第31話 私、自分の身が可愛いもの
「ルーナお嬢様は、気付いていなかったのですか?ま、私ほどになりますと、完璧に人間の中で生活できるくらい溶け込んで馴染むことができますが。この姿も人間の世界に溶け込むために、地味にしてみました」
「・・・ちょ、ちょっと待って」
突然のことに驚きすぎてかんがえられないわ。ちょっと、ソファーに戻るわ。
落ち着くのよ、私!ミラが上級精霊?!人間と変わらない姿?!どういうことなの!!
「ミラも座って。腰を据えて話合うわよ」
ミラもソファーに座らせたわ。
溶け込むためって、そりゃ顔もスタイルも普通なのよ、ミラって。髪や瞳の色だって、地味な暗めの色だもの。私と同じ、ベスト オブ ザ モブという感じよ。皆だって、ミラのこと存在感ないけど良く働いてくれるって・・・。
「あ!でも、ミラのこと皆見えてるわよ。普通の人には精霊は見えないのよね?」
「フッ」
鼻で笑われたわ!・・・私、変なこと言ったかしら?
「上級精霊でも、私は上位にいます。そこら辺にいる精霊と一緒にしてほしくありません」
「あ、はい・・・」
上級精霊にも力の幅があるのね・・・。
でも、やられたわね。これじゃ、誰も精霊だって気付かないわよ。
「ミラが精霊だということは、皆知っているのかしら?」
「いいえ」
「え?じゃ、ミラは誰とも契約してないの?」
「してますよ」
「え!誰としてるのよ?!」
思わずソファーから立ち上がってしまったわ。
「ルーナお嬢様とですが」
「え?私には契約した覚えないわよ」
契約?魔力もあげてないし、名付けもしてないわよね。
「初対面の時、『これから、あなた様にお使えさせていただきますので、お世話になります』と申しましたが」
「ちょっと待って、それ挨拶よね?それに、精霊と契約する時は、名前を付けるのじゃなかったのかしら?あと、魔力もあげてないわ」
「それは上書きによって名付けは定着しましたので。魔力も握手した時にいただきました」
「・・・もっと、詳しくお願いするわ」
ミラがわざとらしく、ため息を吐いたわ・・・。
「仕方ありませんね。上級精霊には、元々名前を持っている者がいます。契約者が契約時に、その名前を発することによって、名付けの上書きができるのですよ。私くらいになりますと、契約者の魔力の質が良ければ少々の量で契約できますので」
あ、そう言えば、自己紹介で握手した時に名前を聞いて、「ミラね、よろしくね」と言った覚えがあるわ・・・。
脱力して、今度は力なくソファーに体を預けたわ。
彼女のこれまでの行いを振り替えると、ミラが精霊だと言われると納得できるわ。私がどこに居るのか直ぐに確実にどんなに遠くても察知された時なんて、念話で事細かくグチグチと言われたわ。身体強化した大人の男の人が数人で持てない重い物でも、軽々と持って運んでいたわよね。ミラが屋敷で仕事場をしているのを何度も確認してから、瞬間移動でお忍びで訪れた隣町に、居るはずのない彼女が後ろに立っていた時なんて怖かったわ・・・そう考えてみたら人間離れしてるわよね。
「・・・そうなのね。で、ミラは、なんの精霊なのかしら?」
「そうですね、強いて言うならば万能精霊でしょうか?」
「ん?ばん、のう?・・・万能?」
聞いたことないネーミングの精霊ね。万能って、全てに効きめがあるとか、何にでも役立つとか、全てに優れているとか、何でもできるとかよね・・・。
「えぇ、全属性は扱えますので」
ぜ、全属性ーーー!?
「ば、万能精霊は、全属性が扱える代わりに、単属性の精霊ほど力がとしつしてないとか・・・」
「フッ、あり得ないですね。私は全てがとしつしています」
器用貧乏みたいな感じだと思ったけど違かったわ!
・・・こ、これは隠さなければならない案件では?!
イヤ、でもよ、ミラがそれを自称しているだけかもしれないわね!
「・・・そ、その万能精霊は、この世界にどのくらい居るのかしら?」
「今は、私を含めて3体ですね」
精霊って体で数えるのね・・・。
それにしても、先程からひよっこ精霊3体が静かだわ。
チラリと彼らが居る方に目をやると、3体がプルプル震えながら塊になっていたわ。精霊になって、卓球のボールくらいの大きさだったのが、大福くらいになったのだけども、今は3体が塊になって特大サイズの大福になっているわ。
「あなたたち、どうしたの?そんな塊になって」
私が声をかけたら、ビクッと大きく揺れたわ。
『ルーナおまえ、良く平気で居られるな・・・』
『俺、もう限界』
『ぴりぴり、ぞくぞくくるの~。変な感じなの~』
3体がこそこそっと小声で言ってくるわ。
「え?何が平気なのかしら?」
『そいつは、上級精霊どころじゃないぞ。精霊王クラスだ』
『うん、会ったことないけど』
『おうさまのおーら、すっごいの~』
「え?・・・えっ!?えぇ!?」
お、う・・・現実逃避したいわっ。自称じゃなかったのね~!!
「ミラ、精霊王クラスって本当のことなの?」
「ま、私たち3体より強い精霊はいませんので、そうとも言えますね。精霊王という名称は、下級精霊たちが勝手に言っていることですが」
驚きすぎて麻痺しそうだわ。
もう、嫌だわ~。これは外に出せない話だわ~。
「そうなのね~。じゃ、そのことは、他の人には秘密ということで良いかしら?」
「私はかまいませんよ。あなたの魔力を
いただけるのなら、バレてもバレなくても、私にはなんら影響がありませんから」
それだけ強いということですか!?聖獣クラスなのかしら?!これは墓場まで案件ね!
『やっぱ、ルーナは強いんだな~。こんな凄い精霊と契約してて。オレらと契約して良かったのか?』
『なんか、申し訳ない』
『え?るーなとけいやくだめだったの?』
「何言っているの。あなたたちは可愛い要員だから、全然OKよ」
何故そんなこと思うのかしら?強い、凄い、レア、ユニーク、希少、なんて全力で避けるべき案件よ!私は、モブなの!!
でも今、ミラが精霊王クラスという避けられなかった案件があるわ!
「問題ありませんよ。私が鍛えますから」
さらりとミラが言ったわ。そして、彼らは更に震え上がったわ。
「・・・そうね、それはミラに任せるわ」
3体が、こちらをバッと勢い良く振り向くわ。私は、それに顔を背けるわ。
ごめんなさい、私もミラに逆らうことは出来ないの・・・。
『裏切り者!可愛い要員だから、全然OKだって言っただろっ』
『見捨てるのか?』
『かなしい~。るーな、いいやつだとおもってたのに』
3体が、ピーピーと羽根をバタつかせて抗議してくるわ。
でも私は、それを耳に入れず、心の中で手を合わせたわ。骨は拾うわね。南無~。
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