第21話 思ってもみなかったわ・・・

「・・・今日は、用事があり副担任の先生が来られませんでしたが、後日紹介します。では、全ての説明は終わりましたので、解散とします。気を付けてお帰りください」


『はい、ありがとうございました』


教室から出て行こうと、わらわらと出入口に集まりだすの。大混雑だわ。落ち着くまで、少し待ってましょう。

その先頭にいた学生のうち、誰かが扉を開けると、そこにはルーカスたちがいたのよ。ほら、みんな驚愕しているわ。「うぁ!」とか「えっ!?」とかの声が聞こえるもの。

ま、それは、驚くわよね。私は免疫があるから大丈夫だけど、滅多に接触出来ない免疫がない人たちは、近くで見たら男女問わず心奪われるんじゃないかしらね。だって、『エレセイ』の時のルーカスよりキラキラしているんですもの。あ、エドワードとカーティス、エレノアもいるのよ。でも、彼らにはルーカスのインパクトが強過ぎたのよね~。ルーカスしか、目に入っていないみたい。エレノアもすっごく可愛いし、エドワードもすっごくカッコイイし、身内贔屓が入るかも知れないけど、カーティスもすっごくカッコイイのにね。あ、だから、ヨダレも抑えることが出来るようになったわ。ふとした時は、出てしまうけどもね・・・。

でもそのお陰で、「殿下がいる・・・」「何故ここに殿下が・・・」とザワザワしている中、ルーカス以外の3人は私たちの所まで来れたわ。あ!ヒューゴが、いつの間にか居なくなっているわ!逃げ足が素早いわね。


「リア」


「ルーナ」


「ルーナ、リア」


「お兄様たち、迎えにいらして下さいましたの?ありがとうございますわ」


「わざわざ、ありがとうございます」


「そうだよ、二人を学園内を案内したくてね」


「私も、二人と一緒に学園を回りたいなって」


エレノアが頬を染めていうのよ。可愛い!


「いや僕の方はね、教室から待ち合わせ場所までの間でも、ルーナのことだから心配でね」


「待って、そんな短時間で何か起きるわけないわ」


カーティスの言葉に呆れたように言うと、逆にみんなが生暖かい目で見つめてくるわ。解せないわ。


あら、この展開・・・『エレセイ』の内容に似てるわ。入学式の日に、エドワードとルーカスが教室までジュリアンナを迎えに来てくれるのよ。この世界とは違って、他の人に迷惑をかけていないか心配で迎えに来たのよね。

もしかして、あの転生者っぽい彼女は、これを狙っていたのかしら?あ、でも学年合同での実習がクラスごとにあるから、それも狙って・・・どっちもかしら?


「何故、私を置いていくのかな?」


ルーカスがいつの間にか、側まで来ていたわ。その後ろでは、学生たちが遠巻きにこちらを見ているのよ。大変よね、何かと目立つ人は。


「置いていった覚えはないですよ」


「後ろから付いて来てると、思ってました」


「ごめんなさい。あそこを抜けるには、犠牲は付き物だと思いました!」


エドワードはそれを誤魔化し、カーティスは本気でそう思っていたらしく、エレノアは素直に謝ったわ。


「全く、しょうがないな。では、早速行こうか」


ルーカスの後を続くけど、人混みを掻き分けるわけなくモーゼの海のように、ザザザーと生徒たちが二つに分かれて空間が出来るの。その間を何事もなく通り、みんなで教室を出て移動するわ。でも、どこに移動するのかしら?


「アンディとデューはどうしましたの?」


あ、それ私も気になっていたわ。ジュリアンナ!


「あぁ、アンディは剣の訓練をするため訓練場に行ったね。デューは魔法の研究のため、学園の研究所に籠っているよ」


いつものことだよ、とエドワードは鼻で笑ったわ。


そうね、そんな二人の学園生活が目に浮かぶわ。


「学園でも、相変わらずですわね」


ジュリアンナも彼らの学園生活が浮かんだと思うの、ため息を付いているもの。


「自分の信念を貫くのは良いけど、学園でも他人に迷惑はかからないようにしてほしいわ」


私が言った言葉に、みんなが「お前が言うな」という感じで見てくるのよ。酷いとおもわない!?


「ルーナ、それは君が言ってはいけないな。迷惑をかけないでほしいなんて、それが君が1番言われる言葉だろ」


誰も口にしなかったことを、ルーカスはハッキリと私に言うのよ。どうも思う?


「うぅ、そんなに迷惑をかけない・・・と思うわ」


「一度、自分を顧みようか」


「ルーはハッキリ言い過ぎよ!」


「でも、ハッキリ言わないと、分からないのでは?」


「ルーナは、ハッキリ言っても分からないよね・・・」


ルーカスと私のやり取りを黙って聞いていたカーティスが、そんなこと言うのよ~。妹を庇ってくれても良いわよね?


「私もカーティスの言葉に一票だね」


「私もカーティスに一票ですわ」


「ん~、私もカーティスの言うことに納得だね」


エドワード、ジュリアンナ、エレノア、あなたたちまで・・・。


「みんな、酷いわ!」


「はいはい、みんな。もう、着いたから、それくらいにしようか」


え、始めたのは、ルーカスよね。


そう言ってルーカスが手をやっているのは、一つのドアノブだったわ。

それは、教室の扉もシンプルだったけど、またそれとは違ったシンプルな扉なのよ。あらでも、みんな生徒会に入っているのではなかったかしら?こんな感じの扉では、なかったわ。『エレセイ』での生徒会室の扉は、もっとゴージャスで高級感ある物だったはずなのよ。

あ!そう言えば、生徒会に入っていない新入生が、生徒会室に入れられないわよね。

もう、忘れてたわよ!『エレセイ』でのやり取りを!!生徒会に入っていないジュリアンナとみんなが揉めるのよね・・・入れなさい、入れられないと押し問答になってたわ。

と言うことは、生徒会室ではないここは何の部屋かしら?


「この部屋は何なの?」


「なんでしょうか?」


「中に入れば分かるさ。では二人とも、どうぞ」


思った疑問をそのまま口にした私とジュリアンナに、ルーカスは扉を開けて中に入るのを進めるのよ。


そして、ドキドキしながらジュリアンナと中に入ると、そこにはデュランが居たのよ。拍子抜けよ。


「なんだ、デューだわ」


「あら、デューが居るだけですわね」


「なんだとか、居るだけとか、酷いね」


酷いとか言いながらも、一切傷付いていないわね、デュランは。


「でも、デュランは魔法の研究をしてるって、言っていたわよね」


「そう言えば、そうですわね」


「そうだよ。ここは学園の魔法研究所なんだよ」


カーティスが種明かしをするように言うけど、意味が分からないわ。


「でも何故、魔法研究所に私たちを連れていらしたのかしら?」


「そうですわね、何故なのかしら?」


「この学園には元々、魔法研究所がなかったけど、私たちが立ち上げたのだよ」


「「え?」」


ルーカスが変なことを言っているわ・・・。


「生徒会は?」


「生徒会?何故、生徒会が出てくるんだい?」


何故って、乙女ゲームの定番だからよ!『エレセイ』でも、みんな入っていたからよ!


「そ、それは・・・成績優秀者には生徒会に入るとなっていたからですわ」


でも、そんなこと言えないわ!


「あぁ、辞退したさ。生徒会の仕事をしていら、魔法の研究や訓練が出来ないだろ」


「そ、そうなのね・・・」


「・・・凄いですわ!お兄様方!!」


なんと、瞳をキラキラさせてジュリアンナが興奮しているわ。


・・・ジュリアンナ。あなた、そんな大きな声を出せたのね。


「是非、私も入りたいですわ!」


こうなるなんて、思ってもみなかったわ・・・私のせい?私のせいなの~?軌道修正はないの?!あ~もう、何がいけなかったのよ~。魔法を教えたこと?なに~?


落ち込む私を横目に、ジュリアンナはいそいそと、学園の魔法研究所に入ると申込書を書いているわ。


うぅ、『エレセイ』のイベントが・・・1番近くで見れると思ったのに・・・あぁ自分をひっぱたきたいわ。痛いから、やらないけども・・・。

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