第25話 え?待って、別人のようだわ・・・

あら?何か騒がしいわね。こんな廊下の往来で止めてほしいわ。


ん?でもこの展開、既視感を覚えるわ。最近も、2回あったわね。


「ちょっと!なんで入れてくれないのよ!!」


「ですから、この室内に入れるのは、生徒会に所属している人、若しくは関係者のみになります」


「ルーカスに会いたいだけよ!」


「殿下は、ここにいらっしゃいません」


「なんでウソ言うのよ!わたしは、王族よ!!融通聞かないわね!」


出たわ。自称王族の転生者らしき女子生徒が・・・男子生徒と言い合っているわね。


「関係ありません。お引き取りください」


「なんなのよ!ちょっと、触らないでよ!」


魔法研究所に行くのに近いからって、生徒会室の前を通ったの失敗したわ。関わりたくなくて、思わず物陰に隠れてしまったもの。


「止めてよ!」


生徒会の関係者かしら?二人の女子生徒が両脇を抱えるように、彼女をどこかに連れて行くわ。良かったわ~。見えなくなるまで、ここで待っていようかしら。

じーっ・・・よしっ、誰も居なくなったわ。


やはり彼女、転生者よね。この世界では、ルーカスは生徒会に所属していないのに、所属していると思って押し掛けたのね。居ないと言われていても、ウソだと思っているから、また何回も押し掛けそうだわ・・・。


「おや?ごきげんよう」


「ごきげんよう」


驚いたわ。ちょうど、生徒会室の扉の前を通ったら、突然扉が開くのだもの。先ほどの男子生徒と違う人だわ。なんかこの人、学生にしては結構年上に見えるわね。少年らしさが無いっていうか、とっくに成人しているような感じだわ。


扉が開いたことに驚いたのを知られなくて、冷静に見せたわ。すまして、然り気無く、何事もなく、挨拶して通り過ぎたの。けど、また既視感を覚えたのよね。どこかで見たような顔なのよ。どこでだったかしら?


「俺もそっちに用事があるから、一緒に行っても良いかな?」


ま、眩しいわ~。何、このキラキラ爽やかイケメン。思わず、足を止めてしまったじゃないの。でも、そのキラキラは、わざとらしいわ。


「ダメかな?」


軽く眉を上げて首を傾ける仕草、とてもあざとい感じなのよね。アンドリューと違った男臭さのあるイケメンに、こんなことされたら女子はみんなイチコロでしょうけどね。

ちっちっちっ。でも、その見え隠れしている腹黒さを、私には誤魔化されないわ!それを腹の奥深くに隠せるまで、出直してきなさい!

ふっ、まだまだ甘いわね。


「うん、ダメね」


「何故、ダメなのかな?」


断れるとは思っていなかったみたいで、驚いているようだけど、私をそこら辺の女と一緒にしないでほしいわ。


「なんか、演技してるみたいで気持ち悪・・い・・・」


あ、心で思っていた言葉が・・・。

なんかね、自然と出てしまったのよね。意図して言ったのじゃないわよ。咄嗟に、口を押さえたけど遅かったわ。私もまだまだね・・・。


「ふっ。なんだ~。お子様なのに凄いな」


突然、がらりと彼の雰囲気が変わって、態度をを崩したわ。


ちょっと、待って。今、鼻で笑ったわね!そして、お子様だと言ったわよね?私がお子様なら、あなたは"じじぃ"よっ!!


「じじぃ・・・」


おっと、また口に出ちゃったわ。わざとじゃないわよ。てへっ。


「ほぉ~」


彼が面白そうに、ニヤリと笑ったわ。


「知っていると思うが、俺は前生徒会長のフィンレー・ハワードだ」


ふぃんれー・はわーど、って・・・え!?あの勇者の卵ー!!

え?え?でも、だって、さっきのキラキライケメン風の雰囲気も、今の態度を崩した雰囲気も、『エレセイ』の時と全然違うわよ!!髪と瞳は、金髪にアメジストのような紫色で同じだけれども、雰囲気も顔付きが違うわ。なんか、もっとイキイキと活力があって、瞳も輝いていたはずよ・・・。

あ、もしかしてエレノアと、溝が生じたせいなのかしら?力の差を感じエレノアと距離を置いて、彼は修行に出ていって戻って来なかったのよね。確か、それを聞いたの私がエレノアの領地に初めて行った時だから、10年ほど前よね。それから10年間、何をやっていたのかしら?

エレノアとは5才離れているって言ってたから、今はもう21才よね。やっぱり!学生にしては老けて・・・貫禄があると思ったわ。

あら?でも、前生徒会長と言ったわよね?ということは、彼はこの学園の臨時講師じゃなくて生徒なのね。ん?でも何故、彼は今頃になって学園に入ったのかしら?エレノアと一緒に授業を受けたかったから?いや、距離を置くくらいだから会いたくなかったはずよ。それか、そのプライドを捨ててまで、エレノアが強くなった秘密を知りたかったのかしら?ま、でもそれって、秘密じゃないけれどもね・・・。


「前生徒会長とは知らなかったけど、名前は知っているわ」


「入学式の時に、挨拶したんだけど・・・」


そんな、呆れた顔は止めて!


うっ・・・ルーカスの挨拶だけは、ちゃんと聞いていたのよ。でも、あとは、退屈だから魔力操作して遊んでいたの・・・。


「ごほんっ!エレノアの幼馴染みなのよね?」


咳払いをして誤魔化したわ。


「へ~。エレノアが言ったんだ?」


「えぇ、強くなるって修行に出たって言っていたわ。ま、エレノアとの力の差が出てきて、変なプライド持って逃げたのだと思うけど・・・」


「ハッキリ言うんだな」


以外だと眉を上げているわ。


「え?だって本当のことでしょ?それに、グチュグチュ逃げ回る人、嫌だもの。逃げなければ、今頃エレノアと並んでいたはずなのに、勿体ないわ」


フィンレーが、ハッとするわ。


「それは、どういうことだ」


彼が必死な顔をして、私にグイッと詰め寄ってくるのよ。


「え?だって、国を上げて行っていた訓練が、1番の近道だったというだけよ」


あら、今度は愕然としているわ。


「もう、21才でしょ?訓練をいつからしたか分からないけど、幼少期と違って今からだと時間がかかるわ。でも、見た感じ、まだまだ伸び代があると思うから、これから頑張れば良いところまで行くんじゃないかしら?」


何かを考え込むように、急に黙ったわ。


「ちょっと、聞いているのかしら?」


「あぁ」


あら?何か、覚悟を決めた顔付きになってきたわ。

え?あ、ちょっと!抱き抱えないでよ~!そんな、荷物を脇に抱えるみたいに!!なんなのよ~!


「え!?何?下ろしなさいよー!!」


「どうせ、魔法研究所に行くんだろ?俺も行くから、ついでだ」


私がアワアワしていると、そう言ってスタスタと歩き出したのよ!


「止めて~!下ろして~!この格好、恥ずかし過ぎるわ!!」

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