夢の話 病院と消灯時間
その夢で、私は親のない孤児の一人の女児だった。数人の歳の近い子供たちと暮らしていた。「学校を卒業したらお前はどうする?おれはマートの住み込みかな~?」と男の子に聞かれて、「私はどうしようかな。まだ決めてないや」と答えた。
マートは孤児たちがそのまま働くにちょうどいい場所としてその街にあって、学校を卒業して施設から出て行かなくてはならなくなった子供たちが多く働いていた。
顔見知りの大きな女の子もマートで働いている。大きな女の子とは文字通り体の大きな女の子だ。ちょっとガサツだが気が利いて面倒見の良い女の子だった。施設に居る頃はよく面倒を見てもらっていた。
賑やかな音楽の鳴る、マートの惣菜売り場でマカロニサラダとポテトサラダを取り分けながら私に「ちょっとそこのクラッカーくわえさせて」と無茶なお願いをしてきたあの子だ。私は言われた通りクラッカーをくわえさせてマートを巡回していた施設のシスター先生に「不衛生!」とこっぴどく叱られたのだった。
トイレに行きたくてトイレを探す。施設は大きな病院跡地にあって、ここは昔ちょっとへんてこな病院だったからトイレは半個室でドアがあるようなないような、スースーしてちょっと恥ずかしい作りになっている。床はなぜか錆色の鉄板だ。ボコボコ突起があるやつ。裸足で歩くとちょっと痛い。
私は空いているところを見つけて座ったけど、なんだかガタガタする。立ち上がって便器を眺めるとなんと便器が床から外れかけている。下水に直通のパイプが外れかけて妙な緊張感がある。足で押さえつけて外れないようにしながら用を足した。逆流などはしなかった。無事に用を足せて良かった。明日は誰かが犠牲になるかもしれないがめんどくさくてシスターには言わなかった。
消灯時間になって私は自分の部屋に戻った。ほかの子供たちとヒソヒソ声で今日あったことや噂話を話した。巡回するシスターたちの目を盗んで私は自分より大きな大きな猫の絵をドアに描いていた。シスターが見つけると怒って消してしまうからその度に描き直した。なぜかしなくてはならない事のように思えて、ペンや筆記具などはなくドアに手を使って細かい毛並みやヒゲを懸命に描き入れていた。
私のベッドは水を半分ほど張ってある湯船に天蓋がかけられていた。女児の私はこのベッドを不思議なものとは思っていなくて、毎夜湯船の中に体を横たえて水の中に潜って眠るのだった。
私は人間だったのだろうか…?
習作置き場(元・怪談のような短編置き場) ぶいさん @buichi
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