第4話



「さて、森に着いたわけだが……」


「これは本格的にマズイな」


 北の森に着いたは良いものの、もう完全に周囲がスタンピード発生状態になっている。いつスタンピードが起きてもおかしくない。


「どうするよ?これ」


「どうするもこうするも、ここまで来たらスタンピードを発生させてすぐに潰すしかないだろ」


「リリスちゃんの捜索は?」


「後回しだな。一人でも生きている可能性の高いSランク一人と、抵抗手段のない住民たち。どっちを取るかなんて言わなくても分かるよな?」


 事実、俺だって一ヶ月失踪していたが生きていたんだ。

 あいつがそう簡単に死ぬとも思えないし、優先すべきは街にかなりの人数がいる一般市民だろう。


 ──リリスが心配なことに、変わりはないけども。


「そうだな。俺達もリリスちゃんが心配だが、依頼主のお前がそう言うんだ。そっちに従おう」


「じゃあ早速作戦会議だ」


「ちょっと待ってくれ。何人か他のやつも連れてくる。いくらなんでも俺達二人だけだと良い結果にならなさそうだからな」


「それもそうか。じゃあ頼む」


「おう」


 ペンドが他の人を連れてくる前に、俺は何を話すか考える。


 まず一つ目は、今回のスタンピードの種類。統率者がいるかどうかだな。

 

 次に、統率者が居た場合と居なかった場合でそれぞれの対応方法。

 

 三つ目に、攻めの人員と守りの人員の分担。全員が攻めにいって街が襲われたら意味がない。


 これらを話せば十分か。


「待たせた」


「いや、大丈夫だ」


 考えを纏めているとペンドが戻ってきた。

 ペンドが連れてきたのはAランクに属する冒険者三人。


 一人は打撃系のアタッカー。


「ウッス、よろしくッス」


 一人は場を荒らすことに定評のあるシーフ。


「どうもでやんす」


 一人は広範囲の防御が得意なタンク。


「……よろしく頼む」


 うん、いい感じのバラけ具合だ。


「ああ、よろしくな。さて議題は、スタンピードの種類は判断とそれに応じた動き、それから攻守の役割分担についてだ。時間がないからどんどん意見を出してくれ」


 普段から騒がしいコイツらのことだから、ポンポン出てくるとは思うけどな。


「ぶっちゃけ攻守の分担さえ決まればどうにかならないか?」


「たぶんなる。なるが、決めておくのとおかないのとじゃ全然違うからな。非常時とか特に」


 全員がバラバラで動いたら緊急時に誰がどこにいるのか分からず更に混乱を招きかねないし。


「……ならば、種類の判断は素早い奴に任せればいい。一人くらいはすばしっこいのがいるだろう」


「他に意見は?」


「俺はそれで良いと思うぞ」


「俺もッス」


「文句無いでやんす」


 満場一致か。


「なら一つ目はそれで決定だな。次、二つ目」


「統率者がいるならそいつ優先、いないなら手当たり次第総当たりでいいだろ」


「「「異議なし!」」」


 超スピーディー。いやー、楽でいいね。


「最後、三つ目!」


「攻守の役割分担か。ならそれぞれここら辺を七、街付近を三くらいの比率で分けたらどうだ?」


「……攻撃はそれでいいかも知れないが、守りは五分、もしくは四と六でもいい」


「なんでやんす?」


「……盾は多すぎると攻撃の邪魔になる。盾は盾らしく街付近にどっしりと陣取って最終防衛ラインになるべきだ」


「確かに、一理あるな」


 答えに迷ったらシミュレーション。

 ということでシミュレーションスタート。


 まずは盾の数が半々の場合。

 攻撃の人数に対し、盾の人数が多すぎて攻撃が追い付かない。しかも盾の人が余ってしまい場所が取られるので攻撃隊が動けなくなる。

 結果、魔物を取りこぼしてしまい危険度があがる。


 よって無し。


 次、四対六。

 さっきよりは動きやすくなったがまだ多い。これでも陣形として問題はないと思うが、最適解ではなさそうだ。


 ならば三対七。

 ……盾が減る分攻撃が動きやすくなるが、被弾も増える。

 でもそれは俺達攻撃側の回避と体力でどうにか出来るレベルだ。


 つまり答えは。


「三対七で行こう」 

 



 

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