4.破片

 ――楽園島の子供らは皆、情緒不安定だった。


 攻撃的で、そして時々意味もなくケタケタと笑い出す。

 彼らは初め、新入りの自分に様々な嫌がらせをしてきた。

 自分はそんな鬱憤晴らしを初めは無視していたが、ある日急に面倒くさくなった。

 そこで一番体が大きい奴を襲い、ガラス片で額を切ってやった。

 今でもよく覚えている。煙を押し固めたような破片の硬さと冷たさ。

 それを振りぬいた瞬間に、ぱっと散った赤い色。


「『神様』が怒るぞ!」――体が大きい奴が金切り声を上げて、そして狂ったように笑った。


「お前みたいに乱暴な女を、『神様』が宮殿に迎えるわけがない!」


『神様』はよく子供を――特に女子を自分の家に迎える。

 そうして帰ってきた子供は、笑ったり泣いたりするばかりで使い物にならなくなる。

 けれども大人はそれを見て、「『神様』のお役に立った」と喜ぶのだ。

 宮殿に迎えられなくても、自分は全然構わなかった。

 子供も大人も『神様』も――この島の全てが不愉快だった。


 だから自分はその日も仕事を抜け出して、エイハブの家に行った。

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