第6話 全てを捨てる勇気こそ、未来の希望

●文明の基盤は整った。

何と表現して良いのか、無力感でしょうか。自分達はいったい何をしてきたのか、圧倒的な科学技術の前には、、、何と言うか、この任務ってそもそも何だったのか、、、もう頭がグチャグチャで放心状態。


突然、通信が入った。カランは船長の方を見て、

「船長、お電話が入ってます。」

船長はスピーカーモードで受信ボタンを押した。

「こんにちわ、マリアですが、覚えておられます?」

3人はビックリ仰天!マリアさんが近くに来てるんだ!

「マリアさん、近くに来られてるんですか?」

「いいえ、あなた方の尺度だと10光年離れています。」

そんなバカな、それだと通信に10年掛かるのに、何で時間差が無いのか、カランが尋ねた。

「カランさん。説明は出来ますが、それよりも重大なお話が有りますので、それは後でも宜しいでしょうか?」

「は、はい。後でイイです。」

通信が可能ならば、きっとホログラムで現れるんだろうな。、、、やっぱり。

「そちらにお邪魔しても宜しいでしょうか。」


前回と同じマリアが現れた。

「お久しぶりです、皆さんお元気そうで良かったです。」

船長は、船長としての挨拶をした。

「ようこそ、私の船に。」


我々としては尋ねたい事が山ほど有るが、先にマリアさんの話を聴いてからにしよう。

「前回あなた方の任務は非常に重要だと言った事を覚えてますでしょうか。私達の仲間は皆、あなた方のご活躍は極めて素晴らしいと評価しております。で、この長期の活動を何故に私達が知っているのか、疑問に思われるでしょうが、まあ、長い説明になるので後回しにさせて下さい。今、あなた方はは虫類人に完敗したと思っておられるでしょうが、それは違います。」

3人共質問は山ほどあるが、まず船長が質問してみた。

「は虫類人は人間を完成させた様に見えるが、我々はそのレベルに達していないし、今後出来るという自信も今はないですね。また、遠い将来に起こると予想される文明衝突はサル同士だと思ってたが、鉄の武器を使う人間相手では太刀打ち出来ないと思うのですが。」

「ミカエルさん、今は確かにその様にしか思えないでしょう。当然だと思いますが、未来は必ず開けます。」

3人とも全く意味が解らない。次にカランが質問してみた。

「未来が開けるんですか?それは我々の力で、ですか?」

「カランさん、凄く良い質問です。その通りです、あなた方にはその能力が十分に有りますよ。」

ええ~~!益々解らない。キャサリンも質問してみた。

「それはきっと、自分達が気付いていない潜在能力の様なものですか?」

「キャサリンさん、その通りです。あなた方は有機体の身体を捨てて現在のロボットになっていますね。有機体であった時の記憶や性格など、ほぼ全てを見事に移植されましたが、そのテクノロジーの凄さには、実は我々の仲間も皆驚いています。それについては実は我々のテクノロジーを越えています。我々は魂を全く別の方法で扱っているのです。」


予想もしていなかった「魂」という言葉が出てきた。そう言えば我々の魂は継承されているのかどうか、なんて考えた事も無い。しかし、長い年月を振り返ってみて、まるで魂が有るかの如く、全く自然に行動してきた。マリアは3人の思考を読んで話を続けた。

「魂が継承されているのかどうか、いままで気にもせずに活動してこられましたね。実は、魂はあなた方のメインコンピュータには保存されていません。別のところにあります。」

ええ~~!3人とも椅子から転げ落ちそうなショック。昔TVで見たヨッシーの新喜劇が頭を過った。マリアは3人を見て笑っている。

「今日お伝えしたかったのはその事です。あなた方の魂は健在です。つまり未来を切り開く能力が健在だという事です。この件について3人で話合って下さいね。今日はこれで失礼いたします。また近々ご連絡いたします。」

そう言うとマリアは突然消えた。


●魂って何?

パンドラの箱が開いたとはこういう事なのか。今まで全く意識してなかった「魂」の話。それが健在であって、別の場所に有る?キツネにつままれたか?何かコンピュータのエラーかな?カランはそう考えた。

「これって現実なのかなあ、コンピュータの寿命なのかなあ。」

「カラン、何か自分って何か分からなくなったよ。」

「キャサリン、私も同じくだよ。まあ、こういう時は頭を柔らかくして、飲みながら話そうか。」

こういう話題は静かな場所よりも、わいわいガヤガヤの方がベターだな。また大衆居酒屋ISARIBI。


「船長、何か凄いショックなんですけど、」

「そうだなあ、キャサリン、私も同じだよ。」

「ホンマ、落ち込むわ~。」

テーブルにビールが運ばれて来た。いつもの様にお疲れさん、乾杯~。次に小エビの天ぷらが運ばれて来た、船長の大好物。パリパリの食感が冷たいビールに良く合う。

「マリアの指摘は凄いと思うなあ、確かに魂については、ロボットになってから一度も考えた事無いね。」

小エビの天ぷらはキャサリンも大好き。

「魂って、自分が自分だと認識する事なのかなあ、だったら、それはずっと有ったね。」

「キャサリンの言う通り、ずっと自分を認識してたわなあ。」

「なるほど、魂は有るという事だね。何処に有るのか分からないだけだな。」

「でも、魂って常に肉体と同居してると思うんだけど、他のところに有るってどういう意味?」

「キャサリン、きっとクラウドやないの。」

「なるほど、カラン君らしい考えだね。端末は有機体でもロボットでも、どちらでもOKか。」

「そう考えれば謎が解けると思いません?船長。」

「ふむふむ、魂ってクラウドなんだ。」


ロボットになって長いが、魂と肉体に付いて語り合ったのも初めての事。実は3人とも完全に諦めていた。記憶とAIによる行動パターン&思考パターン。自分達はそれによって行動しているのだと。しかし、魂は消滅していないという事ならば、マリアが言った、未来は必ず開けるという事は有り得そうな気はする。我々に魂が有るのなら、サル達とテレパシーか何かで会話が出来るかも?カランはそう考えた。

「覚えてるかな、この地球で最初に見つけたラプトル。あの目は間違いなく我々の存在を認識していたと思うんやけど、今のサル達は全く気付いていない様に見えるわわなあ。」

「なるほど、カラン君の言いたい事は解る。ラプトルには魂が有ったから我々に気付き意識していた。」

「ああ、そういう事かあ、こっちは気付いてなかったけどラプトルは解っていた。、、、それはイイんだけど、サル達に魂がが無かったらどうするの?」

「そやなあ、その前にテレパシーの使い方分からんし。」


マリアさんに言われて魂に付いて話合ってるが、それに付いては殆ど知識も無いしデータも無い。でも、未来を開く為には非常に重要だとは何となく感じる。キャサリンはアフリカに突然現れた人間らしき種が気になっている。勿論、モスキートロボットを使えば血液検査は出来るが、今は電池切れなので、補給用のロボットを作ってまた送らなければ。。


「は虫類人はサルから人間を作ったのよね。どうやったか分からないけど、で、その人間達に魂って有るのかなあ?」

「キャサリン、電池交換したらイグアナを進める事は出来るけど、完全にヤツらの陣地内なので、危険やわなあ。敵意が有ると思われたら、一発でやられるで。」

「カラン、無理しなくってイイよ。血液調べても魂は解らないいと思うし。」

「そやなあ、きっと彼らの行動を監視する方が重要かも。」

「確かにカラン君の言う通りだと思う。これからは彼らの行動を重視しよう。心理学的な視点かな。」


この後は、やはりアフリカでの人間出現というショッキングな話題が中心となって盛り上がったが、マリアさんはきっとまた現れるだろうから、我々としては、引き続き「ウチのサル」を観察して行こう。


●再びマリアが現れた。

「こんにちわ皆さん、魂についてディスカッションされましたでしょうか?」

3人は顔を見合わせて、誰が答えるの?やっぱり船長。

「結論から言いますと、我々には知識も情報も無いので、何となく漠然とした話です。」

「そうなんですか。私達とあなた方が住む世界とは違うと言った方が解り易いかも知れませんが、決して誤解はしないで下さい。同じ宇宙に住んでいますし、それは唯一の創造主である神によって創られた宇宙に住んで居る同じ人間なのです。」

宇宙はとてつもなく広い。イヤという程分かっている。唯一の創造主によって創られた事も知っている。で、マリアは、今同じ事を言ってる。つまり、そういう事なのだ。キャサリンはハッと気付いて質問した。

「人間とは魂を宿す生物。そうなんですか?」

「キャサリンさん。ほぼ正解です。その他の動物にも魂は有りますが、レベルの差が有るだけです。」

「マリアさん、とても良く分かります。なるほど、そうだったんだ。」


突然、椅子が出現し、3人はビックリした。

「驚かせてすみません。今日のお話はあなた方と同じ目線の高さが良いと思いますので。椅子に座ります。あなた方が一番気になっている事は、突然人間が出現した事でしょう。これは、は虫類人の遺伝子とサルの遺伝子を結合させた種です。彼らの科学技術は極めて高度に進化していて、私達も追いつけない程です。」

キャサリンが質問した。

「サルとは別の種なんですか?」

「はい、そうです。全く別の種で、間違いなく人間です。」

「彼らは自分達のDNAをサル達のDNAに結合させて新たな種、人間を作ったのです。」

うあ~、これは勝ち目ないなあ。そんな技術は全く無い。マリアは続けた。

「私達の常識、、、と言ってもよく分からないでしょうが、彼らは虫類人のしている事は謎なのです。私達は軍隊ですが、彼らを敵とは思っていません。どの種族とも敵対していないし、武力を使う意思も見えないです。彼らは創造主の意志に反した行為を黙々と実行しています。創造主に反する行為を、ただただ実行する種族なのです。」


この宇宙には進化した多くの種族が存在し、戦争中である。それは何となく理解出来るが、関係無い種族も居る事には驚き。で、自分達の地球だと思っている、まさにこの地球でその種族が活動している。マリアは3人の思考を読んで答えた。

「あのは虫類人のテクノロジーは、理解不能なのです。今回も見事に遺伝子操作しましたが、過去にも行ってます。目的は分かってます。人間を奴隷にしてゴールドを採掘させるのです。しかし、我々には全く理解が出来ません。ゴールドにいったい何の価値が有るのか?」

キャサリンは遺伝子操作が気になって質問した。

「は虫類人は他の惑星でも同じ様な事をしてるんですか。」

「そうです。彼らはそうやって人間を作っています。」


その考え方は、我々と同じ。それの何処が悪いのか、よく分からない。カランも質問した。

「我々も人間を作ろうとしてこれまで活動してきましたが、それは良くない事なんでしょうか?」

「カランさん、人間を作る事は良いことですが、問題は方法です。」

キャサリンは遺伝子操作はいっぱいやって来たし、それが良くないと言われると、、、

「私も多数行って来ましたが、ダメなんですか?」

「キャサリンさん、それによって異なる種が出来ましたか?出来なかったですよね。現在この地球には多数の異なる種が居ますが、何故だと思われます?」

「それは創造主が作ったんだと思ってます。」

「ですね、その通りですよ。もしかして、神は自分に似せて人間を作った、という話は聞いた事ないでしょうか?」

3人ともその話は知っている。特に船長は。

「その話なら、故郷の地球では殆ど誰もが信じてました。」

カランは突然理解出来た、というか理解出来た様な気になった。

「やっぱりそこなんや。以前のお話の魂という事は、そこに繋がると思いますが。」

「ははは、やっぱりカランさん。神から可愛がられてる人ですね。」

「ええ~、どういう事です?」

「失礼、あなた方3人も同じですが、カランさんは特に正直な方ですね。他の人から変人扱いされても気にしない明るい性格。好きですよ(笑)」


マリアはは虫類人について、真剣に語り始めた。

「人間とは、簡単に言えば入れ物であって、そこに魂が宿って完成するのですが、は虫類人達は、その入れ物を作ると同時に、自分達の魂を神の許可無く入れるのです。勿論、宇宙の法則に違反していると思えますが、誰もが関わりたく無いと思ってます。我々が無責任と言えばそうかも知れませんが、神は全く答えてくれません。善と悪という様な基準では何とも判断出来ないという訳なのです。」

なるほど、とも思えるが、何か全然異次元の話にも思える。質問も思いつかない。

「ごめんなさいね、難しい話をしてしまって。今日はここまでにします。また来ますね。」

そう言うと、毎度の様に突然消えた。


さて、今日はどうするかな。キャサリンが手を挙げた。

「はい、ハワイのホテル2泊3日で予約したよ(笑)」

船長は以前の話を思い出した。

「つまり、カランが作った架空のホテルではないのかな(笑)」

「はい、そうで~す。」



●またマリアが現れた。

「こんにちわ。いつも突然ですみません。あなた方のサル達、皆元気に活動してますね。東西南北にどんどん広がっています。素晴らしいです。」

実は、今日は重大な話を伝える為に来た。マリアも人間であって十分に感情は有る。3人の純真な目を見て、少し躊躇する気持ちもある。この計画を受け容れて貰えるのかどうか、高度に進化したマリアであっても不安である。


僅かながら無言の時間が有ったが、マリアはハッキリと3人のテレパシーを受け取った。「覚悟してます。」実は、これは少し未来に起こる事であるが、マリアはそれを確実に受取り、理解した。つまり、このまま話を続けても良い、という確証を得た訳である。

「魂の存在について話しました。次に入れ物である肉体について話しました。今日は具体的な話をする為に来ました。現在、この地球と交信可能な魂は3つのみです。」

カランはビクッとした。話を理解した訳では無いが、何となく。

「3つの魂って、我々3人ですか?」

「カランさん、そうです。他には有りません。アフリカの人間は創造主の承認を得ていないので、母なる地球と交信する事は出来ません。」

ええ~っ、マリアさん、いったい何を言ってる!キャサリンが噛みついた。

「私達の魂を使うというプランなんですか?」

「そうです。それ以外に道は有りません。」

船長も実は動揺しているが、立場上冷静に尋ねた。

「我々3人の魂をサル達に移植するというお話に聞こえますが、そういう事ですか?」

「その通りです。」


ビックリ仰天、この先どうなるんだろう。まあ、何となく解る気もするが、ええっ!そういう事?

「今日は、本当に言いづらい事を伝えに来ました。あなた方3人は、サルの受精卵に入って欲しいのです。あなた方はサルの子供として生まれ。これまでの記憶はほぼ全て失います。故郷の地球や、この宇宙船、バーチャルタウン、全て消えます。サルとして生まれ、何のテククノロジーも有りません。それがサルから人間という種に変化する方法であって、神が承認する方法なのです。」


この話を聞きながら色んな事がグルグル頭の中で回転する。簡単に言えば、今まで自分が持っていた物を全て捨ててゼロからスタートするという意味です、3人のショックは言葉にならない。理解したつもりが、全てを捨てる事には、そう簡単には承認出来ない。何か他にも方法が有るのではないだろうか、必死で考えてしまう。


ロボットなのに合理的な話を素直に受け容れないって、やっぱり人間なんだ。ロボットなので涙は出ないけれど、キャサリンは泣いている。マリアにはその気持ちはハッキリ解ってるし、船長もカランも同様である。キャサリンは小さな声でマリアに尋ねた。

「私達3人の友情も消えるのですね。」

「はい。」

3人は長い宇宙の旅の間に肉体が滅びて消え、その後ロボットになる事を受け容れた、極めて勇気のある選ばれしメンバーである。だからこそ、お互いの信頼関係、友情は絶対と思える程に強い。これを捨てるのは耐えがたい。3人とも同じ気持ちであるが、マリアは当然理解している。

「数千年後か、数万年後か分かりませんが、あなた方の子孫の誰かが必ず思い出します。その時には、テレパシーによって、あなた方3人は再会出来るでしょう。今は気休めにしか聞こえないと思いますが、、、」


現在の状況と違って、想像も出来ない、途方もない長い年月。今すぐに決断しなくても良い。マリアはいつもの様に突然消えた。3人は考え込んでいる、しばらくは会話も無く、動けない程のショックである。バーチャルタウンで酒を飲む気にもなれない。


しばらくして船長が席を立って格納戸に向かった。カランとキャサリンも無言で続いた。充電ユニットに身体を合わせた後、いつもならバーチャルタウンがスリープモードにするが、今日は覚醒したまま直立している。受け容れる以外の道は無い。当然分かっている。ならば、それを邪魔するのは?それも解っている、論理的には。長い時間覚醒モードランプが点灯していたが、船長、カラン、キャサリンの順でスリープモードになった。



●それから1年後の起床。

3人はいつもの様に席に着いたが、今までとは全く違う。言葉を交わさなくても相手の考えが完全に読める。しかも3人とも、それを不思議だとも思わない。実は3人が寝ている間に、マリアはそれぞれの魂を移植していた。マリアの種族は、こうやって神のお手伝いをする役目なのである。


人間の魂が入る事でサル達のDNAは徐々に変化して行き、その過程で多くの種に分岐していく。これこそが創造主である神による、素晴らしく美しい計画である。人間の魂を宿したサルが生まれ、成長して、いつかは年老いて死んで行く。その時魂は肉体を離れるが、その子孫に必ず戻って来る。これを何十何百と繰り返していけばDNAが徐々に変化し人間の形を形成する様にになってくるのである。


その後は主に知能がが発達し、以前のサル達とは異なる本格的な文明が栄えるだろう。そして、この頃にはは虫類人が創った人間達との接触が始まっているはずであるが、何も策を講じなければ、あっという間に征服され、絶滅するかも知れない、マリアは過去に何度も見てきているので、それだけは避けたいと思っている。だから一つだけ手助けする事にした。


それは、ミカエル・キナムという極めて優れた人格、同時に神への信仰心が厚い魂を、アフリカのサル達に送り込む事である。既に神を信じない人間達が活動しているその地域へ。マリアは確信している。いつか必ずこの地から偉大な指導者が現れ、人々を神への信仰に導く。


その頃には南北アメリカにも偉大な指導者が現れて文明を築くだろう。しかし、マリアには南北アメリカがは虫類系の人間達によって征服され滅ぼされるビジョンが薄っすらと見えている。これは阻止出来ない。残念ながらこれ以上この地球に関与する事は許されないのである。願わくば出来る限り北に逃げて欲しい。ほぼ陸続きの先には安全な小さな島があるので、そこで文明を築いて欲しい。マリアはそれを真剣に願っている。


マリアは解っているが、これを3人に説明しても意味はない。マリアはいつもの様に3人の前に現れたが、今日は言葉での会話ではない。3人それぞれの目をしっかりと見ながら魂で伝えた。

「キャサリンさんは南アメリカ。カランさんは北アメリカ。そしてミカエルさんはアフリカ。あなた方が有機体からロボットに変身された素晴らしいテクノロジーを活用させて頂きます。今回は逆にロボットから有機体になって下さい。それでは皆さんスタンバイお願いします。」

3人は再び格納戸に向かった。


3人がメインコンピュータに接続されている事を確認して、マリアはプログラムを起動した。以前に有機体からロボットに変身した時とは異なり。今回のプロセスは一瞬である。格納戸の全てのインジケーターが消灯した。

「ミカエルさん、カランさん、キャサリンさん。さようなら。私達はいつもあなた方を見守っていますよ。そして遠い未来に、また4人で再会出来る事を楽しみにしてます。その日までこの船は大切にお預かりしておきますね。」


宇宙の法則は常に創造と破壊の繰り返し。ミカエル、カラン、キャサリンの3人は、これから創造のサイクルに入った。そして今日3人は、故郷の地球から与えられた任務をめでたく完了したのである。勇敢で賢く、誠実で愛とユーモアに満ちたつ3つの魂が、この地球に根付いた。遠い未来にはマリアと同じ仕事、神のお手伝いをする事になる。遠い未来であるが、マリアはこの4人で働く事を楽しみにしている。そう。希望を持つ事こそが人間が生きる意味なのである。



ーーーーー  完  ーーーーー

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遙かなる時を超えた開拓者〜神の美しき計画〜 @noopy0620

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