第24話 子ナッターズ侯爵を生成してしまったわ・・・

「今日も、追いかけっこしてみようか~。今回は、前回と逆にルーナたち3人が生徒たちを全員捕まえてね~」


前回の追いかけっこから5日経ったわ。そして、また来てしまったの。彼が・・・。


『はい』


「はい、先生」


ヒューゴが手を上げて、発言の許可を求めるわ。


「はい、ヒュー。何かな~」


ナッターズ侯爵が、ニコニコとヒューゴを指す。


「この前の授業の追いかけっこで、僕たちは捕まりませんでしたが、1学期の単位を頂けるはずではなかったでしょうか?」


あ、それ、私も聞きたかったのよ。


「うん、そうだね~」


「では、僕たちは授業に参加せずに自習で、よろしいのではないでしょうか?」


うん、うん。そうよ、そうよ。私は自習を求めるわ。


「あれ~?私はいったよね~?手伝ってもらうからって~」


「「あ・・・」」


ヒューゴと二人、思わず声が出てしまったわ。


「挨拶の時に言っていましたわね・・・」


ジュリアンナがボソッと呟いたわ。


そうね、そうよね、言っていたわよね、ナッターズ侯爵の授業初日の挨拶の時、そんなこと言っていたわよね・・・。


理不尽だわー!!


ガックリだわ~。私の自由な時間が出来ると思っていたのよ・・・。


「そういうことだから~」


いえっさ~。もう、抵抗感するのも疲れたわ。ナッターズ侯爵の強引さは相変わらずだわ。彼には、誰も抵抗出来ないのよね。あの、ルーカスでも抵抗出来ないのよ。あぁ~折角、学園に入って、彼から逃れられたと思っていたのに・・・。


「あ、ハンデは必要だよね~」


ちょっと待って、そのハンデをどちらに付けるつもりなの?


「ルーナたちは、風魔法抜きでやってみようか~」


やはり、こっちがハンデ無しなのね・・・でも、風魔法無しだけなら余裕よ!


「やっぱり、身体強化の魔法以外は、無しにしようか~」


え?なんで急に変えたのよ!?


「余裕ぶっこいた顔するからでしょうね」


ボソッとヒューゴが、笑顔のまま言うのよ。酷いと思わない?


ヒューゴ・・・あなた、『エレセイ』ではそんなこと言わない優しい良い子だったのに、変わってしまったのね・・・。


「そうですわよ。ルーナは、顔に出やすいですわ」


ジュリアンナ、あなたまでも・・・。


「じゃ、捕まえた人には印を付けていってね~」


あ、追いかけっこだったわね。でも、何故印を付けるのかしら?


「印は、何故付けるのでしょうか?」


また、私の聞きたいことを聞いてくれたわ。ありがたいわ、ヒューゴ!


「え~?だって君たちスピード速いからね~。捕まった人、自分が捕まったの分からなかったら二度手間だよね~」


じゃ、捕まえるのってホールドしなくても良いのね。捕まえたら、ナッターズ侯爵の所に連れて行くのかと思っていたわ。


「分かれば良いから、印はなんでも大丈夫だよ~。あ、消せるようにはしておいて~」


「了解しました」


「はい、分かりましたわ」


「大丈夫ですわ」


私たち3人は頷いたわ。


「じゃ、始め~」


始め~の"~"で、身体強化してダッシュしたわ。


1、2、3、4、5、6、7、8、9、10人・・・っと。


それぞれの肩や腕を掴んで、印を付けていくわ。私の印はお花よ!殺伐とした訓練場に、癒しを求めてみたの。みんな、可愛らしく頭にピョンっと様々なお花を咲かせているわ。


「は~い、全員捕まっちゃったね~。終わりだよ~」


あら、もう終わり?5分経っていないわよ。でも、10人は超えたはずなのよね。私、何人にお花を咲かせたかしら?


あれは、ベネディクト家の紋章では?・・・あ、ジュリアンナの印ね・・・。


こっちは、紙が貼られているわ・・・あら、差し押さえ?これはヒューゴね・・・。


「二人とも印のセンスが微妙だわ」


「ルーナに言われたくありませんね。みんな、ひょうきんな姿になってしまったじゃないですか」


「もう少し、華やかなお花が良かったと思いますわ。これでは、とても滑稽ですわよ」


「いや、二人には言われたくないわ。リア、みんなに紋章を付けるのって、ベネディクト家の所有物と主張しているように感じるわ。人権問題よ」


「所有物だなんて、そういうつもりはありませんでしたけど、印でしょう?1番分かりやすい印だと思っただけですわ」


リアは、私の言ってることがピンっと来ないみたい・・・次は、ヒューゴよ。


「ヒューも同じよ。差し押さえって、みんなが可哀想じゃないの」


「僕なりに印だったのですが・・・落札の札の方が良かったですか?」


「いや、そう言うことじゃないわ・・・」


悪気がないは分かっているけれども、それが悪気が無い分たちが悪く感じるわ・・・。


二人とも、『エレセイ』の二人とかけ離れていくわ・・・ジュリアンナは良い方にだけどね。


「いやいや、三人とも五十歩百歩だから」


私たちが言い合っていると、男子学生の一人がそう言ってくるのよ。二人と一緒にしないでほしいわ。

あら?この男子学生、ナッターズ侯爵に何故教壇に立つのか質問していた、オリヴァー・アンダーソンじゃないかしら?


「出来れば早く、この花消して欲しいんだけど。あと、他のみんなのも」


「ごめんなさい、分かったわ」


そう言われ印を全部消したら、さっさと離れて行ってしまったわ。

今思ったのだけど、私ってリアたちとばかりいて他の生徒と交流無いわよね・・・。


「はいは~い。ルーナが13人で、リアが8人で、ヒューが9人だったね~」


おぉ!やった!ふふふ、二人に勝ったわ!!


「むう、二人に負けてしまいましたわ」


「いや、勝ち負けじゃないですよ」


勝ち負けじゃない・・・おう、自己嫌悪が・・・。


「ルーナ、今回は身体強化だけだよね~?」


「え?えぇ、言われた通りですわ」


「瞬間移動の魔法は使ってないかな~」


また、ぐんっと急に圧をかけないでほしいわ!


「あ、僕もそれ思いました」


「私もですわ」


え?え?二人もナッターズ侯爵と一緒に圧をかけないで!


「使ってないわ!瞬間移動の魔法なんて使ってないわよ!!」


慌てて私がそう言うと、


「・・・そう。じゃ、どうやったのか、詳しくね~」


「前回、あの風魔法の時は抑えましたが、僕にも詳しく教えてくださいね」


「私も聞きたかったのを抑えていましたわ。ですので、今回は私にも詳しく教えて頂きたいですわ」


それら対して、コクコクと縦に首を振ったわ。そして、彼らは納得したのか、三人ともなんとか引いてくれたわ。でも、何を話せばいいのかしら?普通に身体強化の魔法を使っただけなのに~。


うぅ、忘れていたわ・・・子ナッターズ侯爵の存在を・・・。

ルーカスたちの他に、今回は二人作り上げてしまうなんて・・・。

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