第12話 お会計ーVer.しゅんすけー

「お会計ぃ!!」


俺はふわふわとする意識の中叫んだ。

もうなんか吐き気するし、だるいし、眠いしで帰りたい。


「ちょ、声が……」


おれ?ふぶきちゃんどっかいったんじゃなかったっけ?

まぁ、いいか。何があろうとそこに美少女がいるだけで嬉しい。美少女 is 正義。これもう世界の絶対法則。


「畏まりました。お客様、券などはお持ちですか?」


やってきたイケメェンなお兄ちゃんがニコニコと言う。


「あぁ、これです?」


俺は橋本にもらった券をお兄ちゃんに渡す。


「はい。こちらです。」


微笑みながらお兄ちゃんが俺の券を回収して、なんかカッコいいはんこを押した。

これで使用済みって意味なのかな?


「私も……。」


ふぶきさんがおずおずと己の券を差し出した。

おぉ、君もそれ持ってるのね!

ふぶきちゃんすんごいかわいいけどこういうとこに来るようには見えないもんね。


「受け取らせて頂きました。失礼します。」


すっと礼をしたお兄ちゃんはごっゆくりどうぞと言い残して、去っていった。

うわぁ、カッコいい。

やべぇ、俺惚れちゃうかも!!


「ふぶきちゃぁんは、何で帰る?」


うわっ!自分で思っていたよりも2倍くらい気持ち悪い声がでた。


「家が近いので歩きです。」


なのにふぶきちゃんはちゃんと答えてくれる!

あらやだっ!天使かしらっ!!?


「おぉ奇遇だね!!俺も歩きよ!!」


俺はできているかもわからないけど、ふらつく視界でサムズアップをする。


「ちょっ!危ないですって!!タクシー呼びますから待っててください!」


俺が椅子から立ち上がって歩いていこーと言うと、ふぶきちゃんに割と真面目な顔で止められた。


「えぇ大丈夫よ。いけるいける。」


おっとっととよろけながら俺は彼女の肩を叩く。


「だめですっ!」


ぷっくり頬を膨らませて怒ってますよアピールをしたふぶきちゃんが、俺の方を支えてくれた。

あらやだやさしいっ!この子天使かしらっ!!!?天使なのね!!!!


「ちぇー」


俺は全力で止められるのでそう不満げない意思を表明しつつ、自分の席に戻った。

俺、まだ歩けるのに。あきらめたらそこで試合終了なのに。


「もしもし………。」


俺がいじけている間に、ふぶきちゃんは電話をし始めた。

何!!他の男!!?私許さないわっ!!!!!


「いてっ」


変なことを考えすぎた天罰なのか、俺は机に膝をぶつけた。

…………結構痛かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る