第2話 反応

拍手喝采が起きると僕は信じて疑わなかった。事前に入念に行った脳内シミュレーション(妄想ともいう)では、感極まったアリサに抱きつかれ、そして、部員全員から胴上げをされていた。


しかし、現実は甘くない。部室にいる全員が固まってしまったのだ。僕の宣言があまりにも唐突で、あまりにも意表を突くものであったらしい。遠くでカラスが鳴いている。

『あれ?おかしいぞ』

予想外の反応に僕も固まってしまった。

微妙な空気が流れたのは、ほんの数秒だったはずだが、僕には永遠に感じられた。あまりの恥かしさに体温が上昇し、みるみるうちに顔が紅潮していくのが分かった。僕は僕という存在を消し、石になってしまいたいとすら思った。


そんなとき、意外な人物が助け舟を出してくれた。アリサだ。

「YouTuberか。モーちゃん。がんばりなよ!」

そう言うとアリサは他の部員の方を向いて、

「みんなでモーちゃんのチャンネルを応援しよう!」

と、笑顔で呼び掛けたのであった。

鉄道研究会の天使であり、部長たっての願いだ。部員達から、

「動画を見まくって、再生数稼がせてあげるよ」や「高評価しまくるぞ」と言ったありがたい声が上がった。しかし、どさくさに紛れて「炎上させるぞ」や「さっそくBANだ」といった脅迫めいた発言をする者もいた。無理もない、僕は部員全員、いや学校の男子生徒全員から崇拝されるアリサから「公式」に応援されたのだ。僕だって、他の部員の立場であったら悔しいと思うはずだ。よく見てみると、部員達は応援するなどと口では言っているものの、殺気立っていた。こめかみに血管が浮き出ている部員もいた。


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