第3話


 リリスが居なくなってから今日で四日が経つ。流石にこれ以上放置するのはマズい。何がマズいって、俺とリリスの二人共同でやる仕事が出来ないしそもそもSランクの冒険者が失踪すること事態がいけないのだ。


 俺みたいに普段からいなくなっているのならば良いのだが。いや良くないな。良くないけど、まだいつも通りか……となるじゃないか。


 でもリリスは俺と違って時間に正確だし日常でもきっちりしている。


 そのリリスが、四日も帰っていない。これはもう何かがあったと考えるしかないだろう。


 と、言うわけで。



「捜索よろしくお願いしまーす」


「よぉしおめぇら!リリスちゃんを見つけ出すぞー!!」


「「「おおー!!」」」



 はい。ペンド達リリスガチ恋勢に捜索をお願いしました。勿論依頼という形で。

 彼らだって生活があるのだからタダでというわけにはいかない。もしそれがまかり通るのならばこの世から依頼というものが無くなってしまう。

 

 正確には、討伐系の依頼もあるから無くなりはしないがそれでも減ってしまう。だから依頼という形をとったのだ。


 …………今回の場合はタダでもやってくれそうだけど。


「それで居なくなったのは四日前で、北の森に行くって言っていたんだな?」


「ああ。気になることがあるから一人で行くって言っていたぞ」


「誰も一緒じゃないのか?」


「途中で誰かと合流していなければ一人だな」


「困ったな……」


 なぜ一人だと困るのか。答えは簡単。人が少ない方が足跡等の形跡が減るからだ。人が多ければその分足跡も増えるし気配も大きくなるから見つけやすい。

 だが、今回は一人でしかもSランクの冒険者。気配を消すなんてお手のものだし、足跡だって消せるだろう。

 ただ、仮にそうだとしたら何の目的で気配や足跡を消したのかが分からない。


 まあ、なんにせよ見つけ出すのは難しいということだ。


「とりあえず全員で北の森に行って、その次にバラけて探すか」


「そうだな。それで行こう」


 方針を決めた俺とペンドはそれぞれ行動を開始する。


 俺は荷物の準備や、ギルドにペンド達と一緒に行動することを伝える。

 ペンドは仲間達にさっき決まった方針を伝えたり、他に行く人がいないかの確認。


「こんなもんでいいかな」


「おうジャック。準備出来たか?」


「ああ。いつでもいけるぞ」


「よし、じゃあ行くか」


 ペンド達も準備が出来て、いざ行こうという時だった。

 あまり見覚えのない冒険者二人が話しかけてきた。


「あっ、ジャックさんにペンドさん。丁度良かった」


「ん?何か用か?」


「ええ。伝えたいことがあって」


「伝えたいこと?」


「はい。北の森付近で、スタンピードの兆候が見られたので確認に行って欲しくて」


「「…………!」」


 その言葉を聞き、俺とペンドは顔を見合わせた。

 だって北の森は俺達が今から向かおうとしている場所で──


「まじか……まさかリリスちゃんが巻き込まれたんじゃねぇだろうな……」


 そう。リリスが居なくなった場所である。


 だがそれを知らない二人は動揺していた。


「えっ……リリスさん北の森に行ったんですか!?」


「ああ。四日程前にな」


「四日……丁度最初に兆候を確認した時だ……」


「ん?ちょっと待て、お前ら四日前にはもう兆候を確認していたのか?」


「まぁ。とはいっても、本当に初期だったのでまだ伝える必要が無いと思って黙ってました」


「ああ……レアモンスターの可能性もあるからな」


 本来、スタンピードの兆候を見つけたら直ぐ様ギルドへ方向しないと行けないのだが、例外はある。


 それが、本当に初期の場合。何故なら、初期にはスタンピードとは別の、レアモンスターが湧く場合がありその場合は他の人に知らせず、自分達で狩って良いのだ。


 だからこの冒険者達は黙って様子を見ていたのだろう。

 それが今日になってレアモンスターではなくスタンピードの兆候になっていたから報告にきたという感じか。


「なんにせよ、早く行かないとマズイってことか」


「そうなるな」


 いくらSランクとはいえ、スタンピードにたった一人巻き込まれたらたまったものではない。急いで向かわなければ。

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