もいる。あ、酒を持って来てるよ!いつの間にか大宴会だ。

 ワイワイガヤガヤ、楽しい、楽しい。


「作兵衛、今年は俺が居る。神様の知恵を伝えるから、沢山食べ物を作って、収穫が終わったら、今度は祭りだな!」

「はい、殿下!」


お腹が一杯になって眠くなったので、近くの家を借りてお昼寝タイム。


「作兵衛、カイジ、目が覚めたら仕事場を見せてくれ」

「畏まりました」

「じゃあ、おやすみなさい」


〜・〜


 久々のお肉は美味しかったな。瓜坊育てたら養豚みたいに出来るのかな?


「お目覚めですか?」

「猪がおいしかったね。楽しかったし」

「普段、沢山の人と食べませんからね、美味しいですよね」

「弥七、カイジの仕事場まで案内して」

「畏まりました」


 さっき見かけた村人達にてを振ったりしながら、カイジの仕事場に向かう。

「こちらになります」

「ありがとう、雅綱降ろして」


 カイジの仕事場に入って行くが、カイジは集中していて気が付かない。まあ、当たり前か。集中しないと危険な仕事だからなぁ。


「カイジ」


 雅綱が大きな声で名前を呼ぶと、やっと気が付いた様だった。


「気が付きませんで、申し訳ありませんでした」

「いや、仕事をしていたんだから当たり前だ。そこの2人は?」

「京を焼け出された鍛冶屋です。おい、殿下だ、挨拶しろ」

「へい、平次と申します」

「半七と申します」

「うぬ、少し先の話になるが、番匠の手が空いたら、お前達にも仕事場を与える。それまでカイジの下で励んでくれ。カイジ、新しい鍬鉄匙は作って見たか?」

「はっ、今、お持ちします」


 カイジが離れると、弥七が寄って来た。


「殿下、伊賀者が大原に着いたそうです。父がお相手しています」

「うぬ、こっちも大事な話だ。お待ちいただけ」

「御意に」


 今度は弥七が離れると、カイジが両手にくとスコップを持って戻って来た。


「お、それが完成品か、見て良いか?」

「どうぞどうぞ」

「あれだけの説明で良く作ったな、良い出来だ。誰か使って見たか?」

「まだでございます」

「ちょっと何本か持って着いて来い。雅綱、持って貰える?」


 完成品を持って、先程手を振ってた農民に近づく。


「新しい農具を作らせてみた。ちょっと振るってみては貰えぬか?」

「もちろん、畏まりました」


 ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ


「どうだ?」

「はい、平鍬より深く土に食い込みます。土起こしに良さそうです」

「では、こちらの鉄匙を使ってみてくれ、こんな感じだ」


 スコップは大きくて持てないので、身振りだけで使い方を教えた。


「こうですか?」


 サクッ、サクッ、サクッ、サクッ


「どうだ?」

「匙だけあって、土が掬いやすいです。穴掘りなんかに良さそうですね」


 ちょっと、感想が的確すぎる。


「その方、名前を教えてくれ」

「与平にございます」

「そうか、参考になった、ありがとう」


 カイジに向き直る。


「カイジ、平次、半七、良くやった。鉄匙は10本、鍬は作れるだけ作ってくれ。期待している」

「ありがとうございます。ご期待に添える様に頑張ります」

「うぬ、人は必要なだけ雇って構わん、よろしく頼むぞ」

「はっ」


 さて、伊賀者と話をしてくるか。


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