第17話 気を取り直して・・・

僕は階段を駆け下りると、改札口を出た。何も悪いことをしたわけではないのに、なぜか焦ってしまう。予定では、立派な出雲市駅の駅舎を撮影することになっていたが、それどころではない。僕は駅を出て、予約をしてあったホテルへと急いだ。


僕が宿泊するのは、駅の北口にほど近い、と言うよりも、ほぼ直結しているグリーンリップスホテルだ。一階には出雲そばの名店の店舗が軒を構えている。


チェックインを済ませた僕は、部屋に直行した。ベッドに荷物を放り投げると、カーテンを閉めた。


洗面所に向かい、備品のコップを使って水道水をごくりと飲む。そして、大きく深呼吸した。


僕は洗面所の鏡に映る青ざめた自分の顔を見て、素朴な疑問が湧いてきた。


『あれ、僕は何しに来たんだっけ?』


そう、僕はYouTubeに投稿する動画を撮影しに来たのだ。逃亡者の気分を味わいに来たわけでもなければ、サスペンスドラマの犯人役を演じるために島根県まで足を運んだのではない。


そもそも僕は犯罪者ではない。ごく普通の鉄オタの高校生YouTuberだ。そう自分に言い聞かせて覚悟を決めると、部屋に戻り、リュックの中からガイドブックを取り出した。


僕のYouTubeのチャンネルでは、あくまでも鉄道をメインに取り上げる予定だが、同時に旅行の情報も提供したいと思っていた。大学生が週末に気楽に楽しめるような、日帰り、または一泊程度の旅を提案していくつもりだ。


出雲といえば、出雲大社である。それと、出雲そばだ。一歩足を伸ばせば、宍道湖が広がり、松江城が旅人を待ち受けている。僕はネットで出雲大社のリサーチを始めた。ノープランで突撃して、大事な見どころを外してしまうほど悲しいことはない。


着替えやら、お菓子などの余計な物をリュックの中から取り出し、ジッパーを閉めた。これで少しは軽くなったはずだ。


多少身軽になった僕はホテルを出ると駅に向かった。と言っても、JRの駅ではなく、一畑電車、通称「ばたでん」の電鉄出雲市駅だ。ホテルとJRの駅の北口の間にある道路を東に進むと、電鉄出雲市駅は目と鼻の先にあった。

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