第20話 お電話わわわーVer.しゅんすけー

「もしもし」


俺はかかってきた電話を緊張しながらも取った。

すると少しして冷たなスマホから、そう聞き覚えのある声がした。


「はい、もしもし」


俺も聞こえてますよとそう返す。


「ふぶきですけど……。」


通話越しでも伝わってくる、間違ってないかな的な不安げな彼女の声。


俺はそれを聞いて、なぜだか知らないが自分の緊張がほぐれていくのを感じた。


「あっあぁ、しゅんすけです。」


ちゃんと間違えてませんよと伝わるように俺は名乗りを上げる。


俺自分の人生は間違いだらけだと思ってるけど、この名前は自分でもかっこいいと思ってるよ。


しゅんすけってなんかかっこよくない?

ちょっと歌のお兄さん感があるのも好きな理由の一つだ。


「あの、その節はどうも。」


きっとリアルでもペコペコ頭を下げているのだろうという声色で、ふぶきさんが言う。


「はい、俺酔っ払っちゃって、そのすみませんでした。」


思い出してまた恥ずかしくなりながら答えた。


あっ!!!気づけば俺もエアーお辞儀してた!!

すごいなこれは日本人の性か、義務教育の賜物か?


まさか自分が電話口でエアーお辞儀という礼儀レベル17の高難易度技を披露する日が来るなんて。


「…………そ、そのですね、あのときに、」


俺が謎に感動していると、ふぶきさんが少しの沈黙の後にそう切り出す。


「はい……はい?」


…………あのとき?

何、俺やっぱなんかやらかしてたの?


店内でお漏らしとか、道端でお漏らしとか、タクシーでお漏らしとか、玄関の直前でお漏らしとか!!お漏らしとかしてないかな!!!?


大丈夫!?俺、ふぶきさんにまだ漏らしグセが抜けない可哀想な人とか思われてないよね!!?


「その『好き』とか、『かわいい』とか『きれい』とか………『付き合う』とか、言ってたじゃないですか?」


…………俺の不真面目に見えてわりかし本気めの悩みは、杞憂だったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る