実家と夢の話

 私の書くお話は主に体験が元になっていてもちろんお話としてオチをつけたりモンスターが出たりするところは脚色はしてあるんですが、端々にリアリティがあったらいいなと思ったり思わなかったり。今日は実家の話や眠ってみる夢の話をしようと思います。

 多分ですけど、私の家は割と変な家だったので私には当たり前でも変に聞こえる部分があるように思います。それってホラーになりませんか?、なんて。


 

 私の実家には大きな姿見鏡があって、昼間のうちは日が差して明るいのですが、電灯が近くにないので夜は真っ暗になっておまけに鏡があるから小さい頃からそこはいかにもお化けが出そうな雰囲気が漂っていて…大人になった今もそこは少し苦手です。

 すぐ近くには物置になってしまったピアノ部屋があります。

 昔、私が生まれるずっと前、新築で家が建てられた頃はそれなりに裕福だったそうでピアノは祖父母が私の叔母にあたる娘のために買われたと聞いています。私が生まれてからはピアノの周囲にはぎっしりと家具や衣類などが積まれて埋もれてしまい、身動きひとつ取れないような狭い室内で何十年も調律されず放置され、誰も片付けないまま祖父母も亡くなってしまって現在もそこは締め切られた物置になっています。

 ピアノ部屋はあかずの間で、常に古く重苦しいカーテンが引かれていて中にはかわいそうなピアノがあるんです。幼心にはとても怖く感じました。ピアノ部屋には間接照明のようなあんまり光量が強くない電灯がついていて、ピアノの上には洋風のドレスを着たお人形がケースに入れられて飾ってあるものでより一層怖い雰囲気になっていました。


 実家には祖父母が家を建てた時からあるという頂き物の剥製や人形が数多く飾られていて、ウミガメの剥製やキンケイチョウの剥製やサンゴのインテリアなどがありました。キンケイチョウの剥製は長い尾羽まで含めると子供の背丈より大きくて怖かったです。この実家、怖いものがたくさんあるんですね…。現在は剥製たちはほとんど処分されて小さな亀の置物が残っているくらいなのですが。

 一番怖かった人形は仏壇の下に飾られていた翁の面をかぶって舞を踊っているような男性の人形でした。これはキンケイチョウとは違って、両手に抱えられるサイズで精巧な作りでした。何を思って親戚は新築祝いにこれを贈ったのか私にはわかりませんがとにかく日常的に人形があったので実家を思い出すとき思い出の中に人形が鎮座しています。たいへん怖いです。夜中に動き出して襲って来るのではないか、なんて。


 ところで仏間は家族や親戚で集まって食事をする時や客間がわりに使われていて、食事の時は私はいつも仏壇を背にして食卓についていたのですがよっこらしょと体をひねって立ち上がる時に仏壇の下の人形とよく目が合っていました。大人になった今だったら人形たちや剥製たちを撮影したり模写をしたり眺めたりするのに最適だったように思うのに、当時の私は怖がってばかりでろくに撮影もしていなくてこうして思い浮かべてはもったいないことをしたなと思うわけです。



 夢の話をします。眠ってみる夢の話です。私は夢を見るのが大好きで眠るのが大好きです。食欲は行動力や原動力になりますが、実は食べることよりも眠る方が大好きです。眠れない日はごくまれにだけで、毎日寝つきもよいです。幸せな睡眠ライフです。睡眠といえばおふとんですね。おふとんの話を先にします。


 実家は築60年でどこもかしこも建て付けが悪くなってすきまだらけで寒く、布団はおせんべいのように固く薄っぺらでした。ふすまや畳はシミだらけだし私が家を出る前後には家の中がいろいろゴタゴタしていて部屋の掃除に気を配ることができる人間はおりませんでしたので、虫が畳からタンスからいたるところに大量にわいて天井裏から天袋にそして私の部屋に降りてきたねずみが走り回るというとんでもないことになりました。

 そうでなくとも学生の頃は友達を呼ぶと、お前の家は汚くて裸足では歩けないだとか畳のささくれでストッキングが擦れて切れるだとか言われたものです。今考えるととんでもなく不衛生だったしクリスマス会は凍えそうだったし友達の気持ちもわかります。当時は失礼だな、なんて思いましたがそのおかげで助かったこともあると思います。おかしなところがあれば遠慮なく指摘できるのは友達のいいところですね。

 

 夢の話でしたね。私は見た夢を覚えておきたくて、よく夢の話をメモに残していました。夢占いは全く信じていないし気にもしていないのですが、夢って自分が見たいように見られるものじゃないところが好きです。この夢を見たいと思って実現できる人や夢と気づいてから自由が利く人も中にはいると聞きますが、私には映画や物語のようにエンタメを感じていて自分が決めていないのに自分の中からお話が生まれる感覚がとても好きです。起きている時にお話を考えるのは得意ではありませんので、夢からインスピレーションを得ています。あるいは得たいと思っています。私の中の可能性のタネです。


 それから人の夢の話を聞くのも好きです。

 実家にいる頃は父親が朝自分の見た夢をクソデカ大声で子供たちに発表する謎タイムがあり、それは本当に苦痛だったのですが…あれは内容がどうというより朝からクソデカ大声を無理やり聞かされるのが苦痛だったのかもしれません。


 私の中にあるホラーの要素です。怖いものはみんな実家にあったので私はそれを選んで取り出すだけでいいのです。な~んて。

 

 

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