第29話 癒しを求めて来たのだけれども・・・
今日は一人で、湖畔でピクニックよ。貴族らしいでしょ?
はぁ~。みんなの圧といろんな事がありすぎて・・・いや、イベントらしきものが無さすぎて、精神的に疲れはててしまったのよ~。
護衛?居ないわよ。瞬間移動の魔法で来たんだもの。大丈夫よ、この辺りは弱い魔物しかいないもの。癒しを求めて来たのに、ずっと見張られるなんて逆に苦痛だわ。
テッテケテッテ~テ~と、収納魔法から下に敷くシートと、軽食を取り出して並べていくわ。
たったら~ん、たららら~ん、ふっふふ~ん。
「はぁ~」
マイナスイオン、最高だわ!このピピピピッと言う、小鳥の鳴き声も癒されるわ~。
『なぁ』
『なんだよ。おまえから話しかけるなんて珍しいな』
『なになに、どうしたの?』
『人間が居るんだけど』
『何言ってんだよ。こんな所に、人間なんて居るわけないだろ』
『え、そこにいるよ~』
『な?』
『はぁ~なんで居るんだよ!魔物がじゃんじゃん出てくる森の中だぞ』
なんか、変な声が聞こえてくるわ・・・。
キョロキョロと辺りを見渡すけど、居るのは小鳥くらいで誰も居ないわ。
『こいつ、オレらの声が聞こえるっぽいぞ』
『うん、ぽいな』
『みたいだね~』
『な~、おまえ!オレらの声が聞こえるのか?』
えぇ、ま~、聞こえるのは聞こえるけど、どこから聞こえるのか・・・。
『後ろ、後ろだ。後ろにいるだろ!気付けよ』
クルッと後ろを振り向くが、やはり誰も居ないわ。
『目線を上に上げてみろよ。もっと、上だ。上!そうそう、もっと』
上?・・・。
『ストップ!』
『うん、そこ』
『あ!めがあったね~』
ストップって、真っ白な小鳥が3羽居るだけよ?まん丸ふわふわで、シマエナガに似た鳥が寄り添うように、横1列に並んでいるわ。押しくらまんじゅうしているみたいで、可愛いのよ~。
「鳥がいるだけよね・・・」
『見た目は鳥だけど、鳥じゃないからな!』
『鳥では無いな』
『とりじゃないもん』
「え?」
鳥じゃない?この子たちから声が聞こえてくるの?鳥にしか、見えないのだけど・・・。
でも、この世界の動物って、喋られるのね~。あっ、この子たち、自分のことを鳥じゃないと言っているのよね。ということは、魔物の一種かしら?
彼らは、パタパタパタと舞い降りてきて、シートの上に乗り、私の目の前を陣取ったわ。卓球ボールくらいの大きさね。つぶらな瞳が、また可愛いわ~。
『オレたちは、なんと妖精だ!驚いただろう?』
『妖精は見たことあるか?』
『びっくりした?』
へ~、そうなのね~。妖精なのね~。だから、可愛いのね~。うんうん、驚いたわ~。
「えぇ、驚いたわ~」
『なんか、驚いた感じには見えないな。本当に驚いたのか?』
『ん~、驚きすぎたとか?』
『あ!そうだね。おどろきすぎて、そんなかんじにがなっちゃったんだ~』
「え?そうそう、驚きすぎたのよ」
驚いたのは驚いたけど、声が出ない程ではなかったわ。ごめんなさい。でも、こんな小さな子に言えないわね。
『そうなのか?で、人間。おまえは、なんでここに居るんだ?』
『ここら辺で、人間は見かけない』
『そうだよ!まものいっぱいだよ。けがしたらたいへんだよ』
『魔物に遭遇したら、怪我じゃすまないだろ!下手したら、死ぬんだぞ』
『魔物は怖いぞ』
『しぬ?かわそうだよ~』
3羽ともぎゅうぎゅうと寄り添い、1匹だけ居るような感じになって、可愛らしいのだけど・・・すっごく、喋るわね。
私が話しかける隙もないわ・・・。
『いや、待て。ここに居るってことは、もしかして、こいつは物凄く強いんじゃないか?』
『強いヤツ探してた』
『すご~い!つよいの~?』
『オレたちが森を出て、人間の所まで行くのは危ないよな?だったら、こいつと契約するのはどうだ?』
契約?ナニソレ?話がどんどん進んで行くけど、私の意見はとかは必要ないの?
『問題ないな』
『いいとおもう!けいやっく!けいやっく!』
え?何、決まっちゃったの?
「はい!」
どんどん話が進む前にと、ビシッと右手を上げて発言権を求めたわ。
『どうした、人間?手なんて上げて、聞きたいことでもあるのか?オレたちと契約するのに不満でもあるのか?』
『なんだ?契約嫌か?』
『なになに?どうしたの?けいやく、いやなの~?かなしい~』
「そうじゃないのよ。私は、あなたたちの話の内容が、今一分かっていないのだけど、その契約って何かしら?」
話が意味分からない方向に行って、急に私と契約すると言われても、何の契約なのか分からないもの。契約にもいろいろあるじゃない?
『契約を知らないのか?何って言われてもな?契約は契約だしな。強い人間と契約すると、良いことがあるってくらいしか、聞いてないからな~。それと、契約すると交換条件として、人間から魔力を貰えて、変わりに力を貸てあげるって言っていたぞ。つまり、仲間になるんだ!』
『魔力ほしいな。仲間もほしいな』
『まりょくとちから、こうかんこー!なかま、うれしい~!』
ごめんなさい、契約自体は分かっているの。ただ、何の契約か知りたかっただけなのよ~。でもその契約って、『エレセイ』の聖獣契約の設定と同じみたいよね。魔力をあげて力を貸してもらうけど、主従関係や上下関係のない対等の仲間っていうものなのよね・・・。
まぁ、聖獣じゃないし、可愛いし、自称妖精だけど、賑やかになると思うから、契約しちゃっても良いわよね。ワクワクしちゃうわ~。
「じゃ、その契約をお願いするわ。どうすれば良いのかしら?」
『おぉ!してくれるのか!?契約を!じゃ、早速オレたちに魔力を分け与えながら、名前を付けてくれ。カッコいいのを頼むぞ』
『覚えやすい名前が良いな』
『ぼく、かわいいのがいい~!』
「名前を付けるのね。ちょっと待って、今考えるわ」
かっこ良くて、覚えやすくて、可愛い・・・難しいわね。
ん~。ペットを飼いたくて、調べた記憶があるのよね。フランス語で、良いのあったのよ~。
確か、太陽がソレイユで、月はリュンヌで、海は三つの言い方があって、メールとオセアンとラメールだったわよね。う~ん。一番お喋りな子がイユで、クールな感じの子がリュンで、天然っぽい子がラル、なんてどうかしら。
「決まったわよ、誰からやっていきましょうか?」
「オレからだ!カッコいい名前、考えてくれたんだろうな?」
「うんうん、大丈夫よ。じゃ、魔力を流していくわね」
小鳥の額?に人差し指を当てて、魔力を流していくわ。でも、これってどのくらい魔力をあげて良いのかしら?もう良いと言うまで、やってみましょう。なんか、目を閉じて気持ち良さそうだわ。
・・・どのくらいたったかしら、結構魔力をあげているのに、終わりって言わないわね。
「ねぇ?この魔力をあげるのは、いつまでなの?」
『ん?あぁ、わりーな。気持ち良くてうつらうつらしてた』
『だと、思った』
『そうだよね~。きもちよさそうだなーっておもったもん』
さっきまでお喋り凄かったのに、なんか静かだなと思ったのよ~。
「じゃ、名前を付けるわ。イユなんてどうかしら?」
『イユ!うん、気に入った!!』
おぉ!一瞬キラキラと光ったわ!!契約終了という意味かしらね。
そして、イユが嬉しそうに羽を広げて、パタパタしているの。
「もう、魔力は終わりで良いのね?」
『もっと、やってほしいが、魔力が無くなったら大変だからな』
「魔力は、まだまだあるから大丈夫よ」
そう言って、魔力を流すのを止めたわ。
『あんだけ魔力使ったのにか!?』
『凄いな、おまえ』
『すご~い!ぼくも、いゆと同じくらい魔力ほしい!』
「えぇ、良いわよ」
3羽とも驚いてるわね。体の小さなあなたたちよりは、あるかもしれないわね。あら?イユの体が、一回り大きくなったみたい。彼らが並んでいると分かりやすいわ。
「イユ、なんか体が大きくなっているわよ」
そう私に言われたイユが、自分の体を見て、他の小鳥2羽を見るわ。
『本当だ!大きくなっているぞ!魔力のお陰か!?』
『本当だな、良いな』
『いいな~。いいな~。いゆ、いいな~』
「大丈夫よ。二人?にも同じくらい魔力をあげるからね」
そのあと言った通り2羽に、同じくらい魔力をあげて、リュンと名前を付けて光って、また同じくらい魔力をあげて、ラルと名前を付けて光って、を繰り返したわ。
大きさも、3羽とも同じになって一安心よ。
『ん?なんか、強くなった気がしないか?』
『うん、分かる』
『いまのぼく、なんでもできそう!』
『確認してみようぜ』
『うん、見てみる』
『すてーたす、みる?』
この子たち、自分のステータスが見れるの?凄いわ~。あら?何故かしら、その四角いの私にも見えるわよ。
『おぉ!凄いぞっ。オレら精霊になっているぞ!』
『おぉ~、精霊だ』
『せいれい!すご~い!』
え?せいれい?
『見てみろよ。契約したから、おまえも見れるだろ』
『種族の所に書いてある』
『みてみて!』
「精霊・・・」
そう言われて、それを覗いてみたわ。うん、確かに種族の所が精霊になっているわ。ということは、彼らは自称妖精じゃなかったのね。疑って、ごめんなさい・・・。
それより、帰ってみんなになんて言おうかしら。妖精と契約したら、精霊になってしまったなんて言えないわ。またナッターズ侯爵らに、詰め寄られそうだもの。これは、言わない方向でいきましょう。
・・・それに、聖獣じゃないから、連れて帰っても良いわよね。
『見てみろよ、これ!人形になれるんだぜ!!精霊になったら、人形に変身出来るなんて凄いな!』
『人形って、便利だ。物が掴める』
『ひとがたでも、とべるね!』
ひとがた?
「え?」
そう言う彼らの方を見てみると、可愛らしいシマエナガに似た姿はなく、変わりに手のひらに乗りそうなくらい小さな子供たちが居たのよ。
うぅ~。これ以上、心労を増やさないでほしいわ。ここには、癒しを求めて来たのに~。
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