5.嵐が来る

 ――ポケットに、成形した樹脂のかけらをしまっていたのを忘れていた。

 ヤシの木から実を落とそうとしている時に、それはポケットから零れ落ちたようだった。


『なぁ、お前』


 自分がココナッツのジュースを飲んでいる時に、エイハブは樹脂のかけらを自分に見せた。


『……どうして大麻樹脂ハッシシなんて持ってんだ?』


 自分はそれを『神様』の農園で作っていることを教えた。

 エイハブは眉を動かさずに、子供らの話や大人達の話をさらに聞いてきた。

 樹脂を作る大人の仕事。樹脂を切り分ける子供の仕事。

『神様』に呼ばれた子供たちの事。狂気じみた大人たちの乱痴気騒ぎ。

 そして、自分はそのすべてを不快に感じているということ。

 全部を伝えると、エイハブは言った。


『お前、今日はうちに泊まれ。帰るんじゃねぇぞ』


 そうして青い瓶の飲み物を取り出すと、それを一気に飲み干した。


『くそったれが……あの野郎、やっぱり最初に殺しておくべきだったな。おれの島で好き勝手にやりやがって……ハァ、これが、なにもかも面倒がったツケってヤツか。結局、一度殺しちまえば、もう普通には戻れねぇってわけだな、ハァ……』


 エイハブは首を振り振り、ため息を吐きながら灯台へと入っていった。

 風が強い。嵐が近づいているようだった。

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