第22話 下見は大事だよ

慧仁親王 京 御所 1522年


「陛下、おもう様、大坂よりただ今戻りました」

「うぬ、ご苦労だった」


 先ずは陛下への帰京のご挨拶。大坂で有った色々な事の報告をして許可を頂いた。

 堺の会合衆からの上納金1万貫の話になると、2人とも身を乗り出しての最高リアクションだった。可愛い。大阪まで行った甲斐が有った。

 そして、最後に、


「近い内に大原に居を構えます。約束通り下向する許可を頂きとうございます」


 親離れだ。優しく見守って欲しかった。


「え〜、危ないんじゃないの?」

「京の都も落ち着いて参りました。雅綱もついて来てくれるし、大原の者も居ます。この様に少しは歩ける様にもなって来ています」

「え〜、抱っこは?抱っこはもうしないの?」

「ま、まだして貰うけどさ〜、流石にずっとは歩けないです」


 何故かホッとした顔をする2人。


「まあ、約束だ、気をつけてな」

「ありがとうございます。別に永遠の別れじゃありませんから」


 涙ぐむ2人にそう声をかけ、大坂の土産話や大原での生活の話になった。話をしている内にもう2人つけてくれる事になった。1人は雅綱の弟の行雅で、もう1人は山科家の言継だ。雅綱は10日に3日くらいの通い勤めにしてあげたかったからね。半刻ぐらいそんな話しをして下がらせて貰った。


「雅綱、引っ越すぞ!準備してくれ」

「畏まりました」

「弥七、明日は大原に下見だ。大原に伝えておいてくれ」

「御意に」


〜・〜


京都大原


 ふぅ。寂光院が見えて来た。俺の住まいは寂光院の手前に建築中だ。寂光院の手前、へへ、大原温泉の源泉がある所だ。もう一度言う。大原温泉がある所だ。転生前に来たんだよ、大原温泉。

 蒸し風呂が当たり前なこの時代、湯船に浸かりたかったら温泉かなって、目印の寂光院の近くを掘って貰ったら、湧き出たんだよね。天照大御神様の思し召しだって大騒ぎだったそうだ。皆に楽しんで貰いたいので、この先に公共温泉風呂も作って貰った。

 温泉と寂光院の間に俺の住居。住居は4LDKで6畳くらいが3部屋と12畳くらいが1部屋、18畳くらいの広さの土間を頼んだ。土間には竈門を2基、寒い時期が長いので暖炉がわりに。椅子とテーブルも作って貰う予定だ。庭に面して縁側が有って、庭の前の道を挟んだ先には高野川に流れ込む小川がある。……小川?小川!!あ、水車を忘れてた。水車が重要だった。


「大作、良い感じだ、この調子で頼む」


 新居を下見して、村に戻る。高野川沿いに三千院方面に向かいながら、

「作兵衛、大作、ここら辺に水車が2基欲しい。奥行きのある作業場とな。水車って簡単に作れる物なのか?」

「お陰様で人手は足りてるんで、大丈夫です」

「炭治郎、水車の臼で炭を挽いて、その挽いた炭の粉で炭団と言う物を作って貰う事になる。詳しくは後で話す。どんどん炭を作って置いてくれ」

「畏まりました」


「作兵衛、良く見回してみろ、歪な形の田が多いと思わぬか?これでは作業がし難いのではないか?」

「良くお分かりで」

「うぬ、そこでそうだな……」


周囲の田んぼを見回す。おっ、あれだあれ。


「全ての田んぼをこの大きさにする。分かるか?」


ちょうど良い大きさの田んぼを指差しながら、今後の工程を黒板を使って説明する。


「なるほど」

「そうしたらな……」


説明は尽きないのである。 後半へつづく

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