第21話 お電話わわわーVer.ふぶきー
「もしもし」
数コール目で繋がった。
私は焦りそうになるのを抑えて、スマホに耳をつけ直してそう言った。
「はい、もしもし」
電話越しにやわらかなしゅんすけさんの声が聞こえる。
「ふぶきですけど……。」
私はその声に安心しながらも、もう一度彼に繋がってるかと確認をする。
スマホに表示されてるのは『井上 俊介』の文字。
よし、ちゃんと合ってる。
「あっあぁ、しゅんすけです。」
私がずっと黙ってるから心配してくれたのか、しゅんすけさんがそう名乗ってくれた。
こういう気が使えるところとか、ズカズカ来ないところとかが彼の他の人とは違うところで………良いところ……だと思う。
「あの、その節はどうも。」
私は間違って現実でも頭を下げてしまって、壁に頭をぶつけてしまった。
……………あたま、いたいよぉ。
「はい、俺酔っ払っちゃって、そのすみませんでした。」
多分恥ずかしいのだろう。
少し早口になりながらしゅんすけさんが話す。
そんなところは少しかわいいなと私は自然に頬が緩むのを感じながら、あの時のことを思い出す。
お酒を少し飲んだだけで酔ってしまった彼が、私に………私に…………。
「…………そ、そのですね、あのときに、」
私はあの日あの時からずっと心に残っていた疑問を、切り出した。
恥ずかしいしもしかしたら傷つくかもしれないけど……このままあやふやに出来るほど私は強くなかったみたいだ。
「はい……はい?」
あれ俺なんかやりましたかと言うような声色で彼が言う。
…………やっぱ覚えてないか。
私は悲しくなってうつむいてしまった。
そうか……私だけが覚えてて彼は、何も……。
足をジタバタと動かしながらそう考えて、彼が覚えてないのならもういいかと自分を納得させようとしたとき。
ポタ
私の目から涙がこぼれた。
そんなの…そんなの嫌だ!!!!
あの時の言葉を、彼は酔っていたけどたしかにあの時、
『ふぶきちゃんは付き合ってくれるのかって聞いてるの!!』
と、
『ふぶきちゃんはかわいい』
と言われたんだもん!!!
「その『好き』とか、『かわいい』とか『きれい』とか………『付き合う』とか、言ってたじゃないですか?」
いつの間にか私のその思いは、胸の中では抑えきれずに、言葉になって出てしまっていた。
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