7 言の刃で偽善者の喉笛を掻き切る

 高く伸びた枝葉の隙間から零れる陽光は眠気を誘う暖かさ。そよ風に乗った新緑の香りが鼻腔をくすぐる。小鳥の囀りは耳触りが良くて、いつまでも聞いていられる。

 全身が自然に包まれる穏やかで優雅な朝。を、台無しにする元気な子どもたちの声と気怠げな大人たちの声。


「師匠、今日も魔法について教えてください! できれば治療系のものを」

「あれは知識も技術も要するものですから、まずは初歩的なものから学びましょうね。あと師匠呼びはやめてツナグさんと呼んでください」

「でも、魔法を教えてくれるツナグさんは師匠じゃないですか」

「教えるつもりはなかったんですけどねぇ」


 森に着いて真っ先にしたことは近の手当て。といっても、ツナグが治癒魔法をかけて治して終わりのお手軽なもの。瞬く間に癒える傷が心底羨ましい。私もあの魔法に適応できたらこの世にある地獄を全てを煮詰めたような薬を飲まなくて済むのに。

 そして、ツナグの魔法に感動したアミィはツナグに弟子入りを志願した。面倒事も他人と深く関わることも避けたいツナグは当然断った。けれど、一度断られたから分かりましたと素直に諦めるアミィではない。それを見ていたファルがすかさず、アミィの援護射撃に入った。


「僕たちの家を壊した貴方たちが僕たちのお願いを断る権利はないと思うのですが」


 これを言われてしまったら言い返す言葉はない。

 ツナグは恨みがましそうにイオンを睨み、渋々、本当に渋々とアミィに魔法を教えることを請け負った。ただし、私たちがイシアにいる間という期間限定で。だから別に師匠になったわけではないというのがツナグの主張。まあ、そこら辺はどうでもよいこととして。

 アミィの期間限定の弟子入りを果たしてからというものの、子どもたちは高い順応性を私たちに見せつけた。


「イオン、今日は鳥の狩り方を教えろ!」

「あとキィちゃんでもセットできる罠の作り方!」

「え、今日もかよ。病み上がりだっていう中で昨日、地面を走る動物の狩り方を教えただろ。それに、俺は今日こそ愛車を直そうと」

「俺たちの家をー」

「壊したのだーれだー!」

「…………オレデス」


 森に逃げ込んで二日目。

 ツナグの転移魔法により魔力酔いをしていたイオンが回復した直後、シーナとサシェがイオンに狩りの仕方を教えろとせがみに行った。ファルがツナグに使った魔法の言葉を持って。あの時、もっともらしいことを言ってファルを黙らせたイオンもこう使われてしまえば従うしかない。過去の自分の行動に頭を抱えながら、二人と一緒に森へ出た。そして三人、泥まみれになって帰ってきた。

 ちなみにファルはというとツナグとイオン、二人から学べるものを学ぼうと午前午後に分けて参加している。どちらかに絞った方がいいんじゃないかと見守っていたけれど、彼はとにかく器用だ。宣言通り、短い時間で二人からどんどん吸収している。


「ガキどもは元気だな」

「うー……」

「で、お前は」

「……きもちわるい」


 そして本日、ツナグの転移魔法を利用してイシア最寄りの森に逃げ込んで三日目となる。

 イオンと同じくツナグの魔力に酔った私は未だ寝込んでいた。直後なんて酷いもので、子どもたちにとって貴重な食料であったパンを戻した。そして、胃液含め胃の中にあったもの全部出す勢いで嘔吐を繰り返して空っぽになった後、気絶をした。

 それからも最悪な体調は続く。頭痛は酷い、眩暈が続いて視界は常に回転している。胃が食べ物を受け付けてくれないのは当然のこと。私が食べたがらない姿に衝撃を受けた近と笑流は顔を青くしながら私から離れなくなった。それはもう、鬱陶しいくらいに世話を焼いてくれる。


「萩野、お水飲みますか?」

「うん、飲む」

「あのね、イオンが狩りの途中で果物を見つけたんです。だから近にやり方聞いて混ぜてみました!」

「あー、なんだっけ。フルーツウォーターみたいな。……ありがとう」


 三日目にしてようやく眩暈が落ち着き、身体を動かせるようになった私は近が組み立ててくれたハンモックに揺られていた。私としては自室のベッドに籠っていてもよかったのだけれど、笑流がそろそろお日様を浴びましょうと泣きそうな顔で言うものだから連れ出されることにした。

 グラスいっぱいにつめこまれた果物と冷たい水。華やかなフルーツウォーターに飾られたストローは水玉模様。口をつけて、ゆっくりと吸い上げる。乾いた舌を濡らす水は喉を通り、全身に染み渡る。この三日間で摂取できていなかった栄養が補給されているみたい。

 数度に分けて嚥下をし、グラスの三分の一くらい飲んだところで笑流に目を向ける。光に、感情に揺れるあお色をしばらく見つめてから、美味しいよと笑って頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細めた笑流は私の手に擦り寄ってくる。それを無言で見つめてくる優白にきみも撫でてほしいのと手を伸ばせば牙を剥くように威嚇された。残念。


「お前、本当に魔力耐性ないな」

「イオンが魔力耐性ゼロだとすれば、私はマイナス値なんだって。随分前にツナグが言ってた」

「そんな奴、存在するんだな」

「テクノロリアに生まれたら珍しくもない話でしょ。あっちは魔法なんてほとんど使わない、科学を衰退させる邪道なものと扱う国だってあるくらいだし」

「信じられない話だな」

「信じられなくてもそれが現実だよ」


 難しい顔をして、全く理解できないと首を横に振る近に苦笑いを浮かべる。言いたいことは分かる。分かる、けれど。テクノロリアにはそういう国が大多数。その姿勢のせいか、それとも先に売られた喧嘩を買ってその姿勢を貫いているのか、テクノロリアとアルケミアはすごく仲が悪い。一部の国なんていつ戦争を引き起こしてもおかしくないくらい嫌っているもの。

 やれやれ、戦争なんて百害あって一利なしというのに。まあ、経済的には儲かるから戦争好きな国も存在するあたり救いようがない。そういう国に唆されて悲劇を招かないように仲介役を担った国があるのだけれど……時間の問題かもしれない。


「さて、と。私も話せるくらいに体調も回復したことだし、目の前の問題を解決しようかな」

「ガキたちのことか」

「あー、うん。私としては子どもたちだけなら子どもに優しいかつ平和な国に託せばいいと思ってたのよね」

「ネルトリアとかか。けど、町から出ていくことにあのガキたちが同意するとは思えないな」

「そこはほら。イオンの言葉を借りるなら生きたいなら町という物に固執するなって話で」

「言いくるめるんだな」

「極端な話だとは思っているけれど、間違ってもいないしね。あの子たちも、自分だけならイシアに残ることを選びそうだけれど、キィがいるからね。幼いあの子を巻き込んでまで故郷に固執することはしないでしょう」


 あの子たちは見た目に比べて中身は随分と育っていて、子どもながらに判断力がある。だから町で襲った私を再度襲うことをせず、シーナと一緒に人買いに攫われた被害者として受け入れた。そして、思い出のある大事な住処を壊した犯人であるイオンを敵視することなく、慕うことを選んだ。大人よりもずっと賢い。子どもだからこそ柔軟に選んでいるとも言う。

 そんな彼らが、イオンのあの言葉を聞いてもなお、まだまだ幼いキィを巻き込んでまで故郷に残るとは思えない 。後ろ髪を引かれながら、生きる道を選ぶことだろう。だから、その点については心配していない。


「というわけで、クラム・ハープさん。私としてはイシアがどうなろうと知ったことではないし、私以外はイシアなんて眼中にすらないのよね」

「あの子たちは」

「先に述べた通り。顔見知りが治める国に託そうと思っているわ。中身に関係なく、受けた恩は倍で返すようにしているの。そっちの方が後腐れがない」

「…………」


 なので、クラム・ハープが訴えようとしていることに手を貸す義理もなければ、親切心もない。しかし、ここまで連れてきてしまったからには話を聞かないわけにもいかない。私としては何も聞かず、何も言わずイシアにお返しをしてもよいと思っている。皆も同意しそう。でも、それをすれば子どもたちが煩くなるのは目に見えているからね。クラム・ハープの話を聞くより納得できず騒ぐ子どもたちの相手をする方が面倒臭そうだ。

 水玉柄のストローで果物を潰し、果肉を吸いながらクラム・ハープを観察する。物言いたげなアップルグリーンの目はこの三日間で飽くほど見た。目は口ほどに物を言うというのはよく言ったものね。細かな内容は分からずとも、彼女が私にぶつけたい感情は嫌というほど浴びせられた。

 ああ、なんて鬱陶しい。


「先に断っておくけれど、きみに今イシアを助けてほしいと言われても私は嫌だと答えるよ」

「そんな……っ、な、なぜですか。貴方たちなら、いえ、貴方ならイシアを救うことも」

「できないとは言わない」

「なら、どうしてですか。面倒事を避けたいから、ただその一言でイシアを、イシアで生きる人々の命を見捨てるというのですか」

「面倒事を避けたいのは否定しない。けれど、そんな理由ではさすがに断らないよ。このまま放置すれば朽ちるであろう町を見捨てて、そのせいで少なくない数の命が失われたのだと思う方がしんどいからね」


 今にも泣きそうな顔をして、詰め寄るクラム・ハープ。

 町を思う姿は健気で、私のジャージを握る手の力は弱々しくて、涙で潤む目は悲しげで。きっと、そんな姿を見た町民はクラム・ハープは町のために嘆いてくれる心優しい女の子だと賞賛するのだろう。され続けてきたから彼女はそのままでいるのだ。


「私はきみが気に入らない」


 森林浴をして、甘酸っぱいフルーツウォーターを飲んで、清々しい気分になっていたのに台無しだ。

 深く溜め息を吐き出してジャージを握る手を払う。それから、ハンモックから降りて膝をつくクラム・ハープを見下ろす。

 近に薄情な奴だなと笑われ、そして泣かれると面倒臭いからとほどほどにしておけと釘を刺される。近も人のことは言えないよね。


「そんな、そんな私的な理由で見捨てるというのですか!」

「イシアがああなった原因は領主にある。そしてその領主を、父親をどうにかしてほしい。きみの言うイシアを救ってほしいといつのはそういうことよね」

「そう、です。はい、そういうことです」

「笑流、近。お勉強の時間にしようか」


 怒り方が父親にそっくりね。口にしたらまた話が逸れてしまいそうなので、心の内に留めておく。狩りや魔法の練習に出た子どもたちが帰ってくる前に話を終わらせたいから、脱線している暇はないのよね。けれど、こんな面白味が一切ない退屈な話を私ばかりするのも時間の無駄というもの。喋り続けるのは疲れるし。

 少し考えてから、他人事だからと無人になって揺れる寂し気なハンモックに座ってぼんやりとし始めた近とその隣で心配そうに私を見ている笑流の二人を巻き込むことにする。

 お勉強の言葉に近は嫌そうに、笑流は嬉しそうに。それぞれ真反対の表情を浮かべる。勉強に対するそれぞれの姿勢がよく分かる反応ね。


「問一。イシアを救うために必要なことを述べよ」

「えっと、お掃除だと思います。イシアは流行り病によって衰退したと話されていました。せっかくその病をなくせたとしても、清潔な環境でなければ再び何かしらの病が広がるでしょう」

「あと食料問題だな。炊き出しの案はその場凌ぎの残酷で偽善的なやり方だって言われたけど、食べ物がない毎日よりかはマシだろ。それがあったからあのガキたちもこうして今を生きてる」

「あと、イシアには他にも解決しないといけない問題はあると思いますけど、何をするにしてもお金が必要です。ハープ家の財産だけでは足りないかと」

「だからと言って国民に出せる金はない」


 二人は揃って腕を組み、同じ角度に首を傾げる。一人でも目の保養なのだから二人が並べば当然効果は倍増。クラム・ハープの行動にささくれだっていた気分が和らぐ。

 真剣な表情を浮かべて話し合う二人の声に耳を傾け、唇を噛んで聞くだけのクラム・ハープを一瞥する。そんなこと改めて指摘されずとも分かっているとでも言いたそうな目だそれはそれでますます気分が悪い。

 クラム・ハープから目を逸らし、あれもこれも問題だけれど解決するにはやはりお金が足りないという答えに行き着いて肩を落とす二人に声をかける。


「問二。それらの問題を解決すべき人は誰?」

「んーっと、やっぱり一番上の人ですよね。国の人が団結して頑張る! というのも大事ですが、やはり最初に動くべき人はそこかと」

「けど、肝心の一番上にあたる領主が子どもを人買いに売って私腹を肥やしている。だからこの場合、領主は選択肢から除くべきだな」

「だとすると……萩野、あの、それだと話の流れがおかしいと思うのは、私の勘違いでしょうか」


 何かに気が付いたという表情を浮かべた笑流は控えめにクラム・ハープを見て、すぐに私に視線を戻す。何かを言いたげに口篭り、それを言うことで相手を傷つけるのではないかと気遣って言葉を呑み込む。優しい笑流らしい。けれど、同時に素直でもある笑流は黙ることはできても隠すことはできない。

 笑流の髪を梳きながら近はどうだろうかと目線を上げる。私と目が合えばそれはそれは美しい微笑みを浮かべられた。つまり俺ではなく笑流に言わせろということだろう。

 なんて酷い男。私たちよりも世話をしてきたあの子どもたちと歳の近い笑流に言わせた方が傷つくことを知っていて、しかもめったに作り笑いも浮かべないくせに楽しそう笑うなんて。


「これは試験じゃないから間違っても減点はないよ。言ってごらん」

「……ハープ家の長女として、クラムさんが解決すべき問題じゃないですか。それに、領主さんは亡くした奥さんと娘を大切に思っていて、思いすぎているから守るべきはイシアではなくハープ家、残されたクラムさんだと考えている」

「そうね」

「助けと萩野に縋る前に、やめてと父親に縋るべきで。もしくは嫌がる萩野に怒る前に間違っている父親を怒るべき……だと」


 満点の回答である。花丸をあげたい。けれど、ここには答案用紙もなければ赤ペンもない。一生懸命答えてくれたからには形にして採点してあげたいのに。

 よくやったと笑流の頭を撫で回して褒める近に呆れながら辺りを見渡す。そして、笑流なら華やかな花丸でなくても喜ぶだろうと木の根に咲く花に目をつける。


「この二人はね、短くはないけれど長いわけでもないこの旅を通して勉強しているの。それまでは教養を受ける機会がなかったみたい。つまり、学はそんなにない。お馬鹿なのよね」

「喧嘩売ってんなら買うぞ」

「そんな子たちが気付くくらい、きみはおかしなことをしている。否、順番を間違えているといった方が正しいわね。以上、きみが気に入らない理由」


 すかさず反応する近を無視して、木の根の花を手折りに行く。白いワンピースを着こなす笑流には白い花がよく似合う。が、最近白色に酷い目に遭わされたばかりなので避ける。

 点散するようにあちらこちらで咲く花を吟味し、鮮やかな黄色の花を手に取る。あお色に黄色の組み合わせはどうだろうと思わなくもないけれど、元気な笑流にはビタミンカラーが似合いそう。


「笑流、満点の花丸だよ」

「わあ、お花の指輪です!」

「そんな可愛いものの作り方、知ってたんだな」

「昨日、キィがお見舞いにってくれたのよ。それで作り方覚えた」

「相変わらず記憶力がいいことで」


 手折った黄色の花を指輪にし、笑流の右手の中指に通す。頬をほんのりと染めて喜んだ笑流はそっと左手で指輪を包み、はにかみながらお礼を口にする。そしてツナグにずっと枯れないように魔法をかけてもらうのだと飛び跳ねる。

 このまま笑流と花を摘み、次は花冠でも作ってあげたい。そして仏頂面に戻った近の頭に添えてやりたい。さぞかし似合うことだろう。正に美の化身。口を開けば反抗期をただの青年なのだけどね。

 そんな楽しい時間を過ごすためには目の前の問題を、喉に刺さる小骨を取り除かないといけない。私はその違和感を見て見ぬふりし続けられるほど器用でもないから。かと言ってそれを気にして気を揉むほど繊細でもないから相手を気遣って優しい言葉をかけ、望むように動くこともしてあげない。


「できないとやらないは同じじゃない」

「私は無力な人間です。これ以上、イシアを救うことは私にはできません。ですから、こうして」

「何をもってできないと言っているの。そもそも、きみは何をしたの」


 息を呑む音が嫌に耳に響く。目を見開いたクラム・ハープは瞬きひとつせず、胸を上下させることもなく、ただただ私を見つめる。傷ついていることを分かりやすく表現され、一瞬だけ言葉をつまらせる。けれど、そこで止まる私でもない。

 クラム・ハープの前に立ち、わざとらしく指折り数えながら私が思い浮かぶ限りのことをあげる。


「国民を哀れんだ。父親がしていることを知って心を痛めた。せめての罪滅ぼしに子どもたちに食事の余りを分け与えた。あとは何をした?」

「それ、は」

「やり方を知らないからは言い訳にならない。だって知らないなら知ろうとすればいい」

「けど」

「イシアは知識と技術で栄えた国。それをきみが知らないわけがないよね。だとすると、きみは領主の娘として以前にイシアで生まれ育った者として、環境が整っているにも関わらずすべき努力をしていない」


 これは劣悪な環境で育った子どもたちでも知っている話である。それを領主の家に生まれたクラム・ハープが知らないはずがない。

 なのに彼女はやり方を知らないと言う。彼女は自分に何の力もないと言う。そんなはずがあろうか、否、あるはずがない。もし、その可能性があったとしても言わせてたまるか。


 クラム・ハープが温かい食事を摂っているとき、子どもたちは必死に考えて食べ物を手に入れていた。

 クラム・ハープが温かい布団で眠っているとき、子どもたちは隙間風で冷える住処で身を寄せ合って眠っていた。

 クラム・ハープが怪我をしたら手厚い治療を受けるとしたら、子どもたちはアミィの父親が残した知識をもとに拙い手つきで応急処置を施すだろう。

 あの環境で生きるために自分たちで知識と技術を手に入れた。それは文字通り、死に物狂いで。小さくて、弱くて、脆いその身で。


「もう一度言うよ。私はそんなきみが気に入らない。何もしてない奴が誰かに救いの手を差し伸べられるなんて、楽になろうなんて許さない」


 言葉の一つ一つを聞く度に顔を俯かせ、指通りの良さそうなダークブラウンの髪が垂れる。横髪で表情が隠れるが、クラム・ハープが今何を思っているかは想像できる。目を逸らすなんて許さない。

 長い髪を引っ張る。思っていた通り指通りの良い髪だった。きっと毎日とまでいかずとも定期的に手入れをしているのだろう。その髪をやや乱暴に引き寄せる。痛みを訴えるために顔をあげたクラム・ハープは涙で潤ませた目を鋭くした。なんだ、そういう顔も浮かべられるのね。文句を言おうと口を開くクラム・ハープの声を遮る。


「だからこれは温情だと思いなさい」

「えっ」

「父親を止めることができず、日々消耗していくイシアを見ることしかしなかったきみが生きたい理由は何?」

「生きたい、理由」

「その答え次第で、きみの手助けくらいならしてもいいと思うかもね」


 かち合ったアップルグリーンの目が揺れる。それは涙のせいか、はたまた別のものを宿したのか。言いたいことを言い終えた私にはそれが何なのか、あまり興味がわかない話。

 髪から手を放し、クラム・ハープを突き放す。指の間に残った数本の髪を払う。はらはらと落ちた数本の髪は地面に落ちる。それを眺め、踏みつける。

 ああ、なんだろうこの感じ。どこからともなく伸びてきた手に首根っこを掴まれているような、喉にわだかまりが詰まって息苦しいような。とにかく気持ち悪い。


「どこ行くんだ」

「せっかく外に出たのだから散歩でもしようかと。この道を行った先に川があるんだって、ちょっと涼んでくる」

「頭を冷やしてくるの間違いだろ」

「……残念ながら、感情的になったところで思考は冷静なのよね」

「あっそ」


 森の奥へ行こうとする私を近が呼び止める。お小言を言うつもりはなく、ただ行き先の確認をするだけ。私の答えを聞いたらそれ以上何も言うわけでもなく、フードを目深に被ってトレーラーへ戻る。打ちひしがれるクラム・ハープと関わるつもりは毛ほどもないらしい。話を終えたらもう用はないと言わんばかりの態度に呆れるばかり。まあ、性格や態度については私も人のことを言えないのだけれど。

 身動ぎをせず地面を見つめているだけのクラム・ハープを一瞥し、アミィたちが教えてくれた森の奥にある川へ足を向けた。






 テクノロリアの人間により科学が発展し、その代償として環境汚染が世界に広がりつつあるのは有名な話。十年前にテクノロリア、アルケミア関係なく爆発的に流行した病の原因はテクノロリアが科学の発展に伴い排出した汚染物質によるものではないかと唱える者も多くいた。

 その主張が正しいと証明する根拠はなく、環境汚染のリスクはあれどアルケミアの領地を害することは不可能であると証明することができたため、多くの者を苦しめた感染症の原因がテクノロリアにあるという汚名を被らずに済んだ。とはいえ、件の感染症の原因は十年経った今も不明のままなのよね。


「イシアは鳥籠の従属国というのは既に話してあるよね」

「カテゴリーのお話をしました」

「テクノロリアは科学が発展した地。だから緑溢れる森よりもコンクリートジャングルの方が多いのよ」

「息苦しそうです」


 科学技術の発展による環境汚染は今も広がっている。それが嘘のようにこの森の澄んでいる。

 深呼吸をすれば草木や花の香りを染みこませた空気が肺を満たし、小鳥の囀りや底が見える川が反射させる木漏れ日は酷使し続けてきた五感を癒す。

 靴と靴下を脱ぎ捨て、流れが緩やかな川に足を入れる。川底に転がった小石が足底を刺激するが、大した痛みではない。気にせず、川の流れに逆らって歩いてみたり、水面を蹴ってみたりと遊んでみる。

 いつもならこの辺りで笑流が自分もやると声を上げ、混ざってくる。けれど、今日の彼女はそれをしない。優白の頭を撫でながら、川に反射した木漏れ日によって変わるあおい目をじっと向けてくる。

 笑流の目はクラム・ハープ以上に物を語る。


「笑流、言いたいことがあるなら早く言って」

「えーっと、あの、んーっと」

「きみは遠慮しようとしても、言うことに躊躇っても、全部顔に出ていて分かりやすい。どうせ隠せないのだから直球でどうぞ」

「クラムさんへの当たりがきついのは、萩野が鳥籠出身だからですか?」


 直球で良いとは言ったけれど、そこまで直球に聞いて良いとは言っていない。

 睨むとまではいかないが、そう咎めるように見つめ返せば笑流は両手を顔の前で振って慌て始める。その隣で優白が私を責めるように睨んでくるけれど、笑流がこの疑問を抱くきっかけを作ったのはどう考えても優白よね。


「ちゃんと分かっています。過去を詮索しない、その人の秘密には触れないというのがルールなのを。でも、その、優白から聞いて心配になって」

「これを言うと私から話を掘り下げることになるから言いたくないのだけれど、いいでしょう。聞いてあげる。優白に何を聞いたの」

「領主さんと萩野の会話を……聞いた限りだと一方的に言われていたみたいですが」


 つまり、優白は星々が煌めく美しい夜の日に繰り広げられたクライ・ハープの悲劇の演説を聞いていたということ。私の危険に気付いていた上で、あの場に来なかった。

 誰よ。私に何かあれば笑流が悲しむからという理由で助けにきてくれるとか言ったのは。普通に見捨てられていたわ。

 舌打ちをしたい衝動に駆られながらも、この状況をどうすべきかと考える。私としては言いくるめるのも一つの手なのだけれど、いい加減なことを言ったら噛み殺してやるとでも言いた気に唸る優白のせいでその気にならない。

 そもそも、純粋無垢故に真っ直ぐな笑流を言いくるめるって意外と大変なのよね。面倒臭い。


「笑流はこんな風に旅を続けてまで生きたいのはどうして?」

「無知のまま死にたくないからです」

「即答ね」

「わたしは無知のまま、こういうものなんだ、仕方がないと思って納得して死にたくありません。いろいろなものに触れて、あれはおかしいことなんだと気付いて、そして抗いたい」

「見た目と性格に似合わず意思が強いよね、笑流はさ」


 水遊びにも飽きたので、川から上がる。優白に仕返しするつもりで、川から上がる直前に水面を蹴って水を浴びせてやろうとしたけれど、軽やかに避けられてしまった。しかも、嘲笑するように鼻を鳴らされた。

 躍起になるだけ無駄だと、優白をどうこうすることは諦めた私は湿った地面に腰を下ろす。足首まで濡れているから靴下を履く気になれず、両足を投げ出す。そんな私の隣に座った笑流はクラックビー玉のように光が乱反射した綺麗なあおい目で覗き込んでくる。私はこのあおい目に弱いのよね。


「……この回答では足りませんか?」

「ううん、いいよ。さっきの質問くらいなら答えてあげる」

「それ以上聞きたいって言ったら?」

「例えばどんなことを」

「鳥籠がどういう国か、とか」


 さっきの質問くらいなら答えると言ったけれど、それ以上掘り下げた質問に答えるとは言っていない。というかそれ、最初の私が鳥籠出身なのかという質問を肯定する前提じゃない。

 数十秒ほど考え、諦める。優白は笑流を裏切らないし、笑流は優白を無条件に信頼している。そんな優白から聞いたという時点でどうしようもないこと。

 深い溜め息を吐き出し、寝転がる。枝葉の隙間から見える青い空をゆっくり泳ぐ白い雲をぼんやりと眺める。そして、思い出す。


「争いや貧困とは無縁の、平和な国だよ」


 国の面積は小規模であり、人口は多すぎず少なすぎず。科学技術の発展が目覚ましいわけでもない。それでもテクノロリアの大国に名を連ねる。それが鳥籠。

 鳥籠が評価されているのは圧倒的な統治力と応用力。国民に階級はなく、皆平等に過ごしている。それに不満を抱く者はおらず、安寧秩序が保たれた国。そして、未知の発見には弱いが既知の応用には強い鳥籠からの支援を希望する国は後を絶たない。


「それは素敵なことですね!」

「素敵、ねえ」

「違うんですか?」


 笑流が首を傾げれば、柔らかな髪が動きに合わせて揺れる。サファイアブルーだったりアクアブルーだったりと髪色が斑になっていて、校舎裏に迷い込んだ三毛猫を思い出す。

 餌付けをしたわけでもないのにやたら擦り寄ってきたあの野良猫はどうなったんだっけ。

 ……ああ、そうだった。どうしたものかと私にしては珍しく対応策を講じることができなくて困り果てていたらあの物好きが笑いながら自分が飼うとか言い出したんだ。


「国民の思考放棄によって成り立つ平和ほど気持ち悪いものはないわよ」


 木漏れ日に透かしたペンダントには晴天の爽やかな青空が浮かんでいる。本物の空みたいと頬を緩めたところで身体を起こす。

 眉を落とした笑流の頭を撫でる。どこで付けてきたのやら、柔らかな髪に葉が埋もれているのを見つける。笑いながら取れば、笑流は頬を赤らめてあうあうと狼狽え始める。

 愛らしい反応を見せる笑流に癒されたところで本題を思い出す。笑流が最初に聞きたかったことは私の出身とかそういうものではなく、クラム・ハープへの当たりがきついのかということ。話をそちらに戻そう。


「だから駄目なの。自分は無力な人間だからと思考停止して外部の人間に助けてもらうのは」

「でも、人の力には限界があります」

「知恵を識者から得ることは正しいよ。でもそれを活用するのはその地に住む者じゃないと」

「…………。でも、権力が集中することでこういうことになるなら、よそ者が英雄になった方がいいんじゃないですか?」

「でも、よそ者の英雄は現在の問題が解決されたらその地を離れるのよ。次に生じた問題はどうやって解決するの?」

「それなら、知識をよそから得ることも同じことじゃないですか?」

「似ているけれど違う。と、言いたいところだけれど……笑流から見れば同じことなのかもしれないね」


 ここで一つ、私の好みの話をしよう。

 私は勇者が魔王を倒しに行く物語があまり好きではない。嫌いではないし、苦手でもないけれど、好きではない。些細なことかもしれないけれど、私的にこの違いは重要なので強調しておこう。

 あの手の物語は世界の滅亡とか国の存続とか大規模な危機が迫っているというのに勇者とか特別な存在が現れるのを待っていたり、聖女という存在に理想を押し付けたり、一人の存在に期待しすぎ。しかも勇者って大体一般市民だし、幼さと若さが混ざった少年とかだし。特別な力に頼るしかないという状況にしておきながら、選ばれし少年に偉そうに語る王様も。少年に期待して囃し立てる国民も。自分の国のことくらい自分でなんとかしろと思ってしまう。

 そうでなければ物語は始まらないし盛り上がらないというのは分かっているのだけれど、そういう非現実的かつ胸熱くなる物語だから面白いというのも分かっているのだけれども。少年少女の伸び代は物語に映えるものだからね。


「……そう考えると、私情を挟んでいないと言ったら嘘になるのかもしれない」

「それはクラムさんが可哀想ですよ」

「そうね。でも、私が前に出るのは悪手なのよね」

「それはイシアにとってですか? それとも萩野にとって?」

「どちらかというとイシアにとって、かな」


 人差し指で作ったバツを唇に当てれば、笑流は唇を尖らせる。しかし、意図を正しく汲み取ってそれ以上話を掘り下げることはしなかった。

 一生懸命考えながら話していた笑流は会話を終えるなり、優白の身体に倒れ込む。蜂蜜入りのホットミルクが飲みたくなるようか体毛に埋もれた顔はとても気持ち良さそう。羨ましい。私もやりたい。やろうとしたら吠えられそうなので諦めるしかないのだけれども。


「萩野はイシアのこれからを考えているんですねぇ」

「結果的にそうなっているだけ」

「ふふ。素直じゃない萩野のためにそういうことにしてあげましょう」


 鈴を転がしたような笑い声が心地好く、それを遮ってまで否定しようとは思わなかった。

 一通り笑った笑流は私との会話に満足したようで、優白にあれこれと報告し始める。笑流の傍らから片時も離れようとしない優白が聞いていないはずないのに、逐一報告する姿は微笑ましい。優白もそう思っているのか、そんな笑流を見つめる目はいつも以上に優しい気がする。狼の表情変化なんて細かくは分からないのでなんとなくの印象。


「ねえ、優白。きみがクライ・ハープだったらどうする?」


 和やかなやりとりを通して思い出すのはお前が宝を奪ったと、妻を失った絶望をぶつけてきた男の姿。

 事前にクラム・ハープから得ていた情報を加えれば、妻への思いがクライ・ハープの原動力になっているという考えに至る。

 それは私には想像もできないことで、当然共感もできない。けれど、優白なら分かるのではないだろうか。笑流の弾んだ声に相槌を打つ優白を見て、そう思った。

 私の質問に答えてはくれないだろう。そう思いながら問い掛けると、苺飴が食べたくなる深紅の目を私に向けた。珍しい反応に驚いていると、優白は何かを笑流に耳打ちする。

 優白の言葉を聞いた笑流は青ざめる。髪も目も見事に青一色ね。暢気なことを考えていると、笑流はやめて、だめ、と優白に何かを訴え始める。しかし、笑流が必死に止めようとしているにも関わらず、優白は答えを変えるつもりはないとでも言うようにそっぽ向いて伏せる。

 笑流は口篭る。困ったような、助けを求めるような顔をして私を見つめる。そんな顔をされたところで私は優白の言葉は理解できないのだからどうもしてあげられないと肩を竦める。しばらくの間、言葉に悩んでいた笑流は優白の言葉をオブラートに包むことを諦めたのだろう。笑流の頭では思いつかないであろう過激的な言葉を口にする。


「全員噛み殺すと言っています」

「想像以上に過激的な回答が返ってきて困惑している」

「でも優白のことだから、そのときの状況によりますよ。誰かの手によってならまだしも、病気のせいで亡くしたことまで人のせいにはしません」

「動くべきところが動かなかったという事実があったとしても?」

「十年前に流行った病気、萩野が何かしたらどうにかなったんですか? 結局原因も治し方も分からないまま、収まったと聞いています。それはわたしでも知っています」


 十年前、世界に広がった感染症はテクノロリアが排出した汚染物質が原因ではない。それを証明することはできたが、感染症の原因そのものは解明できなかった。ウイルスなのか細菌なのか、それともそれ以外の何かなのか。それすら分からなければ治療法を確立させることもできない。報告される症状から推測し、似たような疾患の治療法を試みるも効果が認められることはなかった。

 自然消滅という表現が正しいのだろうか。ある日を境に新規感染者の報告が途絶えた。そして、感染者は劇的に回復した。死亡者を多数出した恐ろしい感染症は最初からなかったかのように消え去った。

 笑流の言う通り、私が動いたからってどうにかなる案件ではなかった。けれど、それで済ませていい話かと言われると。


「私たちのせい、か」


 呟きと同時に、ジャージのポケットに忍ばせたデバイスが震える。狙ったようなタイミングなのでもしかしてと辺りを確認すると、川から少し離れているにも関わらずよく見える大木の枝に留まる兎の長い耳のような羽角を生やしたミミズクを見つけた。

 なんであんな遠くに、というのは考える必要もない。優白という大きな狼を避けているのだ。優白は狼の中でも知能が高い方だから襲うなんてことはしないだろうけれど……知らなければ当然の反応よね。

 震え続けるデバイスを手に取る。トーク画面を開くと、およそ三十秒毎に送られていたメッセージが止まる。コピーされた文章ならともかく、一文一文異なるものだから恐ろしい。


「罪滅ぼし、責務を全う、どっちも違うなあ」

「……萩野?」

「悪足掻き。うん、これだ」


 メッセージを一通り読み終えた私は遠くから視線を送り続けてくるミミズクを一瞥してから返信を打ち込む。

 やるべきこと、そのために準備すること、かかる期間。頭の中でパズルのように計画を組み立てる。これでもタスク管理は得意な方なのでさほど苦にはならない作業。


「問題はタイムリミットなのよね。ある程度は計算できるけれど、イレギュラー要素も組み込むと……」

「優白。萩野が自分の世界に入っちゃった」

「ところで笑流」

「あ、戻ってきた」

「歳の近い子と遊ぶことは苦手?」

「苦手というより、どうしたらいいか分かりません。周りにいなかったので」


 脈絡のない質問にも関わらず、笑流は素直に答えてくれる。そこにはいつも浮かべている愛らしい笑顔はなく、感傷に浸るように遠くを見つめていた。

 その表情さえなければ、私たちの中で笑流が最年少だからね。旅の道中で幼い子どもにはなかなか遭遇しないものね。そう言えたのに、きっと私たちと旅をするよりも前のことを指しているのだろうなと考えてしまうじゃない。

 分かりやすい笑流に小さく溜め息を吐き、ほんのり桜色に染まった白い頬を軽く摘む。その刺激で我に返った笑流は人差し指で作ったバツを唇に当てる。

 私はそれ以上会話を掘り下げることをせず、思考を深めることもせず。計画を組み立てている間に思いついたことを提案する。


「じゃあ、シーナたちと遊んでみたら?」

「……彼らは萩野たちを襲いました」

「生きるためにね」

「だとしても、わたしの大切な人を傷つけようとしたことに変わりはありません」

「無知のまま死にたくないのでしょう?」

「……その言い方はずるい」


 笑流にしては珍しい、拒絶的な言葉を口にする。述べた理由も笑流らしいものだけれど、合わない視線がそれだけではないことを語っている。笑流は身を守るためにも嘘の吐き方を学んだ方がいいと思う。

 ということを建前に、最短でもあと二週間はここに滞在することを考えてシーナたちと交流することを提案する。

 二週間、決して短くない期間を同じ空間で過ごせば嫌でも関わる機会が訪れる。特にアミィとキィが歳の近い同性として声をかけるタイミングを見計らう姿をよく見るからね。あの二人に捕まってしまえば、笑流は逃げられないと思う。

 それを聞いた笑流は不貞腐れた顔で優白の体毛に埋もれていく。そんな笑流を鼻先でつつきながら、優白は私を睨む。その視線は笑流が嫌がることを知って言うのか、貴様が止めろとでも言いたげだが無視。だって、私は優白の言葉を理解できないもの。


「はあ。私も仕事しないとなあ」


 面倒事ばかり増えているこの感じ、非常に嫌だ。結局、お目当てのソフトクリームは食べられないし、とんだ災難よね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る