第28話 敢えてだと思ったのよ~

目標を確認したわ!

随分探したのよ~。エレノアったら、訓練場に居るんですもの!


テッテケテッテ~テ~。

双眼鏡~!


訓練場の場外にある、見学席のここでは魔法が使えないものね。


ほうほうほう。フィンレーと二人で追いかけっこをやっているわ・・・。

あ、これ私が一緒にやる訓練だったわね・・・それを、エレノアが変わりにやってくれているんだわ。さっき用事を思い出したと言って、さっさと帰ってしまったもの。ごめんなさい、二人とも・・・。


うぅ~。でも、なんで、なんでなの~。全くイベントらしいイベントも起こらないのよ~。

これじゃ、魔法版のスポ根と同じよ~!

誰でも良いわ~!誰でも良いのよ~!私に癒しを~!!


「こんな所で、何やってるだよ。ルーナ」


「あっ」


「おまえが帰ったからって、俺がさっきまで変わりに、剣で訓練の相手をしてたんだぞ」


アンドリューがいつの間にか、私の脇に立っていたのよ。二人に気を取られてたから、気付かなかったわ。


「それは、ありがとうだわ」


「あぁ。引き受けたんだから、責任持ってやれよ」


「分かったわ、ごめんなさい」


「謝るのは、フィンレーにだぞ」


「そうね、そうするわ」


「でもルーナ、魔道具も指定された所以外では使用禁止だぞ。それ大丈夫なのか?」


私が双眼鏡を外さないまま、アンドリューと会話していたので、気になったのだと思うわ。


「大丈夫よ。これは、魔道具じゃないわよ」


「じゃ、なんだ?」


「普通の遠く見る道具よ。魔力は使わないわ」


「へぇ~、そんなのあるだな~。で、遠くを見る道具で何見てるんだ?」


「・・・・・・」


サッと双眼鏡を外さずして、何事もなくアンドリューに向き直ったわ。


「フィンレーの様子を見ていただけよ。ちょっと、もう少し効率の良い訓練をしようかなと思っているわ」


「そうなのか?」


その顔は怪しんでいるわね~。


「そうよ」


私は見学席から訓練場へ飛び降りたわ。訓練場までの移動ルートは、ここから飛び降りた方が最短なのよね。

後から、アンドリューが付いてくるわ。


「ルーナ!」


「おまえ、用事があったんじゃなかったのか?」


エレノアとフィンレーが、こちらに気付いて訓練を止めたわ。


「ごめんなさい。用事は済ませてきたわ」


うっ。その口実に使った"用事"の本来の目的は、ミラに阻止されたのよ。まだ、ダメージが残っているわ。


「フィンレー。もっと効率良くスキルを覚える訓練を、思い付いたのだけど、やるかしら?」


それは置いとくとして、フィンレーの訓練よね。


「あぁ、やるさ。おまえのやり方は突拍子も無いことだらけだが、今までのやり方よりは効率が良い」


「エレナーも居ることだし、丁度良いわね」


「え?わたし?」


「えぇ。今回も、お手伝いお願いね」


「それは良いけど、何をするの」


「ん~。エレナーは、癒しの魔法の準備をしてくれれば良いからね」


「なんか、嫌な予感がするんだが・・・」


「俺も嫌な予感がするぞ・・・」


何、その本当に嫌な顔するの、止めてほしいわ。


「ちょっと。私、変なことしないわよ」


「わたしも嫌な予感がするわ・・・」


「エレナーまで~」


酷いわ~。今までも、変なことしたことないわよ?


「もう、始めちゃうわよ。フィンレーさんは、身体強化の魔法をかけておいてね」


「あ、あぁ」


フィンレー。何、その諦めたみたいな感じで頷くの~。


「準備は良いぞ」


フィンレーの準備が出来たみたいなので、こちらも準備するわ。

最初は、ダメージが出にくいウォーターボールからにしましょう。当たっても濡れるだけだものね。

フィンレーの体を覆うくらいの弱いウォーターボールをたくさん作って・・・。


「いやいやいや!ちょっと、待て!!」


何か、フィンレーが言っているわ?


「ルーナ!これはやり過ぎよ!」


エレノアは、慌て始めたわ。


「オーガがいる。ここに・・・」


アンドリューは、呆然としているわね。


「大丈夫よ。弱くしてあるから」


「弱くても、それなりに攻撃力あるだろっ!」


「問題ないわ、エレナーがいるもの」


「はぁ~!そういう問題じゃないだろっ!!」


何、フィンレーは憤っているのかしら?


「ルーナ。もう少し、優しい方向で出来ないの?」


「ルーナ。人にやられて嫌だと思うことは、人にやるなよな」


もう、二人とも。昔のことを忘れたの?攻撃力なんて、私たちが子供の頃に受けていた魔法より、3/4くらい少ないわよ。


「え?私たちが子供の頃、魔法攻撃を受けていたじゃない。それより攻撃力がかなり低いわよ」


「「え?」」


二人とも凄く驚いてるわね。あの頃より、これ程数は多くなかったけれどもね。


「気付いてなかったのかしら?」


まぁ、追いかけっこのように、遊びながら魔法攻撃を受けていたから、そうでもないと思っていたのでしょうね。


「「ナッターズ侯爵~」」


あ、二人が嘆き始めたわ。


「分かってくれたわね?」


「えぇ、どんどんやっちゃって」


「あぁ、それなら全然問題ないな」


直ぐに立ち直って、コクコクと二人が頷くわ。


許可も貰っちゃったから、早速やっちゃいましょう!


「マジか?マジなのか?本当におまえら子供の頃、こんなことやっていたのか!?」


私たちの話を聞いていたフィンレーが、驚愕の表情をしてるわ。


そうね。とても、ハードな日々だったわね・・・。


「「「・・・はっ!」」」


思わず、3人して遥か向こうの遠い所を見てしまったわ。直ぐに戻ってこれたけど。


「フィンレーさん、骨は拾ってあげるわ!」


ヨーイショッと、私はウォーターボールをフィンレーにぶつけるのよ。


「うわーっ!!」


ほ~ら、撃たれた所が赤くなっただけよ。


「思っていたほど痛くはなかったでしょ?エレナーお願いね」


「あ、あぁ・・・」


肯定しているけど、フィンレーに疲労感が出てるわね。


「分かったわ」


そして、エレノアが傷を治していくわ。


「次は、エアーボールよ」


服を乾かして、弱いエアーボールをたくさん作って『撃つべしっ!』『撃つべしっ!』『撃つべしっ!』なんてね。


「エレナー、お願いするわ」


「分かったわ」


エレノアが傷を治して、私が服を修復して、次の魔法を撃って、それを攻撃力を徐々に高めていくというのを、繰り返していったわ。


「なんか、痛くなくなったな」


フィンレーがそう言いながら、自分の体をあちこち触っているわ。魔法防御力アップのスキルが、取得出来たんじゃないかしら。


「じゃ、今度は物理攻撃ね」


「え?」


「俺らもやったよな~」


アンドリューが、またどこか遠い所を見てしまっているわ。


「えぇ、痛くて泣いても、ナッターズ侯爵が傷を治して『ほ~ら、大丈夫だよ~続けようか~』と言われた時、子供ながらにゾッとしたわ」


エレノアなんて、冷えた体を温めるように、自分の腕を擦っているのよ。


ふっ。みんなは、まだ良いわよ・・・。


テッテケテッテ~テ~と武器を出したわ。それから、木剣で攻撃して、刃を潰した剣で攻撃して、本物の剣で攻撃して、槍で攻撃して、とやっていったわ。エレノアとアンドリューと3人がかりでね。


「次はどうしようかしら・・・」


「もう、今日は勘弁してくれ」


「時間も時間だから、今日は終わりましょう」


「そうだよな。小腹が空いてきたからな」


私は、もっと出来るのだけど、3人はもう疲れたみたいね。数時間で、くたびれた感じだわ。体力回復の魔法を、かけておいていないのかしら?


「じゃ、今日は解散で良いかしら?」


「あぁ」


「えぇ」


「それで良いぞ」


3人とも、本当に疲れたみたいね。


「そう。でも、みんなは体力回復の魔法は、使わないのかしら?」


使えば、便利なのにね。敢えて、使わないのかしら?


「「「体力回復の魔法~?」」」


「え?えぇ」


あら?知らなかったの?でも、そんなに驚くことでは無いわよね?ナッターズ親子とルーカスとエドワードは使っているもの。


「「「ちょっと、それ詳しく!!」」」


3人が詰め寄ってくるわ!


「わ、私以外も使っているわよ!」


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