第19話 エピローグ

「きゃー。正蔵くん。こっちでビーチバレーしましょ!」

「正蔵さまは私たちとバーべキューするのです」

「いいじゃないの。ちょっと貸してよ」

「ちょっとだけですよ」

「わーい。椿ちゃん、優しいね。だーい好き」


 ここは萩市西の浜である。現在、戦艦長門に救助された美女100名と萩市立地球防衛軍のメンバーが集合し、バカンスを楽しんでいた。


「ちょっと抱きつかないでください」

「いいじゃないの。減るものじゃないし」

「減ったらそれこそ折檻されます」

「その時は私たちが慰めてあ・げ・る♡」

「だから、それが折檻の理由になるんですって」

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

「触っちゃダメ。あっちのオートロックさんなんかはイケメンさんだし、誰も近寄ってませんからいいんじゃないですか」

「知らないの?」

「アレ。Gよ」

「G? ゴキブリ?」

「違うわよ」

「じゃあゴジラのG? 映画にGフォースって自衛隊の部隊が出てましたよね」

「だから違うってば」

「ならガンダムのG? Gファイターって戦闘爆撃機が……」

「もう! GはLGBTQのG。ゲイの事よ」

「え? オートロックさんって男色家だったんですか? いやそれよりも、LGBTQのQって何ですか? LGBTまではわかるんですが」

「QはクエスチョンのQ。自己認識として性別が決められない人達の事よ」

「ああ、なるほど。しかし、それが性的マイノリティになるんですか?」

「わからないからマイノリティなの。正蔵君、それでも国立大学に通ってるの」

「ごめんなさい」

「あ、落込んじゃった?」

「いえ、そうでもないんですけど」

「そんな小さなこと、気にしない気にしない。気にした方が負けよ」

「そんなもんですかね」

「そんなもんよ。宇宙は広い。表だけじゃなくて裏まであるなんて初めて知ったわ」

「そうそう。あの、変な生き物もね、どうなってんだか」

「ゾウタコでしょ。オウム貝と猪が混ざったようなのもいたね」

「あんなのを見ると、おち〇ちんが付いてるとかついてないとか、おっぱいが大きいとか小さいとか」

「小さい事だよね」

「そうかもしれませんね」

「だから、正蔵君の味見、させてよ」

「いや、それはダメです」

「いいじゃん。折檻されるのは正蔵君なんだから」

「椿様の折檻って、気持ちがいい奴かな」

「あの、ビリビリ痺れる奴でしょ。私、アレでいっちゃったんだ」

「私も!」

「ああん。もう我慢できない。襲っちゃえ!」

「抜け駆けはずるい」

「早い者勝ちよ」

「ダメダメ。順番守ろうよ」

「そんなのん気な事、言ってられないわ」


 100人の美女にもみくちゃにされる正蔵だった。しかしその様子を眺めていた椿が髪の毛を逆立てて叫んだ。


「いい加減にしてください。またビリビリしちゃいますよ!」


 椿の全身から幾多の雷が迸り、正蔵と、彼を囲む美女軍団に降り注いだ。


「うわ!」

「ビリビリ気持ちいい!」

「あはあん♡」

「いっちゃう! いっちゃう!」


 阿鼻叫喚、というよりは、あまりにお色気満点の叫び声が幾つも上がり、その場にいた全員が失神した。


 ちなみに、行き場がなくなった美女100名と、オートロック商事の社員と、オートロック本人は萩市立地球防衛軍へと入隊が認められていた。とは言っても彼ら彼女らの仕事は、現在、無人島となっている尾島おしま羽島はじま肥島ひしまに於いて農業を営み、魚介類の養殖をする事だった。


 100名の美女、いや、過去の亡霊と戯れている正蔵の顔は、ひたすら緩みまくっていたと言う。

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亡霊の戯れる海岸で……萩市立地球防衛軍[番外編] 暗黒星雲 @darknebula

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